本誌11月号に「国道4号国見拡幅工事に地元住民が疑義 道路東側歩道と横断歩道の設置を要望」という記事を掲載した。
現在、国見町貝田地区では国道4号の道路改良工事が行われている。国道4号の国土交通省福島河川国道事務所管内では、国見町石母田地区から県境までの約3・5㌔が4車線化されていないが、下り車線(仙台方面)は「ゆずりあい路線(登坂車線)」として、約3㌔が片側2車線になっている。県境までの最後の500㍍ほどは片側1車線になり、宮城県に入る。国見町貝田地区の道路改良工事は残りの500㍍ほどの区間の拡幅工事である。これが完成すれば、下り車線は県境まで片側2車線となる。
「横断歩道設置」は国交省の管轄外

なお、上り車線(福島・郡山方面)は、県境から3・5㌔ほどが片側1車線になっている。
つまり、国見町貝田地区の拡幅工事が終わると、県境から3・5㌔ほどが上り1車線、下り2車線の3車線道路になるのだ。
そんな中、この工事について「どうせ整備するなら、もっとこうしてほしい」との声を上げた地元住民がいる。ちょうど、今回の工事区間に当たり、県境まで200㍍ほど、JR貝田駅の目の前の国道4号沿いで、ガソリンスタンドを経営するオカダ石油ガス社長の岡田盛雄さんだ。
岡田さんは今年9月、近隣住民との連名で、福島河川国道事務所に要望書を提出した。その内容をリポートしたのが11月号記事である。
要望内容は3点で、最初の2点は道路東側の歩道整備と、貝田駅付近への横断歩道設置である。というのは、貝田駅周辺の国道4号沿いには、民家や岡田さんが経営するガソリンスタンド・商店のほか、国道4号を挟んで「下紐の石」や「越河番所跡」などの史跡がある。そのため、「地域住民の安全・利便性や、史跡保護、観光による地域活性化のためにも、歩道と横断歩道の設置を望む」というのが岡田さんの要望である。
3点目は道路排水整備。この周辺は県境付近を頂点に勾配になっているため、「大雨が降った際、道路排水が近隣の水路に多量に流れ込み、侵食等の被害が出ている」(岡田さん)という。
国道事務所の回答
今回の工事を担当している福島河川国道事務所福島国道維持出張所に、①工事の概要、②上り車線の拡幅計画の有無、③地元住民から要望があったと聞いたが、それに対する見解・対応――の3点について問い合わせたが、担当者に出張の予定があり、あらためて対応させてほしいとのことだった。そのため、11月号記事では同出張所の回答を掲載できなかったが、後日あらためて取材し、田村昭出張所長から回答を得ることができた。
今回の改良工事は2015年度に事業化され、昨年度までに用地買収などを終え、今年度から工事に着手した。完了年度は決まっていない。工事概要は、前述した通り、国見町貝田地区の約500㍍(同出張所によると正確には590㍍)の片側1車線区間の下り車線に、付加車線(いわゆる登坂車線)を整備するもの。
この工事には岡田さんが要望した点は含まれていなかったが、その後、側溝・排水施設の整備が加えられたという。
前述した岡田さんの3点目の要望が採用された格好で、「道路ののり面の耐久性の観点からも、側溝・排水施設は必要だと考えています」(田村出張所長)とのこと。
一方、岡田さんが要望したほかの2点のうち、道路東側の歩道整備については、今回の工事には含まれていないという。歩道を整備するとなれば、さらに1〜2㍍の拡幅(用地買収)が必要になるから、地域住民から要望があり、その必要性が認められたとしても、即座に「じゃあ、歩道整備も工事に加えましょう」ということにはならないのだろう。
ちなみに、岡田さんは「国道事務所は(岡田さんが求めた3つの要望については)『今回ではなく、4車線化の事業が出てきた時にでも……』というような話でした。それではいつになるのか分かりません」とも話していたが、現時点で4車線化の計画はないとのことだった。
もう1つの横断歩道については、「道路管理者の管轄外」なのだという。道路・交通の分野には、道路を整備・維持・管理する道路管理者(今回の場合は国交省)、違反を取り締まったり、事故防止や交通ルール・マナーの周知・啓発などを担う地元警察署、交通安全教育や広報啓発などを行う交通安全協会、さらには行政といったさまざまな組織が関わっている。地域ごとにそれら関係団体で協議会を組織し、そういった中で「横断歩道(歩道橋や地下歩道)を整備する必要がある」となった際に整備されるもので、道路管理者の判断で「ここに横断歩道(歩道橋や地下歩道)を整備しよう」ということにはならないということだ。
つまり、この点を実現しようと思うなら、地域の交通対策協議会、交通安全協会などに要望しなければならないのである。
この点について、岡田さんに再度話を聞くと次のように述べた。
「そのことは私も要望への回答として、国道事務所の担当者から説明を受けました。ただ、道路を整備する立場として、その必要性を訴えてほしいと思います。当然、私自身も地区の交通安全協会などにあらためて要望しようと思っています」
クルマ社会の地方において、道路1つが整備されることで、周辺住民の利便性が大きく向上したり、沿線に各種施設が整備されたりする。そういった点でも、今回の問題に限らず、便利で使いやすい道路が整備されることを望む。ましてや県内最大の幹線道路である国道4号はそうあってほしい。