会津若松市の和菓子製造・販売㈱丸峰庵が8月29日、福島地裁会津若松支部から破産手続き開始決定を受けた。
丸峰庵は昨年2月、親会社の㈱丸峰観光ホテルとともに民事再生法の適用を申請した。負債総額は2022年3月期末時点で、丸峰庵が4億7900万円、丸峰観光ホテルが20億7700万円。両社とも星保洋氏が社長を務めていた。
その後、丸峰観光ホテルは会津乗合自動車がスポンサーとなり、同社が参画する「みちのりグループ」のノウハウを得て再建が進められ(詳細は本誌5月号参照)、今年8月に民事再生手続きが終結した。
一方、丸峰庵は会津乗合自動車の支援を断わり、別のスポンサーを探したが見つからず自主再建を模索していた。今年の春先には
「債権者には3年間で債権の5%を払うと通知したようだ。20分の1と大幅なカットだが、それでも『スポンサー無しで本当に払えるのか』と怪しむ声が聞かれる」(事情通)
という話が伝わっていた。
そうした中で丸峰庵は8月29日、地裁会津若松支部から再生手続き廃止と同時に、破産手続き開始決定を受けたのだ。
丸峰庵の破産を報じた地元紙によると「同社の事業は別会社に譲渡されている」という。調べると、事業を引き継いだのは㈱いっぽん(郡山市石渕町1―9)という会社であることが分かった。
法人登記簿によると、会社設立は2005年。資本金300万円。事業目的は和菓子の製造・販売、飲食店の経営。役員は代表取締役・芳賀忠是氏、取締役・隂山正弘氏。
いっぽんの前身は㈲友信という会社で、今年7月8日にいっぽんに商号変更・移行したことにより解散している。
実は、いっぽんの住所は隂山建設(1961年設立。資本金4500万円)と同じで、取締役の隂山正弘氏は隂山建設社長。そこで隂山建設に、いっぽんは関連会社なのか問い合わせると「資本関係は一切ないので、弊社が本件に対し返答することはできかねる」という。
いっぽんにもメールで質問を送ったが、担当者からは次のような答えが返ってきた。
――いっぽんが丸峰庵の経営に携わることになった経緯は。
「公益財団法人福島県産業振興センターの『福島県事業承継・引継ぎ支援センター』を通じて事業譲渡を受けました。引き受けた理由は、事業評価とともに従業員の雇用維持、駅前の空洞化阻止ならびに活性化を図るためです」
――星保洋社長と面識は。
「面識はあるが、現在、弊社と星氏との雇用契約はありません」
――いっぽんにおける和菓子の製造・販売と飲食店経営の実績は。
「今回の事業譲渡を受けるために定款を変更したものです」
――丸峰庵が民事再生法の適用を申請した際、いっぽんがスポンサーに名乗りを上げたことはあった?
「丸峰庵は自主再建を目指していたと聞いており、弊社がスポンサーに手を挙げたことはありません」
――丸峰庵は郡山市内や都内で飲食店を経営していたが、これらの店舗も引き継いだのか。
「飲食部門の一部を引き受けました」
星社長は、自主再建を目指したが上手くいかず、会社を破産させる一方、「丸峰黒糖まんじゅう」や郡山駅近辺の飲食店など収益が見込める事業を、公的機関(福島県事業承継・引継ぎ支援センター)を通じて譲渡を図ったものとみられる。
これらの事業を、いっぽんがどう育てていくのか注目される。