二本松市3祭り同日開催の良し悪し【二本松の提灯祭り】【針道のあばれ山車】【小浜の紋付祭り】

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二本松市3祭り同日開催の良し悪し【二本松の提灯祭り】【針道のあばれ山車】【小浜の紋付祭り】

 10月7〜9日の3連休にかけて、二本松市では「二本松の提灯祭り」(7〜9日)、「針道のあばれ山車」(諏訪神社例大祭、6〜8日)、「小浜の紋付祭り」(7、8日)が開催された。二本松の提灯祭りが2019年から日程変更となり、今回、初めて3つの祭りの日程が重なった格好だが、これは観光振興の観点から見た場合、あるいは実際に祭りに携わる関係者からすると、プラスだったのか、マイナスだったのか。

屋台店主は「稼ぐ機会が減った」と嘆き節

屋台店主は「稼ぐ機会が減った」と嘆き節

 3つの祭りのうち、針道のあばれ山車(諏訪神社例大祭)と小浜の紋付祭りは、以前から国民の祝日である「スポーツの日」(旧体育の日)を含めた10月の3連休絡みで行われていた。

 これに対し、二本松の提灯祭りは、かつては10月4〜6日の固定日程で開催されていた。だが、祭り参加者の負担軽減や観光面などから、日程変更が議論され、2019年から「10月の第1土曜日から3日間」に変わった。もっとも、2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中止となっており、今回で日程変更後3回目の開催となる。

 過去2回は、針道のあばれ山車、小浜の紋付祭りと日程は被らなかった。スポーツの日は10月第2月曜日で、2019年は14日、昨年は10日だった。すなわち、針道のあばれ山車と小浜の紋付祭りは、2019年は12〜14日、昨年は8〜10日の3連休絡みで行われた。二本松の提灯祭りは、2019年は5日が第1土曜日だったため、同日から3日間、昨年は1日が第1土曜日で同日から3日間の開催だった。

 今年は7日が第1土曜日、9日がスポーツの日(第2月曜日)だったため、曜日の並びの関係で、初めて3つの祭りが同時期に行われたのである。

 巻頭グラビアでも紹介したように、この期間、市内は「祭りムード」一色に染まった。一方で、3つの祭りが同時開催になったことは、観光振興の観点から見た場合、あるいは実際にお祭りに携わる関係者からすると、プラスだったのか、マイナスだったのか。

 観光客の入り込みは、二本松の提灯祭りが約19万人だった。昨年は約21万人だったというから、約2万人減ったことになる。ただ、それは最終日(9日)が1日中雨天(しかも土砂降り)だったことが影響しているという。関係者によると「初日は昨年より多かったから、最終日の雨がなければ昨年を上回ったはず」とのこと。なお、昨年は屋台でのアルコール類の販売を禁止するなど、新型コロナウイルスに伴う規制があったが、今年はそういった規制はなかった。

 針道のあばれ山車の入り込み数は約8000人。昨年は約5000人だったというから、約1・6倍に増えた。コロナ規制がなくなったことに加え、あばれ山車は日中(8日午後)、提灯祭りは夜が見どころのため、相乗効果が図られたのではないか、と関係者は見る。

 なお、針道のあばれ山車は諏訪神社例大祭の一部で、「後祭り」という位置付け。「本祭り」はあばれ山車の前日(今回は7日)に行われたが、「観光客が多く訪れるのは本祭りではなく後祭り」(地元住民)とのこと。

 小浜の紋付祭りの入り込み数は約1000人で、昨年は1500人だったというから3割減。ほかの2つに比べると認知度が低いこともあってか、見物客を食われた格好。関係者が紋付羽織袴の格好で練り歩く「本祭り」は8日で、あばれ山車と日程が重なる。もっとも、あばれ山車と紋付祭りが同日になるのは今年に限ったことではない。関係者は「何年かに1度はこうした日程(提灯祭りと同時開催)になりますから、今年の事例を参考に、どうしたら多くの人に来てもらえるか、考えていく必要があるだろう」という。

 こうして見ると、観光振興の側面から、3つの祭り同時開催が良かったのか、悪かったのかは判断しにくい。特に、近年はコロナに伴う中止・規模縮小などがあったため、余計に難しい。なお、小浜の紋付祭りは2019年は令和元年東日本台風の影響で本祭りが開催できず、その翌年にはコロナに伴う中止もあった。

屋台の出店数に影響

屋台店主はどこに出店するか選択を迫られた(提灯祭りの屋台)
屋台店主はどこに出店するか選択を迫られた(提灯祭りの屋台)

 一方で、関係者からは「屋台を出す人たちは、同時開催で『稼ぐ機会が減った』と嘆いていました」との声が聞かれた。

 市生活環境課によると、提灯祭りの屋台出店者は163店舗で昨年比3店舗増。前述したように、昨年は屋台でのアルコール類の販売禁止という規制があったが、今年はないため、もっと増えるのではとの見方もあったが、微増にとどまった。2019年は196店舗だったというから、30店舗以上減ったことになる。

 「2020年から2021年にかけては、イベント関係がどこも自粛だった。そのため、全く仕事がない状況で、廃業してしまった業者も少なくない」(ある関係者)

 ある店主は「例年は針道に行ってたけど、今年はこっちだけにした」と話した。

 ちなみに、同日は福島市で稲荷神社例大祭や飯坂けんか祭りが行われており、「昨年、提灯祭りに出していた屋台店主が、今回は稲荷神社例大祭に出店していた」との声も聞かれた。二本松市内だけでなく、近隣でも祭りが行われる中で、どこに屋台を出すかを「選択」していることがうかがえる。

 針道のあばれ山車は、東和支所地域振興課によると、屋台の申請件数で6件、昨年は7件だったという。ただ、1業者で複数の屋台を出したところもあるため、実数は異なるようだ。正確な数字は確認できなかったが、「昨年は十数店舗、今年はその半分くらいではないか」(関係者)とのこと。

 この関係者によると、「針道は7日が本祭り、8日があばれ山車だが、本祭りはあまり人が来ないんだよね。だから実質1日しか見込めないから、日程が被ったら、こっちに出す人は少ない。向こう(提灯祭り)は丸々3日間あるから」という。

 小浜の紋付祭りは、岩代支所地域振興課によると、10店舗で、昨年は22店舗だったというから、半数以下になった。まさに「同時開催」の影響と言えよう。そのため、今年はレイアウトを変え、1つの通りに集中するように工夫したという。

 「仲間は二本松(提灯祭り)に行く人が多い。俺は小浜で店を始め、ここで育ててもらった義理があるのでここに屋台を出すことにした」(屋台店主)

 以前は、今週は提灯祭り、翌週は針道のあばれ山車か、小浜の紋付祭りという具合に商売ができたが、今年はそれができなかった。ただでさえ、コロナ禍ではそうした機会が全くなく、ようやくイベントなどが再開されるようになったのに、「同時開催で稼ぐ機会が減った」となれば嘆くのも当然だろう。

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