保土谷化学と険悪ムード!?の品川萬里郡山市長

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保土谷化学と険悪ムード!?の品川萬里郡山市長

 保土谷化学工業㈱郡山工場(郡山市谷島町4―5)が敷地内で水素ステーションの開設を目指している。現在、2024年秋の開所に向けて準備中だが、地元経済人はこの取り組みを歓迎する一方、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈している。

水素ステーションの開設を目指す保土谷化学

 水素ステーションの開設は、1月13日付の地元紙に掲載された「ふくしまトップインタビュー」という記事で、同社の武居厚志郡山工場長の紹介とともに明かされた。

 《今年は新事業をスタートさせる予定だ。工場敷地内に商業用定置式の水素ステーション開設を目指す。過酸化水素の原料用に製造した水素の一部を燃料電池車(FCV)向けに販売する。販売する水素の全てを自社製で賄うのは全国初の試みで、年内の着工、2024(令和6)年の開所を想定している》

 これに先立って水素ステーション開設を報じた昨年12月29日付の福島民報では▽利便性を高めるため、敷地東側の東部幹線沿いでの開所を検討、▽周辺にコンビニや飲食店などを誘致し、JR郡山駅東口の活性化につなげる、という方針も紹介されていた。

 同記事によると、水素は郡山工場の主力製品である過酸化水素の原料の一つとして同工場内で製造している。これまでは余剰分を他社に販売していた。水素ステーションが開設されれば、製造と供給を同一敷地内で行う全国初のケースになる。

 郡山工場の担当者はこう話す。

 「計画の詳細はまだ発表していません。今は『2024年秋の開所を目指す』という段階で、今後、水素ステーション建設に関する国、県、市の補助金を申請予定です」

 担当者によると、県内で水素を製造しているところは限られ、市内では同社のみだという。

 「これまでの水素ステーションは別の場所で製造した水素を(ステーションまで)輸送していました。そこで当社は、自社で製造した水素を有効活用したい考えから、敷地内に水素ステーションを開設しようと考えました」(同)

 市内では佐藤燃料㈱が県内2番目の商業用定置式水素ステーションを2022年2月に開設している。

 佐藤燃料と共同で水素ステーションを開設した日本水素ステーションネットワーク合同会社(東京都千代田区)の資料「水素ステーションの現状と課題」(2022年7月28日付)によると、東北6県のFCV台数(東北運輸局の次世代自動車普及状況より、同年5月末時点)は469台だが、このうち福島は351台と7割超を占める。2位が宮城112台、あとは山形4台、青森2台、岩手・秋田0台だから、福島県での普及が際立っていることが分かる。

 福島県は2016年に策定した福島新エネ社会構想に基づき、水素社会の実現に取り組んでいる。FCDの台数が抜きん出て多いのはその表れで、それだけ水素ステーションの需要も見込めるということだ。ましてや郡山工場の場合、水素を製造しているとなれば、同じ敷地内にステーションを開設することでより円滑な供給が期待できる。加えてコンビニや飲食店が誘致されれば、東京ドーム6個分という広大な工場敷地により殺風景に映る駅東口の光景が見違えることも考えられる。

 「コンビニや飲食店があれば水素を充填中の待ち時間を有効に使っていただけると思います。水素ステーションの付加価値を高められるよう併設を目指したい」(前出・担当者)

改まらない〝上から目線〟

 実は、本誌は昨年秋、ある経済人からこれらの話を耳にしていた。この経済人は「水素製造が主力となり広い工場敷地が余っているため、民営公園を整備することも考えているようだ」とも話し「停滞する駅東口開発の弾みになる」と水素ステーション開設に期待を滲ませていたが、同時に興味深かったのは、同社に対する郡山市の姿勢に苦言を呈したことだった。

 「菅野利和副市長と村上一郎副市長が郡山工場を訪ね『工場敷地内に道路を通したい』と協力を要請したそうです。二人はドローンで撮影したと思われる航空写真を示し『この辺りにこういう道路を通したい』『用地は無償で協力してほしい』と言ったそうです」(経済人)

 この要請に、同社の松本祐人社長は後日、親しい知人に「そういう話は失礼だ」「株主もいるのに用地を無償で協力できるはずがない」と不快感を露わにしたという。

 「駅東口開発を進めたい品川萬里市長は、これまでも郡山工場にいろいろな話を持ちかけてきたが、どれも一方的な要請で、同社と協議しながら共同歩調で進める様子は皆無だという。同社としては長年お世話になっている同市の発展に協力したいが、一緒に取り組むという姿勢ではなく『こうやるから協力してくれ』と〝上から目線〟のやり方が改まらないので、心底協力したいという気持ちになれないようです」(同)

 郡山駅東口の開発は同市の懸案事項だが、カギを握るのが一帯で操業する郡山工場の行方にある。すなわち、代替地を用意して移転してもらうか、あるいは、現在地で操業を続けるにしても広大な工場敷地をどうにか活用できないかといった話は、公式に議論されることなく与太話の類いに長年終始している。

 同社の松本社長は滝田康雄会頭をはじめ郡山商工会議所と良好な関係を築いており、滝田会頭が音頭を取るまちづくり構想「郡山グランドデザインプロジェクト」に協力する意向も持っているが、いかんせん同会議所と同市の関係が良好とは言い難いため、地元経済界からは

 「品川市長が本気で駅東口開発を進めたいなら、郡山工場や同会議所に丁寧にアプローチすべきだ」

 という苦言が以前から漏れているのだ。今回の道路整備をめぐる要請も、事実であれば丁寧さを欠いているのは明らかだ。

 「同市が本気で道路を通したければ『駅東口をこういう形で発展させたい。そのためには、ここに道路が必要なので協力してほしい』とアプローチすべきだ。その青写真もないまま、単に『道路を通したい』では同社も協力する気持ちになれないと思います」(前出・経済人)

 前出・郡山工場の担当者に、副市長二人から協力要請があったか尋ねると、

 「市職員の方と非公式にお会いする機会は結構あるが、公式にそういう打診が来たことはありません」

 と言うから「非公式の相談」はあったのかもしれない。

 菅野副市長と村上副市長にも文書で質問したが「回答は差し控える」(広聴広報課)。

 水素ステーションが開設され、コンビニや飲食店が併設されても、工場敷地にはまだまだ余裕がある。前出・経済人が言う「民営公園」は郡山工場の担当者が「そこまでは考えていない」と否定しており不透明だが、品川市長が本気で駅東口開発に取り組むなら、郡山工場を同列のパートナーと見なし、共同歩調を取る姿勢を見せないと停滞打破にはつながらないのではないか。

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