南相馬市で活動するブローカー兼医療・介護コンサルで、借金踏み倒しや関連施設職員への賃金未払いなどの問題が浮上している吉田豊氏。
関係者によると、吉田氏が実現を目指していたとされるのは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を核とした「医療・福祉タウン」構想だ。高齢者の住まいの近くにクリニック、介護施設、給食事業者などを設け、その事業を一手に引き受けることで大きな収益を上げる。公益性が高いので復興補助金の対象にもなりやすいとみられていた。
実際に、自身が実質的オーナーを務める会社・スマイルホーム名義で同市原町区本陣前にある約1万平方㍍の雑種地も取得していた。
その土地を担保に地元の中小企業経営者から5500万円、東京都の男性から1650万円を借りたが、同地はその後も空き地のままだ。補助事業に採択されなかったことから収支計画が破綻し、そのままなし崩しになったとみられる。
さらに大阪のヴィスという会社からも1億2000万円借り、吉田氏や関連企業のスタッフらが連帯保証人となった。高金利のため、1年後にあすか信用組合で借り換えたが、「元本のみ返済され、利息分の返済が滞っていた」として、ヴィスから利息分と遅延損害金2600万円の支払いを請求されるトラブルが発生。連帯保証人となったスタッフはすでに退職しているのに支払いを求められ、自宅を差し押さえられたり自己破産した人も出た。
そんないわくつきの土地で5月中旬、複数の人物の姿が目撃された。何か動きがあったのかと思い、不動産登記簿を確認したところ、昨年12月25日、金属製屋根工事業のシマムラ(宮城県塩釜市、嶋村宗将社長)という会社に所有権が移っていた。設定されていた抵当権は同日付ですべて抹消されていた。
シマムラに取得の狙いを問い合わせたところ、嶋村社長は「吉田豊氏のことは知らない。もともと南相馬市で複数のアパートのオーナーになっていてつながりがあった。そうしたところ、宮城県内の不動産業者から紹介され、価格的にも手頃だったので、購入することを決めた。仙台市の不動産会社に管理を委託し、売却も含め今後の利活用方法を検討していきたい」と明かした。
購入金額は濁したが、抵当権がすべて抹消されたということは、少なくとも約2億円を支払ったことになる。地元不動産業者も「その金額に見合う土地とは思えない」と驚くほどだが、同地にそれだけの価値があるのか。
吉田氏をウオッチングし続けている市内の事情通は「実際はスマイルホームの共同代表になっている地元工務店の経営者が手を回して、売却先を決めたようです」と話す。
「あすか信用組合への借り入れは1年で返済するという約束で、吉田氏らは昨年秋ぐらいから金策に奔走していました。このままでは自分に火の粉が飛んでくると考えた工務店経営者が動いたのでしょう。ただし、実際の売却額は2億円に満たず、(1650万円を貸し付けている)東京の男性には抵当権を放棄するよう吉田氏が懇願したそうです」
危機的状況は乗り切ったようだが、これまで吉田氏を支援してきた工務店経営者や東京の男性もさすがに呆れて、距離を置き始めたとか。吉田氏が実質的オーナーを務める桜並木クリニックも家賃滞納のウワサが流れる。懐事情が厳しい中、なりふり構わず投資話を持ちかけたり、借金を申し込む可能性があるので、南相馬市周辺に住む人たちは警戒する必要がある。