今回の衆院選で、福島3区から立候補した上杉謙太郎氏(49)ほど候補者調整に振り回された人物はいないのではないか。
上杉氏は前回、前々回と旧3区から自民党公認で立候補し、小選挙区では立憲民主党・玄葉光一郎氏に敗れたものの比例復活で2期務めた。今回の衆院選は「10増10減」の区割り改定で本県選挙区が4に減り、党本部と県連は新3区の候補者を菅家一郎氏とする一方、上杉氏を比例上位とする候補者調整を行った。
ところが、党派閥の裏金問題に関連し、上杉氏が政治資金収支報告書に計309万円分の収支を記載していなかったことが判明。幹事長注意の処分を受けた。
その後、解散総選挙に突入し、石破茂総裁、森山裕幹事長ら新しい党執行部のもとで不記載議員の処遇が検討される中、上杉氏は10月10日に立候補を辞退する意向を示した。表向きは「辞退」と報じられたが、県連関係者によると「小泉進次郎党選対委員長から辞退するよう求められた」という。
今後について、上杉氏は「また衆院議員になることを目指し、一から出直す」(10月11日付福島民友)と語
った。事務所関係者も「どんな形でもいいので次の衆院選に挑まないと有権者から忘れられてしまう」と危機感を滲ませたが、一部支持者の間では「白河市長を目指してはどうか」という声が上がっていた。
現職・鈴木和夫氏(74)は現在5期目で、任期満了時(2027年7月28日)には77歳を迎える。多選と高齢を考えると、6選を目指すかは微妙。そこで「次の市長には上杉氏が適任」との見方が出ているのだ。
理由は二つある。
一つは、両氏とも早稲田大学卒業で、旧3区時代から鈴木氏は上杉氏の応援演説を引き受けるなど関係が良いこと。もう一つは、神奈川県出身で落下傘候補の上杉氏が、白河市に家族(妻、4人の子ども)を呼び寄せて暮らしていることだ。
「私は、市政は鈴木氏、国政は上杉氏を応援しているが、理想は鈴木氏から上杉氏への後継指名なんですけどね」(上杉氏の高齢支持者)
もっとも、本誌が比例立候補を辞退した直後(10月11日)の上杉氏に話を聞くと「あくまで衆院議員を目指す」と断言した。
「3区からは菅家先生が立候補しているので、どういう形で衆院議員を目指すかは軽々に発言できないことをご理解ください。支持者からは立候補辞退という決断に対し、残念と同時に評価の声を多くいただきました。県南に根を張って10年、そのうち衆院議員を7年務めさせていただきました。地元に恩返しするためにも、引き続き白河を中心に衆院議員への返り咲きを目指したい」
ちなみに「次の白河市長」を意識するかについては「そういうウワサは耳にしたことがあるが、あくまで衆院議員にこだわりたい」とのことだった。
ところがその翌日(10月12日)、上杉氏と同様に不記載議員として党非公認となっていた菅家一郎氏が3区からの立候補断念を表明すると、代わりに上杉氏の立候補が急転直下で決定。不戦敗を避けたい県連からの立候補要請に応えた形だが、党公認は得られず無所属での選挙戦を強いられた。
党の〝駒〟のように振り回される候補者の悲哀を見た思いだが、当の上杉氏は本誌に「比例では不記載について有権者から直接審判をいただけないので、その機会を得られたことに感謝します。県南と会津のために働きたい」とコメント。今号発売時には当落は判明しているが、とりわけ落選した場合、それでも衆院議員を目指すのか、白河市長候補に推されるのか、去就が注目される。