ホテルプリシード郡山閉館のワケ

ホテルプリシード郡山閉館のワケ

 郡山市中町の「ホテルプリシード郡山」が3月31日で営業を終える。同ホテルはうすい百貨店の隣に立地しているが、中心市街地に〝巨大な空き家〟が出現することに近隣の商店主らはショックを受けている。

 昨年12月1日、同ホテルがホームページで発表した「お知らせ」にはこう書かれている。

 《ホテルプリシード郡山は、1993年8月の開業以来、皆様にご愛顧頂いて参りましたが、来る2023年3月末日をもちまして営業終了する運びとなりました。

 長年に渡るご厚情に心から感謝申し上げると共に、皆様の今後のご健勝とご発展を心からお祈り申し上げます》

 同ホテルが入る建物は地上12階、地下2階建て。1階と地下1階では商業施設(10店)、3・4階ではスポーツクラブが営業している。2階はレストランとホテルフロントで、5階から上が客室(159室)になっている。

 近隣の商店主は

 「この間、中心市街地の賑わい復活を目指して取り組んできたが、一帯の人通りは相変わらず少ない。そうした中、中心市街地を牽引するうすいの隣のホテルが閉館するのは非常に寂しい」

 と、同ホテルの営業終了を残念がっている。

 同業者の間では、昨年秋から「プリシードが閉館するらしい」とウワサになっていたが、営業終了の理由はともかく「このタイミングで閉館するのはもったいない」という声が聞かれていた。

 ホテルと言うと新型コロナの影響で苦戦している印象を受けるが、実は思いのほか好調なのだという。

 あるホテル業関係者の話。

 「他市の状況は分かりませんが、郡山市内のホテルは今、コロナ前より稼働率は高いと思いますよ」

 理由は同市の〝地の利〟にある。

 「市内には民間の大きな病院が複数あるので、全国から来た医療機器や医薬品の営業マンが頻繁にホテルを利用しています。彼らは市内のホテルに連泊しながら今日は会津、明日は白河、明後日はいわきと動いているので、常連の宿泊で一定の稼働率が保たれているのです」(同)

 タクシードライバーからはこんな話も聞かれた。

 「一昨年2月、昨年3月の福島県沖地震で、県内には保険会社の調査員が全国から来ていました。調査員は市内のホテルに長期滞在し、そこからタクシーを使ってあちこちの物件の被害状況を確認していました。私も県南や浜通りなどに調査員を何度もお連れしましたよ」

 つまり、新型コロナでイベントやコンベンションが中止され、ホテルは苦戦しているかと思いきや、それに代わる需要で売り上げを確保していたというのだ。

 「最近はインバウンドも徐々に回復しており、団体の外国人旅行客の姿も見るようになっています。今、市内のホテルはどこも忙しいと思いますよ」(前出・ホテル業関係者)

 こうした状況下でホテルプリシード郡山はなぜ営業を終えるのか。二つの事情がある。

 一つは、建物を所有する会社との賃貸借契約が満了を迎えることだ。

 同ホテルを営業しているのは㈱ホテルプリシード郡山(郡山市中町12―2)。1992年6月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・宮尾武志、取締役・桜井滋之、西岡巌、監査役・細川和洋の各氏。

 一方、建物と土地を所有するのは不動産業の㈱橋本本店(郡山市麓山一丁目9―1)。2013年11月設立。資本金1000万円。役員は代表取締役・橋本善郎、取締役・橋本ひろみ、橋本眞明、橋本眞由美の各氏。

 建物は1993年6月竣工で、当時は同じ社名で別会社の㈱橋本本店(橋本善郎社長、78年10月設立、資本金8800万円)が所有していたが、98年に商号を㈱橋本地所に変更。2013年11月に分社化し、新たに設立した前述の橋本本店に所有権を移した経緯がある。

 つまり同ホテルは、ホテルプリシード郡山が橋本本店から建物を借りて1993年8月から営業してきたが、両社が交わした賃貸借契約の期間が「30年」だったため、契約満了を迎える今年(2023年)で営業を終えることとなったのだ。

 もう一つの事情は、同ホテルの親会社の意向だ。

 ホテルプリシード郡山は大手ゼネコン・大成建設(東京都新宿区)のグループ会社。大成建設はこれまでホテルプリシード名古屋(愛知県)など全国数カ所でホテルを建設・営業してきたが、売却するなどして少しずつ手放し、現在はホテルプリシード郡山だけとなっていた。今後は本業に注力するためホテル事業から撤退する模様で、最後の1カ所となっていた同ホテルも賃貸借契約が満了を迎えるのを機に営業終了を決めたのだ。

 もっとも、前出・ホテル業関係者は「市内のホテルはコロナ前より好調」と話していたが、民間信用調査会社によると、ホテルプリシード郡山は売り上げが年々落ち込み、万年赤字に陥っていた(別表)。新型コロナ前より客足が好調なのは事実かもしれないが、累積赤字を踏まえると、大成建設にとってはホテル事業から完全撤退する〝潮時〟だったということだろう。

ホテルプリシード郡山の決算

 同ホテルの営業終了を報じた福島民報(昨年12月2日付)には《営業終了後に会社を清算し、従業員28人の再就職を支援する》とある。

 同ホテルの官野友博副総支配人は次のように話す。

 「ホテルは3月末で営業を終えますが、建物内の商業施設とスポーツクラブは5月末まで営業します。そこでテナント契約は満了となり、退去してもらうことになっています。別の場所で営業を継続するかどうかは分かりません。今は当社従業員の再就職先を探しているところです。当ホテルが終了後、建物がどうなるかはオーナー(橋本本店)に聞いてほしい」

「今後の利活用は検討中」

 今後の建物の利活用だが、159の客室やフロントがあることからも分かる通り「ホテルの造り」になっているため、ホテルプリシード郡山が撤退後、別のホテルが入居しなければ建物は有効に機能しない。しかし前出・ホテル業関係者によると

 「橋本本店は別のホテルを入れようとしていたが、契約を結ぶまでには至らなかったようだ」

 と〝後釜探し〟が難航していることを示唆する。

 不動産登記簿を確認すると、建物と土地には借主である大成建設が賃貸借契約に基づく保証金返還請求権として9億円と6億円の抵当権を設定している。債務者は貸主の橋本地所。それ以外の担保は、建物建設時に計47億円の抵当権や複数の根抵当権が設定された形跡があるが(債務者、根抵当権者は橋本本店、橋本地所、橋本善郎氏)、すべて解除(弁済)されている。

 橋本本店に今後の建物の利活用について尋ねると、こう答えた。

 「何を入居させるか、建物を解体するかどうかも含めて全くの未定。現在検討中です。それ以上はお答えできない」

 建物の規模を考えると、ホテルプリシード郡山からの家賃収入はそれなりの金額だったろうから〝空きビル〟の状態が続くほど経営に響くのではないか。

 建物は築30年だが、東日本大震災や二度の福島県沖地震でも大きな被害は出ておらず、今後も従前通り利用可能とみられる。そうなると、解体という選択は現実的ではない。

 「解体費用は億単位になるので、行政の補助なしに企業単独で捻出するのは難しい」(ある不動産業者)

 建物を有効活用するには、やはりホテルプリシード郡山に代わるホテルを入居させるしかないようだ。ベストな方法は同ホテルが引き続き営業することだったが、本業に注力したい大成建設としては、30年の長期契約を終えた後に再び賃貸借契約を結ぶのは難しかったのだろう。

 今後のポイントは、橋本本店が新しいホテルを呼び寄せることができるかどうかにかかっている。


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