10年足踏み【郡山旧豊田貯水池】の利活用

10年足踏み【郡山旧豊田貯水池】の利活用

 郡山市の旧豊田貯水池跡地が利活用されないままの状態が長年続いている。この間、議会や民間からはさまざまな提言が行われているが、市は検討中と繰り返すばかり。郡山市政にとって、同跡地の利活用は残された重要課題になりつつある。

具体策は「次の市長」の政治課題に

【郡山旧豊田貯水池】地図

 旧豊田貯水池は郡山市役所から南東に0・7㌔、郡山総合体育館や商業施設(ザ・モール郡山)などに隣接する市街地にある。面積8万8000平方㍍。稼働時は水面積6万7000平方㍍、貯留水量12万立方㍍を誇ったが、現在は辺り一面に雑草が生い茂る。

 旧豊田貯水池が完成したのは今から360年以上前の明暦2(1656)年。農業用ため池と水道用貯水池として長く機能し、明治45(1912)年には安積疏水の水を利用した豊田浄水場が建設されたが、給水100年を迎えて老朽化が進んでいたことから、市は同浄水場の機能を堀口浄水場に統合。豊田浄水場は平成25(2013)年に廃止された。

 これを受け、当時の原正夫市長は旧豊田貯水池の水抜きを進めたが、同年4月の市長選で初当選した品川萬里氏は水抜きを停止。「水害対策や歴史的役割を踏まえた学習への活用を検討する」として市役所8部局からなる研究会を設置した。しかし、水抜き停止は市民や議会に意見を聞かずに行われただけでなく、貯水池内の水の流れが止まったことで水質が悪化。辺りには悪臭が漂うようになり、蚊や水草が大量発生した。

 結局、水抜きは再開されたが、市はこの問題をめぐり定例会や委員会で議員から厳しい追及を受けた。以来、品川市長は同貯水池跡地の利活用に及び腰の感がある。

 「品川市長は局地的な豪雨が増えていることを踏まえ、旧豊田貯水池に雨水を溜め、緩やかに流すことで下流域の負担軽減を図ろうと調整池としての利活用を考えた。その考え自体はよかったが、独断で水抜きを止めたことでつまずき、同貯水池内にある第5配水池を利用した暫定的な雨水貯留施設を整備した後は具体策を示してこなかった」(事情通)

 議会では利活用に関してもさまざまな質問が行われ、議員からは室内50㍍プール、全天候型ドーム、水害対策機能を備えた都市公園などの整備を求める声や「福島大学農学部の移転先になり得るのではないか」といった提案が出された。しかし、市は「総合的に検討していく」との答弁を繰り返すばかりだった。

 停滞する状況を動かそうと、2017年6月には議会内に設置された公有資産活用検討委員会からこんな提言が行われた。

 《市役所や文化・スポーツ施設が集中する麓山・開成山地区においては、施設利用者の駐車場が不足しているという市民の意見が多いことから、旧豊田浄水場跡地の一部について、当面、安全性を確保のうえ、駐車場や自由広場等として暫定利用できるよう、必要最低限の整備に向け対応すること》

 ある議員はこう話す。

 「旧豊田貯水池跡地に隣接する郡山総合体育館は福島ファイヤーボンズ(バスケット)やデンソーエアリービーズ(女子バレーボール)がホームゲームを行っているが、駐車場が圧倒的に足りない。そこで議会としては、暫定的な使い方として一部に砂利を敷いて駐車場としつつ、具体的な利活用策を早急に示すべきと提言したのです」

 同検討委員会が提言に当たり行ったアンケート調査で市民に旧豊田貯水池跡地の最終的な利用方法を尋ねたところ、「開成山・麓山地区における公共施設等の駐車場として整備」が32・2%、「新たな公共施設と駐車場を整備」が27・5%「浸水対策や水辺空間を生かした公園等として整備」が16・9%、「民間へ売却」が11・1%という結果になった。開成山・麓山地区は公園、体育館、図書館などの公共施設が集中しているが、駐車場が少なくて不便なため駐車場整備を求める声が多かった。

 民間からも利活用に関する提言が行われた。郡山商工会議所内に設置された郡山の未来像を考える若手組織・グランドデザインプロジェクト会議が2018年11月に▽パークアンドライドを意識した地下駐車場、▽バス、モノレール、LRT(ライトレールトランジット)や2020年代に実用化を目指す空飛ぶクルマなどのターミナル、▽ライブ、シネマシアター、マルシェ等に利用できるイベント基地の整備を提案した。

 こうした議会や民間による動きを受け、市は2019年度に副市長をトップとする旧豊田貯水池利活用検討推進本部や有識者懇談会を設置。同年度末には利活用方針案の中間とりまとめを発表し、緑を生かした①体験重視案、②保全重視案、③歴史重視案の3案が示された。しかし、翌年度に行われたパブリックコメントで市民から寄せられた意見は「3案とも検討するに値しない」と手厳しいものだった。

 「市街地にはたくさんの公園があるのに、今さら緑を生かした場所が必要なのか、もっと有効な使い方があるのではないかと考える市民が多かったようです」(前出・事情通)

 2021年6月には、議会内に設置された旧豊田貯水池利活用特別委員会での議論をもとに、議会から二度目の提言が行われた。

 《具体的な整備にあたっては音楽都市、スポーツ、交流人口の拡大、防災・減災、リスクマネジメント、駐車場確保の観点を重視するとともに参考人(※市内15団体の役職者)からの意見に配慮し、市民が納得する活用方法となるよう検討していくこと。また、周辺地区との一体的利用の観点から、宝来屋郡山総合体育館と開成山公園を容易に移動できる動線の確保について検討すること。(中略)なお、具体的な利活用方針が決定するまでの間、旧豊田貯水池の暫定的な利活用を図ること》

定まらない方向性

一面雑草だらけの旧豊田貯水池跡地
一面雑草だらけの旧豊田貯水池跡地

 その後、市では同年10月から翌22年5月にかけて市民との意見交換会を開催したが、そこで掲げられた利活用コンセプトは「全ての世代が安心・安全で元気に過ごせるみどりのまち SDGs体感未来都市」という非常に漠然としたものだった。

 独断で水抜きを止めた反省から、さまざまな組織を立ち上げ、議会や民間、市民の意見に耳を傾けようとしている姿勢は評価できる。ただ、議論を深めれば深めるほど中身が抽象的になり、方向性が定まらなくなっている印象を受ける。

 市の窓口である公有資産マネジメント課は「市民の中には旧豊田貯水池の存在すら知らない人がかなりいる。そこで市民に現地を見てもらい広く意見を募るため、現在、一般開放に向けた準備を進めている。いつまでにこうするという期限は定めていない」と話すが、浄水場廃止から10年経っても前進する気配が見られないのだから、状況が変わることはしばらくなさそう。

 「この間の具体的な動きと言えば令和元年東日本台風の翌年、市民から議会に水害対策機能を意識した利活用を求める請願が出されたことくらい。品川市長の3期目は2025年4月まで。任期が残り1年半しかない中、自分が手掛ける可能性がない施策を打ち出すとは思えない。4期目も目指すなら話は別だが、現状では次の市長に持ち越しと考えるのが自然だ」(前出の議員)

 そのまま水抜きを進め、最初から市民や議会と相談して事を進めていれば、状況は今とは違っていたかもしれない。

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