玉川村の観光交流施設「森の駅 yodge(ヨッジ)」の指定管理契約が今年度末で満了を迎える。翌年度以降に向け、新たに指定管理契約を結び直すことになるが、ある事情で「次の指定管理者はどうなるのか」ということが注目されている。
現運営会社は親会社が撤退
ある事情とは、現在、指定管理者になっているたまかわ未来ファクトリーの親会社が変わったこと。
本誌2021年12月号に「特定コンサル業を重用する玉川村」という記事を掲載した。ここで言う「特定コンサル業」が、たまかわ未来ファクトリーだ。2018年9月26日設立。資本金500万円。会社設立時の本店所在地は札幌市で、現在は玉川村南須釜字奥平290となっている。
同社には親会社があり、それが札幌市中央区のインサイトという会社。たまかわ未来ファクトリーの最初の本店所在地が札幌市だったのはそれが理由。インサイトのHPによると、1975年設立。資本金1億3925万円。2008年に札幌証券取引所アンビシャス市場上場。
同社が玉川村に子会社を設立した経緯は不明だが、以前の同村では、「たまかわ未来ファクトリー優遇」を思わせることが多々あり、本誌2021年12月号記事ではその背景に迫った。
そんなたまかわ未来ファクトリーに変化があったのは昨年5月。親会社のインサイトがたまかわ未来ファクトリーから手を引いたのだ。
インサイトの発表(昨年5月31日付)によると、「2024年5月31日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるたまかわ未来ファクトリー株式会社が行う事業から撤退することを決議し、同社株式の譲渡を完了いたしました」とのこと。
この発表ではたまかわ未来ファクトリーの業績も示されていたが、インサイトの持ち株比率での損益だったため、おおよそで全体の売上高、当期純利益を紹介する。売上高は2021年、2022年、2023年約3000万円でほぼ横ばい。当期純利益はすべてマイナスで、2021年が約47万円、2022年が約414万円、2023年が約470万円だった。3年連続で赤字だったことが分かる。
株式譲渡先は、ビルマネジメント業の「トーカンオリエンス」(東京都新宿区)で、福島市に東北支社がある。もともと同社はたまかわ未来ファクトリーの株の一部を所有しており、インサイトから譲渡を受けたことで筆頭株主になった。これに伴い、たまかわ未来ファクトリーの役員は、インサイト関係者がすべて退任し、トーカンオリエンス関係者が代表取締役に就いた。
たまかわ未来ファクトリーは、観光交流施設「森の駅 yodge(ヨッジ)」、複合型水辺施設「乙な駅たまかわ」の指定管理者になっている。そのため、議会では「親会社変更により、指定管理契約はどうなるのか」といった一般質問があった。
昨年12月議会で林芳子議員が質問した。そこで分かったことは、まず村には代表者が変更になったと報告があったという。
指定管理契約についての村当局の答弁は「管理運営体制に大きな変更はないと認識している」というものだった。
林議員は「実質的に運営会社が変わったのだから、指定管理契約がそのままというのはどうなのか」といった視点で何度か質問した。
村当局の見解は「代表者が変わったのは承知しているが、指定管理契約を結んでいるのはたまかわ未来ファクトリーであり、同社の出資者がどうであれ、たまかわ未来ファクトリーとして存続している以上は指定管理契約は有効」というもの。
「実質的な経営者が変わったのだから契約も見直す必要があるのでは」という林議員と、「指定管理契約を結んでいる会社は存続している」とする村で、平行線だった。
いいように利用された
林議員が「運営会社が変わったのだから、指定管理契約がそのままというのはどうなのか」ということにこだわったのにはこんな事情がある。
村内では「ヨッジや乙な駅は、実質、たまかわ未来ファクトリー主導で行われたようなもの」と見ている人は少なくない。
ヨッジは須釜小四辻分校跡地を活用してつくられたが、同事業に関する議案は賛成6、反対5のギリギリでの可決だった。乙な駅はもともと民間所有地で、取得の際、一度は否決された経緯がある。いずれも採算面などを憂慮してのことだった。一方で、「どちらもたまかわ未来ファクトリーが運営することになる」ということが整備前から言われており、実際にその通りになった。にもかかわらず、その母体は撤退した。
つまり、たまかわ未来ファクトリーにいいように利用されたという印象を持っているのだ。なお、ここで言う「たまかわ未来ファクトリー」は親会社が変わる前、すなわちインサイトを指している。
そんな中で、冒頭で書いたようにヨッジは今年度で指定管理契約満了を迎える。ヨッジは2021年7月オープンで、指定管理契約は同年4月から5年間。来年3月末で期間終了となる。
村によると、「12月議会には次の指定管理契約の詳細を示したい」とのこと。そこから逆算して、9月中には要項を定めて募集し、ヒアリングなどを経て、12月議会までに指定管理者内定に至りたい考え。ちなみに、現在、ヨッジには年間600万円の指定管理料が支払われているが、その金額の変更なども今後は検討していくようだ。
一方、村はオープンからこの間のヨッジの評価については次のように話した。
「オープン時が新型コロナ禍でスタートダッシュにつまずいた形にはなりましたが、年々人気も高まっており、集客も増えてきているので、目指した形になってきていると思っています」
おそらく、村としてはたまかわ未来ファクトリーに継続して指定管理者になってもらいたいと思っているはず。というのは、前述したように、乙な駅たまかわの指定管理者にもなっており、一体的に盛り上げていきたいという構想だったからだ。ちなみに乙な駅たまかわは昨年9月にオープンし、指定管理期間は昨年4月から5年間となっている。
ある関係者はこう話す。
「おそらく、たまかわ未来ファクトリーは次の指定管理者に応募すると思う。というより、ほかはどこも手を挙げないでしょう。ただ、引き続きたまかわ未来ファクトリーが指定管理者になっても大変だと思うけどね」
次の指定管理者は年内に決まる予定。その動向に注目したい。
























