スポーツ用品販売大手ゼビオホールディングス(HD、郡山市、諸橋友良社長)は3月28日、中核子会社ゼビオの本社を郡山市から栃木県宇都宮市に移すと発表した。寝耳に水の決定に、地元経済界は雇用や税収などに与える影響を懸念するが、同市はノーコメントで平静を装う。本社移転を決めた背景には、品川萬里市長に対する同社の不信感があったとされるが、真相はどうなのか。(佐藤 仁)
信頼関係を築けなかった品川市長
郡山から宇都宮への本社移転が発表されたゼビオは、持ち株会社ゼビオHDが持つ「六つの中核子会社」のうちの1社だ。
別図にゼビオグループの構成を示す。スポーツ用品・用具・衣料を中心とした一般小売事業をメーンにスポーツマーケティング事業、商品開発事業、クレジットカード事業、ウェブサイト運営事業などを国内外で展開。連結企業数は33社に上る。
かつてはゼビオが旧東証一部上場会社だったが、2015年から純粋持ち株会社体制に移行。同社はスポーツ事業部門継承を目的に、会社分割で現在の経営体制に移行した。
法人登記簿によると、ゼビオ(郡山市朝日三丁目7―35)は1952年設立。資本金1億円。役員は代表取締役・諸橋友良、取締役・中村考昭、木庭寛史、石塚晃一、監査役・加藤則宏、菅野仁、向谷地正一の各氏。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ。
「子会社の一つが移るだけ」「HDや管理部門のゼビオコーポレートなどは引き続き郡山にとどまる」などと楽観してはいけない。ゼビオHDはグループ全体で約900店舗を展開するが、ゼビオは「スーパースポーツゼビオ」「ゼビオスポーツエクスプレス」などの店名で約550店舗を運営。別表の決算を見ても分かるように、HDの売り上げの半分以上を占める。地元・郡山に与える影響は小さくない。
ゼビオHDの連結業績 | ||
売上高 | 経常利益 | |
2018年 | 2345億9500万円 | 113億8900万円 |
2019年 | 2316億2900万円 | 67億2500万円 |
2020年 | 2253億1200万円 | 58億4200万円 |
2021年 | 2024億3800万円 | 43億4200万円 |
2022年 | 2232億8200万円 | 78億5100万円 |
ゼビオの業績 | ||
売上高 | 当期純利益 | |
2018年 | 1457億6600万円 | 54億1000万円 |
2019年 | 1380億2400万円 | 21億7600万円 |
2020年 | 1291億7600万円 | 19億5300万円 |
2021年 | 1124億6900万円 | 12億8700万円 |
2022年 | 1282億1900万円 | 6億2000万円 |
郡山商工会議所の滝田康雄会頭に感想を求めると、次のようなコメントが返ってきた。
「雇用や税収など多方面に影響が出るのではないか。他社の企業戦略に外野が口を挟むことは控えるが、とにかく残念だ。他方、普段からコミュニケーションを密にしていれば結果は違ったものになっていたかもしれず、そこは会議所も行政も反省すべきだと思う」
雇用の面では、純粋に雇用の場が少なくなり、転勤等による人材の流出が起きることが考えられる。
税収の面では、市に入る市民税、固定資産税、国民健康保険税、事業所税、都市計画税などが減る。その額は「ゼビオの申告書を見ないと分からないが、億単位になることは言うまでもない」(ある税理士)。
3月29日付の地元紙によると、本社移転は今年から来年にかけて完了させ、将来的には数百人規模で移る見通し。移転候補地には2014年に取得したJR宇都宮駅西口の土地(約1万平方㍍)が挙がっている。
それにしても、数ある都市の中からなぜ宇都宮だったのか。
ゼビオは2011年3月の震災・原発事故で国内外の企業との商談に支障が出たため、会津若松市にサテライトオフィスを構えた。しかし交通の便などの問題があり、同年5月に宇都宮駅近くに再移転した。
