桑折町は県の義援金配分委員会から2018年に受けた東日本大震災の災害義援金192万4400円が、被災した232世帯に未配分だったと発表した。町職員が配分対象の世帯を謝罪して回り、口座に振り込んでいる。配分対象となった町民は「6年前の未配分義援金が今になって見つかるのは怠慢だ。30年前の悪弊が今の職員にも受け継がれているのではないか」と愛想を尽かす。
桑折町の大槻公彦総務課長が、義援金未配分が発覚した経緯を話す。
「7月に福島市で歳入歳出外現金のうち253万円が会計処理されず、宙に浮いた事案が発覚した。町でも同様の事例がないか調査したところ、義援金約190万円が配分されていないことに気づいた」
歳入歳出外現金とは、予算に含まれず預かり金として保有する現金。「現金」の名称だが、金融機関の口座で管理する。大槻課長によると、複数の課がまたがって入金したり引き出したりしていた。問題の義援金は総務課と保健福祉課(現健康福祉課)が管理。担当者が配分を失念し、人事異動で事務引き継ぎが行われないまま放置されていた。6年前の事案のため、管理職の中には退職している者もいる。
町は未配分を公表した後、職員が対象世帯を回り謝罪した上で、聞き取った口座に入金している。未配分の金額は震災で住宅が全壊した51世帯には各1万3600円、半壊した181世帯には各6800円。歳入歳出外現金は、これまで誰も責任を持って管理していなかったが、今後は会計管理者がチェックするという。
町の対応に納得していないのはある高齢住民。不祥事が起こるたびに職員の業務能力を疑い、仕事意識の低さに愛想を尽かしている
「未配分を謝りに健康福祉課の職員2人が来たが、『担当者が忘れていた』と説明するばかりで要領を得ない。職員たちは全容を理解していないのではないか。自宅は半壊のため、受け取るのは6800円だが、仮に1円だとしても義援金は全国から寄せられた好意だ。町の不手際で6年間届かなかったのは、人様の温かい気持ちに背いたことになる」
職員2人は名刺も置いていかず、謝罪もそこそこに次の家に向かったという。
高齢住民は、過去の桑折町職員の失態を思い出す。
「30年以上前の話だ。知り合いが、国民年金が支給されないため、役場に相談に行ったが誰も窓口に出てこず、大声で職員を呼ぶとようやく来た。職員はごみのように積み上げられた文書の中から書類を引っ張り出して『忘れてました』と言ったという。事務処理は電子化が進んでいるはずだが、仕事への意識の低さは昔から変わらない」
最近でも、開庁時刻の8時半に役場に行くと、奥の方では窓口に背を向けてコーヒーで一服している職員が目に付くという。午前10時と午後3時の「おやつ時」の1時間前にコーヒーを飲みだす職員には呆れた。
本誌は住民の信頼に恥じない仕事をしていれば、いつ休んでもいいし、おやつも自由と考える。この住民が職員のコーヒーブレイクに目くじらを立てているということは、仕事ぶりが基準に達していないということ。
「桑折町は小さな自治体のため、町民は職員がどこの家の生まれだか、誰の親戚なのか事細かに把握している。不祥事があっても『なあなあ』で済ませてしまう」(高齢町民)
この町民は義援金未配分問題で、何よりも高橋宣博町長(67)=4期=の姿が見えないのを問題視する。
「高橋町長の名前でA4判のお詫びの文書が各戸に配られただけだ。紙1枚で済ませる姿勢が職員にも伝播するのではないか」
積み重なった町民の不信は根深い。