白河市では昨年2月、国道294号白河バイパスが開通したことで、東北自動車道と国道289号が結ばれ、交通アクセスが大きく向上した。その一方で、中心市街地は人口減少、少子高齢化が進み、店舗の郊外移転も進んでいる。来春には市民に人気のパン販売店も西郷村に移転することが決まった。
山田パン、東邦銀行移転で広がる危機感

白河市のグルメと言えば白河ラーメンだが、市民のソウルフードと言えば「山田パンの『あんばたー』と『フレンチトースト』」を挙げる人が多いのではないだろうか。
山田パンは1951(昭和26)年創業。国道294号沿いの本町に店舗兼工場を構え、スーパーのパン売り場や高校の購買部、会社などに商品を卸している。
常時120種類のパンをそろえており、中でも人気なのが前出の2アイテムだ。ちなみに「フレンチトースト」は自家製ミルククリームがたっぷりのったソフト食パン。同様の商品は郡山市で「クリームボックス」と呼ばれているが、同店ではこの名前で販売されており、白河市民に広く浸透しているという。

そんな市民に親しまれている店舗が来春、西郷村屋敷裏に移転することになったという。移転の理由について同社の小山田和弘社長はこのように語る。
「もともと借地に建てられた店舗兼工場で、増築を繰り返して規模を拡大してきたが、老朽化が著しいため、新たに土地を買って建て替える必要が出てきたのです。小規模な販売店であれば比較的場所を選ばずに建てられるのですが、従業員14人を抱える当社の規模だと製造部門は工場と扱われ、進出できる場所が限られる。市内でずいぶん探したが、適当な場所がなく、ようやく見つけたのがこの場所でした」
新店舗は国道4号から少し北側に入ったところにあり、西郷村の定住促進住宅子安森宿舎、東邦銀行新白河支店などが近くにある。敷地面積約1000平方㍍で、店舗は2階建て。延べ床面積348平方㍍。操業開始は来年3月末の予定だ。
実は白河市内には山田パンと同じように、もともと中心市街地にあったが、現在は郊外に移転して営業している店舗が少なくない。
同市の中心市街地では旧奥州街道(現在の国道294号)に沿ってできた商店街が栄えていたのに加え、イトーヨーカドー白河店、十字屋白河店、映画館などが進出し、多くの買い物客でにぎわった。だが、1990年代半ばから郊外大型店の出店が相次ぎ、次第にJR新白河駅周辺の方がにぎわうようになった。
中心部の大型店2店舗は閉店し、歩行者数が著しく減少。それに伴い商店街も一気に衰退し、人気の飲食店や小売店が郊外に移転していった。山田パンのように出店用地の都合でやむなく移転したケースもあるのだろうが、客数アップを求めて移転したところが多いだろう。
折しも、山田パンの向かいにある東邦銀行白河支店は12月9日、白河西支店と併さる形で新白河1丁目の新店舗に移転する。同行のニュースリリースによると、店舗併設化により創出される経営資源をコンサルティング機能等の充実に活用し、さらなるサービス向上に努める狙いがあるという。

利用者が多かった山田パンと東邦銀行が同市本町から移転することに危機感を抱く地元住民は少なくないようで、「中心市街地の衰退がさらに加速していくのではないか」と懸念する声が聞かれる。
昨年2月には、国道294号白河バイパスが開通した。東北自動車道白河中央スマートインターチェンジや国道4号から、中心市街地を経ずに国道289号に入り、棚倉町方面へとストレートで行けるようになった。小峰城や南湖公園へ向かう道路が改良されたことで交流人口増大につながることが期待されているが、これまで以上に中心市街地が〝通過点〟となった感は否めない。
実際、若い世代の白河市民は「買い物は近所のヨークベニマルやホームセンター、郊外の大型店に行くし、普段暮らしていて中心市街地の方に行くことはない」と話す。
白河市ではこうした状況に対応すべく、民間とともに中心市街地活性化基本計画を策定し、国の認定を受けながら、この間さまざまな事業を展開してきた。2009年から2期10年の間に白河市立図書館、白河文化交流館コミネス、集合住宅の「レジデンス楽市」やグラン大町、複合施設「中町小路 楽蔵」、JR白河駅舎内の「えきかふぇSHIRAKAWA」などを整備。空き店舗対策や子育て世帯の家賃一部補助等事業も実施してきた。
衰退は進む一方
市が独自に取り組んだ第3期計画では、掲げていた3つの目標のうち、「①市全域に対する中心市街地の居住人口の割合」が2022年実績4・10%となり、目標の4・09%を上回った。だが、残りの目標である「②小売業及び一般飲食店事業者数(目標171事業所に対し161事業所)」、「③平日歩行者通行量(目標4540人に対し2094人)」は目標未達に終わった。そのため、今年4月からは再び国の認定を受けて第4期計画を進めている。
同市の中心部では、白河市役所の隣接地で複合施設整備が計画されており、2027(令和9)年度の施設供用開始を目指している。
市民交流スペース、子育て支援センター、生涯学習センター、中央保健センターなどの機能を備える。白河市複合施設整備基本計画によると、立体駐車場と合わせた概算事業費は約35~45億円。もっとも、基本的には公民館機能を備えた「市役所第二庁舎」的な施設ということもあって、街なかのにぎわいを取り戻すには至らなさそうだ。
今年3月定例会冒頭の施政方針で鈴木和夫市長は中心市街地活性化について「民間事業者による共同住宅の整備に対し費用の一部を助成するとともに、駅前ロータリーを改修し、白河駅利用者の利便性を高めていく」、「商店街のにぎわいを維持していくため、空き店舗への出店や飲食店等の事業承継を支援するとともに、閉店後もショーウインドーに明かりをともし、夜間でもぬくもりを感じる町なか空間を演出していく」と話していた。こうした施策により、果たして中心市街地ににぎわいを取り戻すことができるか。引き続きウオッチしていきたい。