その後、同所も手狭になり、2013年12月に宇都宮市内のコジマ社屋に再移転。商品を買い付ける購買部門を置き、100人以上の体制を敷いた。マスコミは当時、「本社機能の一部移転」と報じた。
ただ、それから8年経った2021年7月、宇都宮オフィスは閉所。コロナ禍でウェブ会議などが急速に普及したことで同オフィスの役割は薄れ、もとの郡山本社と東京オフィスの体制に戻っていた。
このように、震災・原発事故を機にゼビオとの深い接点が生まれた宇都宮。しかし、それだけの理由で同社が40年以上本社を置く郡山から離れる決断をするとは思えない。
ある事情通は
「本社移転の背景には、ゼビオが進めたかった事業が郡山では実現の見込みがなく、別の都市で進めるしかなかった事情がある」
と指摘する。郡山では実現の見込みがない、とはどういう意味か。
農業試験場跡地に強い関心
本社移転が発表された3月28日、ゼビオは宇都宮市と連携協定を締結。締結式では諸橋友良社長と佐藤栄一市長が固い握手を交わした。
ゼビオは同日付のプレスリリースで、宇都宮市と連携協定を締結した理由をこう説明している。
《宇都宮市は社会環境の変化に対応した「未来都市うつのみや」の実現に向け、効果的・効率的な行政サービスの提供に加え、多様な担い手が、それぞれの力や価値を最大限に発揮し合うことで、人口減少社会においても総合的に市民生活を支えることのできる公共的サービス基盤の確立を目指しています》《今回、宇都宮市の積極的な企業誘致・官民連携の取り組み方針を受け、ゼビオホールディングス株式会社の中核子会社であるゼビオ株式会社の本社及び必要機能の移転を宇都宮市に行っていく事などを通じて、産学官の協働・共創のもとスポーツが持つ多面的な価値をまちづくりに活かし、スポーツを通じた全世代のウェルビーイングの向上によって新たなビジネスモデルの創出を目指すこととなりました》
宇都宮市は産学官連携により2030年ごろのまちの姿として、ネットワーク型コンパクトシティを土台に地域共生社会(社会)、地域経済循環社会(経済)、脱炭素社会(環境)の「三つの社会」が人づくりの取り組みやデジタル技術の活用によって発展していく「スーパースマートシティ」の実現を目指している。
この取り組みがゼビオの目指す新たなビジネスモデルと合致したわけだが、単純な疑問として浮かぶのは、同社はこれから宇都宮でやろうとしていることを郡山で進める考えはなかったのか、ということだ。
実は、過去に進めようとしたフシがある。場所は、郡山市富田町の旧農業試験場跡地だ。
同跡地は県有地だが、郡山市が市街化調整区域に指定していたため、県の独断では開発できない場所だった。そこで、県は「市有地にしてはどうか」と同市に売却を持ちかけるも断られ、同市も「市有地と交換してほしい」と県に提案するも話がまとまらなかった経緯がある。
震災・原発事故後は敷地内に大規模な仮設住宅がつくられ、多くの避難者が避難生活を送った。しかし、避難者の退去後に仮設住宅は取り壊され、再び更地になっていた。
そんな場所に早くから関心を示していたのがゼビオだった。2010年ごろには同跡地だけでなく周辺の土地も使って、トレーニングセンターやグラウンド、研究施設などを備えた一体的なスポーツ施設を整備する構想が漏れ伝わった。
開発が進む気配がないまま年月を重ねていた同跡地に、ようやく動きがみられたのは2年前。総合南東北病院を運営する一般財団法人脳神経疾患研究所(郡山市、渡辺一夫理事長)が同跡地に移転・新築し、2024年4月に新病院を開業する方針が地元紙で報じられたのだ。
ただ、同跡地の入札は今後行われる予定なのに、既に落札者が決まっているかのような報道は多くの人に違和感を抱かせた。自民党県連の佐藤憲保県議(7期)が裏でサポートしているとのウワサも囁かれた(※佐藤県議は本誌の取材に「一切関与していない」と否定している)。
トップ同士のソリが合わず
その後、県が条件付き一般競争入札を行ったのは、報道から1年以上経った昨年11月。落札したのは脳神経疾患研究所を中心とする共同事業体だったため、デキレースという声が上がるのも無理はなかった。
