【郡山駅前】東邦銀行跡地に風俗店建設

 JR郡山駅西口の大町地内で風俗店の建設工事が進んでいる。実はこの場所、東邦銀行の支店跡地で、地元商店主からは「風俗店に融資しないはずの銀行が、支店跡地に店を建てさせるのはおかしい」と疑問の声が上がっている。

短期間で銀行→不動産業者→風俗店に転売

東邦銀行郡山大町支店の跡地に建設中のキャバレー
東邦銀行郡山大町支店の跡地に建設中のキャバレー
【郡山駅前】東邦銀行跡地に風俗店建設 地図

 郡山駅西口から徒歩5、6分の大町地内では、市の玄関口にふさわしい市街地形成を目的に、郡山市を施行者とする大町土地区画整理事業が2005年から進められている。

 問題の現場は同事業の施行区域内にある。そこでは2階建ての風俗店が営業しているが、同店から南に数㍍の場所では新しい建物の建設工事が行われている。

 敷地内に立つ看板によると、建物は鉄骨造3階建て、主要用途はキャバレー、着工は5月7日、完了予定は10月30日と書かれているから、この稿が読者の目に触れるころには竣工していると思われる。

 そんな建物を見やりながら「あそこにキャバレーを建てていいんですかね」と首を傾げるのは大町で長年商売をしている商店主だ。

 「あそこはもともと銀行の支店があった場所だよ。普通、銀行は風俗店に融資しないよね? その銀行が跡地にキャバレーを建てさせるっておかしいと思いませんか」(同)

 キャバレーを建設中の場所は、もともと東邦銀行郡山大町支店が営業していたが、2020年1月に郡山駅前支店に統括されたことに伴い閉鎖。その後、建物は取り壊され更地になっていた。

 不動産登記簿を確認すると、次のような事実が判明した。

 同所は東邦銀行が長年所有していたが、昨年11月20日に郡山市の不動産業㈱大地物産に売却。それから1カ月も経たない12月15日に、同社から群馬県の飲食店経営会社に売却されていた。この飲食店経営会社が冒頭で触れた風俗店を運営するとともに、すぐ近くで新しいキャバレーを建設しているのだ。

 実は、風俗店は大町土地区画整理事業の一環で整備される都市計画道路「日の出通り線」の予定地内に建
っており、他の店舗や住居が代替地などに移転していく中、そこにとどまって営業を続けていた。

 つまり、風俗店が移転を迫られる中、飲食店経営会社が目を付けたのがすぐ近くにあった東邦銀行の支店跡地だったのだ。

 とはいえ前述の通り、飲食店経営会社は東邦銀行から直接支店跡地を買ったのではなく、大地物産から買
っている。

 「この構図に疑いの目が向けられているのです」

 と解説するのは県中地区の不動産業者だ。

 「銀行は風俗店には直接土地を売れないため、不動産業者を介在させて間接的に売ったのではないか。東邦銀行が大地物産に土地を売ったのは昨年11月20日。そこから1カ月も経たないうちに飲食店経営会社に売り払ったということは『東邦銀行は最初からあの土地を飲食店経営会社に売るつもりだった』と言われても仕方がない」(同)

 前出・商店主も補足する。

 「東邦銀行は支店跡地を公開入札で売ると言っていたが、結局、非公開入札になったのです。私の知人が入札に参加し『2番札だった』と残念がっていたが、その時点では落札者が誰か分からなかった。後日、東邦銀行支店長が近隣商店を回り『非公開となって申し訳なかった』と謝罪していたが、落札者が大地物産と分かったのは、それから少し経ったころでした。(東邦銀行の)現場の人たちは(大地物産から飲食店経営会社に売却されていたことを)分かっていませんでしたね」

 ただ商店主は、風俗店自体を悪く見ているわけではない。

 「真面目に営業していると思いますよ。変な客引きもしていないし。今年に入ってから駅前ではトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)が関与した風営法違反や、客引き防止条例違反といった逮捕事案が相次いでいる。それと比べたら、あの風俗店の店員は何の問題もない」

 繰り返しになるが、ここで疑問視されるのは①銀行の支店跡地にキャバレーを建てていいのか、②東邦銀行は風俗店に直接土地を売れないため、公開入札と称して不動産業者を介在させ、間接的に風俗店に売ったのではないか――の2点だ。

狙いはまちづくりへの協力

 東邦銀行は何と答えるのか。本店総務部に問い合わせると、担当者は次のように話した。

 「郡山大町支店の跡地は公平・公正という当行の方針に則り入札で売却しました。入札参加者は支店の裁量で広く募り、その結果、大地物産が落札者に決まりました」

 一方で、大地物産から飲食店経営会社に売却された件は

 「当行では関知していません。結果的にそうなっただけ」(同)

 担当者は、一般的に銀行は風俗店に融資しないことを認めた。要するに、銀行は風俗店との付き合いに一線を画しているとする中、今回の跡地に関しては「大地物産が取得後にどうするつもりだったかは、他社の経営判断なので、当行は知る由もない」(同)という見解に終始した。

 ならば、大地物産はどういう目的で支店跡地を取得したのか。そしてなぜ、取得から短期間で飲食店経営会社に売却したのか。取材に応じたのは同社の蛯原亜起子専務。

 「風俗店は日の出通り線の予定地内で今も営業しているが、その土地がセットバックされれば日の出通り線が開通後も引き続き道路沿いで営業される可能性があり、施行者の郡山市としてはできれば目立たない場所に移転してほしいと考えていた。そうした中で、当社は飲食店経営会社からどこか適地はないかと相談を受けており、すぐ近くにあった東邦銀行の支店跡地を入札で取得したのです」

 大地物産としては、支店跡地を賃貸してもいいと考えていたが、飲食店経営会社が買収を希望したので売却したという。

 「あそこなら日の出通り線が開通しても道路から少し入った場所なので、道路からは目立たない。市にとっても飲食店経営会社にとっても良い結果になったのでは」

 東邦銀行→大地物産→飲食店経営会社への転売が短期間で行われたため、疑いの目が向けられていることは蛯原専務も承知しているようだ。しかし、

 「不透明な形で取得したり、極端な金額で買収・売却していたら疑われても仕方ないが、入札で一番札を入れて落札し、儲け度外視で飲食店経営会社に売却したので、当社にとってはつつかれても何も出てこない正常な取引でした」(同)

 蛯原専務によると、今回の取引の一番の狙いはまちづくりに協力することだったという。

 「日の出通り線の予定地を、風俗店がいつまでも封じていたら工事は進みません。日の出通り線が開通しまちづくりが動き出さないと、周辺に土地を持つ私たちも事業に着手できません。そこで、みんなの役に立つことをすれば良いこととして自分に跳ね返ってくると思い、支店跡地を買収・転売したのです」(同)

 大町の商店主の中には、東邦銀行と大地物産の癒着を疑う人もいるようだ。確証がないので何とも言えないが、癒着はともかく周囲に誤解を与えたのは事実だった。

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