受給対象ではない住居手当を7年8カ月にわたり受け取っていたとして、矢吹町の30代男性職員が戒告の懲戒処分を受けた。
報道や関係者の情報によると、この男性職員は2013年2月から賃貸物件を契約し、住居手当1カ月2万6700円を受給していた。
2015年10月に賃貸物件を引き払い、実家に住むようになったが、住居手当の変更手続きを怠り、同年11月から今年6月までの7年8カ月分、245万6000円を受給していた。職員は届け出を「失念していた」と話している。また、町もこの間、支給要件を満たしているかどうかの確認をしていなかった。
本人の届け出により発覚し、不適切受給した分は全額返還された。
同町総務課によると、毎月渡される給与明細に住居手当の金額は記されている。それを確認せず7年もの間手当をもらい続けたということになる。本当に故意ではなかったのか、それとも住居手当のルール自体よく理解せずもらっていたのか。
懲戒処分は免職、停職、減給(6月以内)、戒告の4段階がある。町は職員に故意や悪質性はなかったとして、懲戒処分の中で最も軽い戒告処分、監督する立場だった管理職の50代男性2人を口頭注意とした。処分は9月15日付。
町内在住の年配男性は「結構重大な問題だと思うけど、ずいぶん軽い処分だったので呆れました」と語る。
というのも、9月11日、群馬県富岡市の職員が住宅手当235万円を不正に受け取っていたとして、停職6カ月の懲戒処分となったことが先行して報じられていたからだ。
富岡市の榎本義法市長は「公務員としてあるまじき行為。誠に遺憾であり深くおわび申し上げる。綱紀粛正の徹底と再発防止を図る」(上毛新聞ウェブ版9月12日付配信)とコメントしている。
「金額的には富岡市より矢吹町の方が大きいが、軽い処分で乗り切ろうとしている。蛭田泰昭町長は来年1月任期満了を迎える町長選に再選を目指し立候補する意向を示している。不祥事という印象が付くのを避けようとしたのかもしれません」(町内在住の年配男性)
気になったのは、住居手当として2万6700円もの金額を毎月受け取っていた、ということだ。
町によると、住居手当はアパートなどの賃貸物件が対象で、マイホームに住む場合は支払われない。補助割合は家賃の半額分で、上限額は2万8000円。矢吹町で家賃5万6000円のアパートとなれば、比較的広い部屋で暮らせそうだ。
ちなみに、県市町村行政課によると、上限2万8000円は県・市町村共通の金額とのこと。
厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によると、民間企業で住居(住宅)手当が支払われている割合は47・2%。金額は平均1万7800円。同調査は常用労働者30人以上を雇用する企業6400社が対象で、零細企業は含まれていない。住居手当がない企業もあるだろうから、実態は割合・金額ともにもっと低いと思われる。
本誌ではこの間、「民間準拠と言われている公務員の給与水準だが、実際には大きくかけ離れている」と指摘し、記事でそのカラクリを解き明かしているが、住居手当一つとっても民間準拠ではないことが分かる。そういう意味で、さまざまな背景が読み取れる住居手当の不適切受給だったと言える。