ちなみに、県が設定した最低落札価格は39億4000万円、脳神経疾患研究所の落札額は倍の74億7600万円だが、この入札には他にも参加者がいた。ゼビオHDだ。
ゼビオHDは同跡地に、スポーツとリハビリを組み合わせた施設整備を考えていたとされる。しかし具体的な計画内容は、入札参加に当たり同社が県に提出した企画案を情報開示請求で確認したものの、すべて黒塗り(非開示)で分からなかった。入札額は51億5000万円で、脳神経疾患研究所の落札額より20億円以上安かった。
関心を持ち続けていた場所が他者の手に渡り、ゼビオHDは悔しさをにじませていたとされる。本誌はある経済人と市役所関係者からこんな話を聞いている。
「入札後、ゼビオの諸橋社長は主要な政財界人に、郡山市の後押しが一切なかったことに落胆と怒りの心境を打ち明けていたそうです。品川萬里市長に対しても強い不満を述べていたそうだ」(ある経済人)
「昨年12月、諸橋社長は市役所で品川市長と面談しているが、その時のやりとりが辛辣で互いに悪い印象を持ったそうです」(市役所関係者)
諸橋社長が「郡山市の後押し」を口にしたのはワケがある。入札からちょうど1年前の2021年11月、同市は郡山市医師会とともに、同跡地の早期売却を求める要望書を県に提出している。地元医師会と歩調を合わせたら、同市が脳神経疾患研究所を後押ししたと見られてもやむを得ない。実際、諸橋社長はそう受け止めたから「市が入札参加者の一方を応援するのはフェアじゃない」と不満に思ったのではないか。
ゼビオの本社移転を報じた福島民友(3月29日付)の記事にも《スポーツ振興などを巡って行政側と折り合いがつかない部分があったと指摘する声もあり、「事業を展開する上でより環境の整った宇都宮市を選択したのでは」とみる関係者もいる》などと書かれている。
つまり、前出・事情通が「ゼビオが進めたかった事業が郡山では実現の見込みがなく、別の都市で進めるしかなかった」と語っていたのは、落札できなかった同跡地での取り組みを指している。
「郡山市が非協力的で、品川市長ともソリが合わないとなれば『協力的な宇都宮でやるからもう結構』となるのは理解できる」(同)
そんな「見切りをつけられた」格好の品川市長は、ゼビオの本社移転に「企業の経営判断についてコメントすることは差し控える」との談話を公表しているが、これが市民や職員から「まるで他人事」と不評を買っている。ただ、このような冷淡なコメントが品川市長と諸橋社長の関係を物語っていると言われれば、なるほど合点がいく。
「後出しジャンケン」
ここまでゼビオを擁護するようなトーンで書いてきたが、批判的な意見も当然ある。とりわけ「それはあんまりだ」と言われているのが、開成山地区体育施設整備事業だ。
郡山市は、市営の宝来屋郡山総合体育館、HRS開成山陸上競技場、ヨーク開成山スタジアム、開成山弓道場(総面積15・6㌶)をPFI方式で改修する。PFIは民間事業者の資金やノウハウを生かして公共施設を整備・運営する制度。昨年、委託先となる事業者を公募型プロポーザル方式で募集し、ゼビオコーポレ
ート(郡山市)を代表企業とするグループと陰山建設(同)のグループから応募があった。
郡山市は学識経験者ら6人を委員とする「開成山体育施設PFI事業者等選定審議会」を設置。審査を重ねた結果、昨年12月22日、ゼビオコーポレートのグループを優先交渉権者に決めた。同社から示された指定管理料を含む提案事業費は97億7800万円だった。
同グループは同審議会に示した企画案に基づき、今年度から来年度にかけて各施設の整備を進め、2025年度から順次供用開始する予定。
本誌は各施設がどのように整備されるのか、ゼビオコーポレートの企画案を情報開示請求で確認したが、9割以上が黒塗り(非開示)で分からなかった。
郡山市は今年3月6日、市議会3月定例会の審議・議決を経て、ゼビオグループがPFI事業を受託するため新たに設立した開成山クロスフィールド郡山(郡山市)と正式契約を交わした。指定管理も含む契約期間は2033年3月までの10年間。
