【南会津町】渡部正義町長インタビュー(2025年)

【南会津町】渡部正義町長インタビュー(2025年)

経歴

わたなべ・まさよし 1958年7月生まれ。県立田島高校卒。旧田島町役場入庁後、総合政策課長、総務課長などを歴任。南会津町副町長を経て2022年4月の町長選で初当選を果たした。現在1期目。

 ――町内4つのスキー場のうち、会津高原だいくらスキー場と北日光・高畑スキー場を2031年3月末で閉鎖する方針案を発表しました。今後の方向性について。

 「昨年12月以降、観光施設16施設の方針案を提示し、議会や住民説明会で議論を重ねてきました。当初は財政面を考慮していましたが、住民の皆さまからは公費支出の削減だけでなく、地域における経済効果・利便性・立地性を重視する声が多く寄せられました。特に、だいくらスキー場については、署名活動が行われるなど存続を強く望む意見が数多く寄せられました。正直なところ、4つのスキー場すべてを維持するのは困難だと考えていましたが、住民の皆様の声を民意と捉え、方針案の修正を行いました。この間、議会全員協議会でこの方針の見直しについて説明しました。今後は4つのスキー場すべてをフラットな視点で見直し、施設修繕費などの公費負担を削減しつつ、継続を目指します。次の指定管理期間が終了する2031年度以降については、降雪量やスキー・スノーボード人口の動向、2029年度までの運営状況を総合的に判断していく方針です。このことについては、7月にタウンミーティングを開催し、最終案の説明を行ってまいります」

 ――公約に掲げる子育て・医療・福祉政策の充実、結婚支援対策、若年層の定住対策について。

 「公約の12項目については、進捗状況をホームページで公開しています。子育て支援では、2023年度から0歳から2歳までの保育料の年間2分の1を町が負担する『保育所入所応援助成事業』を開始しました。さらに、本年度予算には『学校給食支援事業』を盛り込み、所得に関わらず、小中学校の全児童生徒の学校給食費の3分の1を町が負担する制度を導入しました。医療・福祉分野では、閉院した伊南地域のクリニックの後継として、東京の恩田泰光医師がオンライン診療を中心とした『ハイブリッドファミリークリニック南会津町』を本年度中に開業すべく準備を進めており、町も必要な予算を確保し受け入れ体制を整えています。福祉では、聴覚障がい者支援を目的に、3月の議会で南会津町手話言語及びコミュニケーションに関する条例が可決されました。結婚支援対策としては、8名の縁結びアドバイザーによるサポートや、お見合いイベント、共通の趣味を持つ方がオンラインで集えるコミュニティサイトの開設など、多様な出会いの機会を提供しています。現在28団体が登録している結婚サポート事業所登録制度も運用中です。昨年度からは新婚世帯に5万円を交付する『新婚生活エール事業』も開始しました。若年層の定住対策は喫緊の課題です。本町は人口戦略会議が発表した『消滅可能性自治体』に該当し、20歳代から30歳代の女性の減少率は県内ワースト5に入る72・7%です。若い女性が町を離れる理由の一つに、魅力ある職場が少ないことが挙げられます。これに対し事業者と協力し、一定の給与とやりがいのある仕事を提供することが不可欠です。企業誘致も積極的に進めています。その一環として、ドローンの積雪寒冷地実証実験地に選定されました。これは、南相馬市にあるロボットテストフィールドの条件不利地域での研究施設という位置づけです。この実証実験を機に、ドローンの部品製造や研究を行う企業を誘致したいと考えており、ロボットテストフィールドとの連携強化を図っていきます。ドローンは成長産業であり、農薬散布、建設事業、災害対応などで活用されており、今後ますます需要が高まっていくことが期待されます。さらに、本年度からは新規事業として『女性在宅ワーカー就業支援事業』を立ち上げました。子育てなどで一時離職した女性が、デジタルスキルを向上させることで次のステップに進めるよう支援する事業です」

8つの重点事業

 ――関係人口の創出については。

 「『チームビルディングツーリズム』として、企業研修の場として南会津町を選んでいただく事業を進めています。これは、首都圏の企業の人材育成を目的としたもので、モデル的に来ていただいた企業からは非常に好評で、将来的に可能性がある事業だと感じます。また、スポーツ合宿の誘致にも力を入れています。すでに埼玉栄高校や千葉県船橋市の市立船橋高校との連携があり、施設の協定締結を進め、誘致に取り組んでいます。昨年度からは女子実業団ソフトボールのホンダリヴェルタが南会津町の野球場や屋内練習場を利用して合宿を行っており、本年度も継続して来ていただいています。『星空誘客』にも力を入れています。町民向けに定期的に星空観望会を開き、地域の魅力を再発見してもらっています。星空に詳しい住民にガイドになってもらい、宿泊客に解説してもらうことで、付加価値の高いサービスを提供し、宿泊を伴う誘客に繋げたいと考えています。南郷地域の『会津高原星の郷ホテル』ではすでに星空ガイドが活躍しており、2023年度には秋篠宮妃紀子さまも宿泊され、その美しい星空が宮内庁のホームページでも紹介されました。新たな交流としては、2026年開通予定の国道289号『八十里越道路』に大きな期待を寄せています。この道路が開通すると、新潟県からのアクセスが向上し新潟空港からも近くなるため、インバウンドを含めた大きな可能性を秘めていると認識しています。手付かずの自然や伝統文化を、新潟方面や海外からの観光客に新たなルートとしてPRしていきたいと考えており、新潟県三条市、只見町、本町で円卓会議を立ち上げ、取り組みを進めています」

 ――その他の重点事業について。

 「本年度の予算では、大きく8つの重点事業を掲げています。結婚・子育て・就労機会の創出がメインです。それから、町の魅力を高める取り組みとして、星空の魅力発信や、会津田島駅周辺の中心市街地活性化を進めています。農林業では、次世代に繋ぐため、荒海地区と鴇巣地区の2カ所で圃場の大型化を進めています。町民の安全・安心のために、新たに防犯カメラ設置事業を予算計上しております。昨年、強盗被害があったので、交通量の多い主要道路にカメラを設置し、犯罪抑止や事件解決時の警察との連携を強化していきます。消防団については、若い団員で準中型免許がない、またはマニュアル車を運転できない団員がいるため消防車両を運転できるよう、免許取得の補助も開始しました。地球温暖化対策と循環型社会づくりに向けては、ゼロカーボンタウンに関する包括的連携協定を民間事業者と締結しました。最後に、公共施設の効率的な管理運営と行財政改革の一環として、観光施設等の見直しを進めていきます」

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