7月に開かれた田村市議会の臨時会で、市が提出した新病院の工事請負契約に関する議案が反対多数で否決されたことを先月号で伝えたが、その後、新たな動きがあった。
安藤ハザマとの請負契約が白紙に
新病院の施工予定者は、昨年4~6月にかけて行われた公募型プロポーザルで、選定委員会が最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマを選んだ。しかし、これに納得しなかった白石高司市長は最優秀提案者に安藤ハザマ、次点者に鹿島と選定委員会の選定を覆す決定をした。これに一部議員が猛反発し、昨年10月、百条委員会が設置された。
今年3月、百条委は議会に調査報告書を提出したが、その中身は法的な問題点を見つけられず、白石市長に「猛省を促す」と結論付けるのが精一杯だった。
そうした因縁を引きずり迎えた7月の臨時会は、直前の6月定例会で新病院に関する予算が賛成多数で可決していたこともあり、安藤ハザマとの工事請負契約も可決するとみられていた。ところが、結果はまさかの否決。白石市長が反対に回った議員をどのように説得するのか今後の対応が注目されたが、本誌に飛び込んできたのは予想外の情報だった。
「市は6月下旬に安藤ハザマと仮契約を結んだが、白紙に戻し入札をやり直すというのです」(経済人)
議会筋によると、7月下旬に開かれた会派代表者会議で市から入札をやり直す方針が伝えられたという。今後、6月定例会で可決した新病院に関する予算を減額補正し、新たに入札を行って施工予定者を選び直す模様。設計はこれまでのものを踏襲するか、若干の変更があるかもしれないという。
「安藤ハザマは今回の新病院工事で、地元企業に十数億円の仕事を発注する予定だったが、船引町商工会に『契約が白紙になったため、地元発注ができなくなった』と連絡してきたそうです」(前出・経済人)
船引町商工会の話。
「8月上旬に安藤ハザマから連絡がありました。市から契約白紙を告げられたそうです。担当者からは繰り返し謝罪されたが、経済が落ち込む中、地元企業に様々な仕事が落ちると期待していただけに残念でなりません」(白石利夫事務局長)
船引町商工会では安藤ハザマと取引を希望する地元企業から見積もりを出してもらうなど、同社とのつなぎ役を務めていた。ガソリンスタンド、車両のリース、弁当など様々な業種から既に見積もりが寄せられていただけに「取引がなくなり、皆落胆しています」(同)という。
市のホームページによると、新病院は2023~24年度にかけて工事を行い25年度に開院予定となっているが、議会筋によると、入札をやり直せば工事は24年夏~26年夏、開院はその後にずれ込む。予定より1年以上開院が遅れることになる。
「白石市長は否決された工事請負契約を可決させるため、反対した議員を説得すると思われたが、そうした努力を一切せずに入札やり直しを決めた。一方、反対した議員も、当初計画より工事費が高いことを理由に否決したが、これ以上工事が遅れれば物価高やウクライナ問題のあおりで工事費はさらに割高になる。白石市長も反対した議員も新病院が必要なことでは一致しているのに、互いに歩み寄らなかった結果、『開院の遅れ』と『工事費のさらなる増額』という二つの不利益を市民に強いることになった」(前出・経済人)
入札をやり直して開院を遅らせるのではなく、政治的な協議で軌道修正を図り、予定通り開院させる方法は取れなかったのか。
市内では「互いに正論を述べているつもりかもしれないが、市民の立場に立って成熟した議論ができないようでは話にならない」と冷めた意見も聞かれる。白石市長も議会も猛省すべきだ。
※新病院建設を担当する市保健課に問い合わせると「安藤ハザマとの契約はいったんリセットされる。今後どのように入札を行うかは9月定例会など正式な場でお伝えすることになる」とコメントした。