郡山市で起きた「結核騒動」が物議を醸している。
きっかけは10月2日に開かれた会見で「市民に注意喚起するため公表する」として、堀田操・市保健福祉部長、坪井永保・郡山医師会長らが市内で発生した二つの結核事例を説明したことだった。
一つ目の事例は8月7日。二つの医療機関から保健所に60代男性と60代女性の結核患者発生届が提出された。調査の結果、両者は同じ高齢者施設関係者と判明。患者家族、施設利用者、職員など計52人に接触者健康診断を行ったところ、発病者(※1)2人、感染者(※2)30人が確認され、市は集団感染(※3)として厚生労働省に報告した。
二つ目の事例は9月13日。保健所に60代男性の結核患者発生届が提出された。この男性は医療機関に勤務し、調査の結果、約2700人と接触していたことが判明。接触者に対しては、関係機関が説明会や接触者健康診断を行っている。10月23日現在、発病者、感染者の人数は発表されていないが、接触者健康診断が進めば複数確認されるとみられる。
会見では記者から質問が相次いだ。
――高齢者施設関係者について具体的に教えてほしい。
保健福祉部 公表は控えたい。
――重傷者はいるのか。
保健福祉部 今のところいない。
――二つの事例に関連性は?
保健福祉部 ない。
――市内で二つの事例が発生したことをどう受け止めているか。
保健福祉部 例年と比べて多いわけではないので、せきなどの症状が2週間以上続いている場合は早めに医療機関を受診してほしい。
――先発患者の感染経路は?
郡山医師会 結核は感染してから発病するまでの期間が長いので、感染源は特定できない。
この手の問題では、発表のタイミングが適切だったかどうかが往々にしてクローズアップされる。市内の医療機関からは「二つ目の事例は接触者が2700人もいたのに、9月13日に結核患者発生届が提出されてから記者会見が開かれるまで3週間近くかかった」と公表の遅れを指摘する声が聞かれる。
ただ、市保健所保健・感染症課によると「厚労省に結核の公表基準があり、集団感染は公表するが接触者の多寡は該当しない」という。それでも公表に踏み切ったのは、一つ目の集団感染から時間を置かずに二つ目の事例が起きていることと、接触者が約2700人に上ったことを踏まえ「市民に注意喚起する必要があると考えた」(同)としている。
公表は市独自の判断だったことがうかがえるが、現場レベルでは納得していない人もいるようだ。
「病院によっては発熱やせきの患者が来ると、医師や看護師が防護服を着て、レントゲン検査をして結核かどうかを確認しているところもある。おかげで余計な作業が増え、医療提供に支障が出ている。市や医師会には、有益な情報を速やかに出してほしいと言いたいですね」(某医療機関の事務員)
情報は公益性を考えた時、特定の個人に不利益をもたらす場合を除いて全て公表するのが得策。少しでも隠したり小出しに公表すれば途端に疑いの目を向けられ、正しい情報を公表しても信用されなくなる。もちろん、情報を受け取る側にもリテラシーが求められる。郡山市の公表の仕方がベストだったかどうかは分からないが、大きな混乱は起きていないことを踏まえると、ベターと評価していいのではないか。