それから約3週間後、突然、ゼビオの本社移転が発表されたから、市議会や経済界には不満の声が渦巻いている。
「正確に言えば、ゼビオは開成山体育施設整備事業とは無関係です。同事業を受託したのはゼビオコーポレートであり、契約相手は開成山クロスフィールド郡山です。しかし、今後10年間にわたる施設整備と管理運営は『ゼビオ』の看板を背負って行われる。市民はこの事業に携わる会社の正式名称までは分かっていない。分かっているのは『ゼビオ』ということだけ」(ある経済人)
この経済人によると、市議会や経済界の間では「市の一大プロジェクトを取っておいて、ここから出て行くなんてあんまりだ」「正式契約を交わしてから本社移転を発表するのは後出しジャンケン」「地元の大きな仕事は地元企業にやらせるべき。郡山を去る企業は相応しくない」等々、批判めいた意見が出ているという。
ゼビオからすると「当社は無関係で、受託したのは別会社」となるだろうが、同じ「ゼビオ」の看板を背負っている以上、市民が正確に理解するのは難しい。心情的には「それはあんまりだ」と思う方が自然だ。
そうした市民の心情に輪をかけているのが、事業に携わる地元企業の度合いだ。プロポーザルに参加した2グループに市内企業がどれくらい参加していたかを比較すると、優先交渉権者となったゼビオコーポレートのグループは、構成員4社のうち1社、協力企業5社のうち1社が市内企業だった。これに対し次点者だった陰山建設のグループは、構成員7社のうち4社、協力企業19社のうち15社が市内企業。後者の方が地元企業を意識的に参加させようとしていたことは明白だった。
だから尚更「地元企業の参加が少ない『ゼビオ』が受託した挙げ句、宇都宮に本社を移され、郡山は踏んだり蹴ったり」「品川市長はお人好しにも程がある」と批判の声が鳴り止まないのだ。
釈然としない空気
加えて市議会3月定例会では、志翔会会長の大城宏之議員(5期)が代表質問で「事業者選定は総合評価としながら、次点者は企画提案力では(ゼビオを)上回っていたのに、価格が高かったため落選の憂き目に遭った」「優先交渉権者となったグループの構成員には(郡山総合体育館をホームとする地元プロバスケットボールチームの)運営会社が入っているが、公平性や利害関係の観点から、内閣府やスポーツ庁が示す指針に触れないのか」と指摘。市文化スポーツ部長が「優先交渉権者は審議会が基準に則って決定した」「グループの構成員に問題はない」と答弁する一幕もあった。
確かに採点結果を見ると、技術提案の審査ではゼビオコーポレートグループ520・93点、陰山建設グループ528・69点で後者が7・76点上回った。ところが価格審査ではゼビオグループが97億7800万円で300点、陰山グループが101億2000万円で289・86点と前者が10・14点上回り、合計点でゼビオグループが勝利しているのだ。
また、ゼビオグループの側に地元プロバスケの運営会社が参加していることも、他地域の体育施設に関するPFI事業では、利害関係が生じる恐れのあるスポーツチームは受託者から除外され、スポーツ庁の指針などでも行政のパートナーとして協力するのが望ましいとされていることから「一方のグループへの関与が深過ぎる」との指摘があった。
こうした状況を大城議員は「問題なかったのか」と再確認したわけだが、本誌は審査に不正があったとは思っていない。大城議員もそうは考えていないだろう。ただ地元企業が多く参加するグループが、企画提案力では優れていたのに価格で負けた挙げ句、有権交渉権者になった「ゼビオ」が正式契約直後に本社移転を発表したので、釈然としない空気になっているのは事実だ。
次点者のグループに参加した地元企業に取材を申し込んだところ、唯一、1人の方が匿名を条件に「もし審査の過程で『ゼビオ』の本社移転が分かっていたら、地元企業優遇の観点から結果は違っていたかもしれない。そう思うと複雑な気持ちだ」とだけ話してくれた。
