郡山市西ノ内の大型スーパー「イトーヨーカドー郡山店」が閉店して3カ月余りが経過した。空いた建物には地元スーパーの「ヨークベニマル」が開設されることが既に発表されているが、他にどんな店舗が出店するのか市民の関心を呼んでいる。
テナント探しに苦労するベニマル
イトーヨーカドー郡山店が閉店したのは5月26日。運営会社のイトーヨーカ堂が北海道、東北、信越の全17店舗を閉店すると決定したことを受け、1989(平成元)年にオープンした同店も35年の歴史に幕を閉じた。閉店当日には大勢の客が訪れ、思い出に浸りながら買い物を楽しむ姿がみられた。
ヨーカドー閉店を受け、4階建ての巨大な建物は空っぽになったが、同じセブン&アイグループで郡山市に本社を置くヨークベニマルが空いた建物に出店することを既に発表している。4月には、同社の真船幸夫会長が会見で「来年2月までにテナントを迎え、ショッピングセンターとして生まれ変わる計画を持っている。従来にない店舗をつくりながら旗艦店に仕上げていきたい」と明らかにした。
閉店から2カ月以上が経った8月上旬、建物を訪れると、石綿の使用状況調査と建物内の解体作業が行われていることを示す看板が掲げられていたが、出入口は封鎖され、中の様子は確認できなかった。
不動産登記簿によると、建物一帯の土地は西部開発(郡山市、丹治洋社長)とオーナー一族である丹治家の共有名義になっている。建物の名義は西部開発。土地建物には福島銀行が極度額1億5000万円の根抵当権(債務者・西部開発)、東邦銀行が極度額5億円の根抵当権(同・西部開発、西部自動車学校)、秋田銀行が極度額1億5000万円の根抵当権(同・西部開発)をそれぞれ設定している。
市民の間では、ベニマル以外にどんな店舗が出店するのかが大きな関心事になっている。
「衣料品の『ユニクロ』が出店すると聞いた。ただ、ユニクロは『1階に出店したい』と2、3階への出店に難色を示しているそうです。1階は間違いなくベニマルが出店するだろうから、1階に出店できないことを理由にユニクロが断れば、空きフロアを埋めるのはかなり大変だと思います」(市内の経済人)
地方では、人口減による経済縮小で大型店の開発が難航する傾向にある。ベニマル社内からも「担当部署は空きフロアをどう埋めるか頭を悩ませている。真船会長は『従来にない店舗をつくる』と表明したが簡単ではない」という嘆きが漏れ伝わっている。
「昨年1月にリニューアルオープンしたヨークベニマル桑野店の2階には東北最大級の『無印良品』が出店したが、そこから直線距離でわずか700㍍しか離れていないヨーカドー跡に同じ店が出店するとは考えにくいし、ワンフロアを全て使ってくれる小売り店は限られる。ユニクロが出店するかどうかも含め、ヨーカドー跡がどう生まれ変わるのか注目です」(同)
「リリース時期は未定」
調査・解体が進むイトーヨーカドー郡山店跡
西部開発に、ベニマル以外にどんな店舗が出店するのか尋ねると
「当社は不動産賃貸業として建物全体をベニマルさんにお貸ししているだけで、どんな店舗が出店するかはベニマルさんが各方面と交渉しています。現段階ではベニマルさんのほか、ヨーカドーで営業していた一部テナントが引き続き出店すると聞いていますが、詳しいことは分かりません」(同社社員)
そこで、ヨークベニマル経営企画室にユニクロが出店するのかどうかも含め、どのような店舗構成になるのか問い合わせると、担当者から次のような回答が寄せられた。
「まだお話しできる段階にないため、お知らせできるタイミングでリリースさせていただく予定です。リリース時期も現段階では未定です」
同じヨーカドーでも、5月6日に閉店した福島市の「イトーヨーカドー福島店」は空いた建物の今後の方針が決まっておらず、駐車場だけが月極と時間貸しで暫定利用されている状況。それと比べると、ベニマルの出店は郡山市民にとっても建物を所有する西部開発にとってもありがたい話。あとは「魅力的な店舗の出店」という難題をベニマルがクリアできるかどうかにかかっている。