本誌10月号に「M&Aで事業承継した三立土建 浅沼秀俊会長に決断の背景を聞く」という記事を掲載した。下郷町の三立土建グループが投資・マネジメント会社の「フロンティア・キャピタル」と資本業務提携を結び、資本提携を受けた側の浅沼会長に話を聞きリポートしたもの。
その中で、出資した側のフロンティア・キャピタルにも、①資本業務提携に至った経緯、②資本業務提携に伴うメリット、③今後も機会があれば、県内建設業者との資本業務提携の考えはあるか――といった点について問い合わせていた。前号には間に合わなかったが、その後、同社Co―CIOで、資本業務提携後に三立土建、三立道路の代表取締役社長に就任した矢島政也氏から連絡があり、10月8日に三立土建本社で話を聞いた。

まず①については、前号で紹介した浅沼会長の話にもあったが、三立土建グループの1つである三立道路は、もともとは新潟県の建設業者と共同で設立した会社だった。そんな関係で新潟県の第四北越銀行と付き合いがあり、同銀行を介して、三立土建とフロンティア・キャピタルがつながった。浅沼会長は銀行を介して、さまざまな出資先を紹介してもらい、いろいろと話を聞く中で、「フロンティア・キャピタルさんは具体性があって良かったので、そこに決めました」と話していた。そんな縁で提携に至ったのだ。
②については、建設業は公共性があり、将来性も見込める、といった点を挙げた。公共性に関しては、近年は自然災害が多発しており、それによりインフラが被害を受けるケースも多いが、その復旧を担う役割がある。下郷町のような豪雪地帯では、除雪などの仕事もそれに当たる。
浅沼会長は、銀行を介して出資先を探す中で、「従業員を大事にしてくれることや、この地域では建設業者は災害対応や除雪などの重要な役割がありますから、そういったことを含めて地域で存続できるような形にしてもらいたい」ということを第一条件に挙げていた。
そうした仕事に加え、インフラの定期的なメンテナンスや再建などは需要が途切れることはない。もちろん、昨今の資材高騰や人手不足、従事者の高齢化などの課題はあるものの、やり方次第で将来性はあるという認識のようだ。
③については、「今回のような資本業務提携なのか、それとも純粋な提携だけなのか等々、方策は別として、その考えはある」(矢島社長)とのことだった。
前号記事でも指摘したが、建設業では後継者不在に一因する「後継者難倒産」が増えている。その一方で、従業員の生活を守ることや会社存続のため、M&Aによる事業承継を選択肢として考えているところもあるに違いない。
「ここ(三立土建)を1つの拠点として、あまり離れていないエリアで提携先があれば、人員のやりくりなどもできるでしょうから、そういった形でのロールアップ(拡大)は視野に入れています」(矢島社長)
今後は、建設業でもM&Aによる事業承継や、投資・マネジメント会社によるグループ化が進んでいくのだろう。