旧農業試験場跡地の入札で辛酸を舐めたと思ったら、開成山体育施設整備事業のプロポーザルでは槍玉に挙げられたゼビオ。大きな事業に関われば嫌でも注目されるし、賛成・応援してもらうこともあれば反対・批判されることもある。そんな渦中に、同社は今まさにいる。
ゼビオの本社移転について取材を申し込むと、ゼビオコーポレートの田村健志氏(コーポレート室長)が応じてくれた。以下、紙面と口頭でのやりとりを織り交ぜながら記す。
× × × ×
――本社移転のスケジュールは。
「現時点で移転日は決まっていないが、今後、場所や規模を含め、社員の就労環境に配慮しながら具体的な移転作業に着手する予定です」
――社員の移転規模は。
「ゼビオは社員約700人、パート・アルバイト約3300人です。ゼビオグループ全体では社員約2600人、パート・アルバイト約5400人です。宇都宮に移転するのはあくまでゼビオであり、ゼビオコーポレートやゼビオカードなど郡山本社に勤務するグループ会社社員の雇用は守る考えです。ゼビオについても全員の異動ではなく、地域に根ざしている社員の雇用を守りながら経営していきます」
――数ある都市の中から宇都宮を選んだ理由は。
「震災以降、宇都宮市をはじめ約70の自治体からお誘いを受けた。私たちゼビオグループは未来に向けた会社経営を行っていくに際し、自治体を含めた産学官の連携が必須と考えている。そうした中で今年2月に話し合いが始まり、当グループの取り組みについて宇都宮市が快く引き受けてくださったことから本社移転を決断した」
――ゼビオにとって宇都宮は魅力的な都市だった、と。
「人口減少や少子高齢化などかつてない社会構造の変化を迎えている中、まちづくりとスポーツを連動させ、地域の子どもから高齢者まで誰もが夢や希望の叶う『スーパースマートシティ』の実現に向け、宇都宮市が円滑な対話姿勢を持っていたことは非常に魅力的でした」
――逆に言うと、郡山ではスポーツを通じたまちづくりはできない?
「先に述べた通りです」
逃した魚は大きい
――ゼビオHDは旧農業試験場跡地の入札に参加したが次点でした。ここで行いたかった事業を宇都宮で実現する考えはあるのか。
「同跡地でも同様に産学官連携によるスポーツを通じたまちづくりを構想していました。正直、同跡地で実現したい思いはありました。ただゼビオHDは上場会社なので、適正価格で入札に臨むしかなかった。民間企業はスピード感が求められるので、宇都宮市からのお声がけを生かすことにしました」
――同跡地をめぐって行政とはこの間、どんなやりとりを?
「郡山市には私たちの考え・思いを定期的に伝えてきた。県とは、知事とお会いすることは叶わなかったが、副知事には私たちの考え・思いを話しています」
――ゼビオグループは開成山体育施設の整備と管理運営を、郡山市から10年間にわたり受託したが、同事業の正式契約後にゼビオの本社移転が発表されたため、市議会や市役所内からは「後出しジャンケン」と批判的な声が上がっている。
「これは私見になるが『後出しジャンケン』ということは、本来、公平・公正に行われるはずの入札が、ゼビオが郡山市に本社を置いていれば何らかの配慮や忖度が働いた可能性があったと受け取ることもできるが、いかがでしょうか」
× × × ×
ゼビオの宇都宮への本社移転は、将来を見据えた企業戦略の一環だったことが分かる。また、移転先のソフト・ハードを含めた環境と、パートナーとなる自治体との信頼関係を重視した様子もうかがえる。
これは裏を返せば、ゼビオにとって郡山市は▽子どもの部活動や高齢者の健康づくりにも関わるスポーツを通じたまちづくりへの考えが希薄で、▽環境(旧農業試験場跡地)を用意することもなく、▽品川市長も理解に乏しかったため信頼関係が築けなかった――と捉えることができるのではないか。
「釣った魚に餌をやらない」ではないが、地元を代表する企業とのコミュニケーションを疎かにしてきた結果、「逃がした魚は大きかった」と後悔しているのが、郡山市・品川市長の今の姿と言える。