5月31日、6月1日、矢祭町のユーパル矢祭多目的ホールにて「矢祭町刀剣展示会」が開催され、国内外から多くの来場者で賑わった。同展示会は、武士が使う武器の機能美を通じて日本の歴史と文化の奥深さを伝えてきた。今回は展示品に火縄銃やゲベール銃など近世・近代に取り入れられた鉄砲も加わり、日本の武器の国際性を感じさせた。
福島県の郷土ゆかりの刀を中心とした名刀が展示。会津十一代兼定を含む「和泉守兼定十三振り」、「陸奥大掾三善長道」など計五十振りの名刀が公開され、来場者は日本の美意識が詰まった切っ先から柄までに眺め入った。平安時代の重要美術品である「貞綱(折返銘)」の刀、鎌倉時代の重要刀剣である「無銘 青江の刀」、「固山宗次作天保十年三月日」も並んだ。
銃砲では慶長元和期の「挟間筒」、銘「高畠甚六」の火縄銃や、安政年間の日本製「前装管打式銃(ゲベール銃)」などが展示され、武器が刀から銃へ転換した歴史を追った。
新撰組ゆかりの刀や装身具も展示され、ファンにとっても見逃せない内容となった。
鑑賞だけでなく、和を感じる多彩な催しも充実。5月31日には、オープニングセレモニーに続き、大英博物館の元キュレーターで日本刀研究家のポール・マーティン氏によるギャラリートークが行われた。参加した刀剣ファンは、海外の目を通して日本刀の普遍的価値をあらためて感じた。同日には、日本銃砲史学会による古式砲術演武が披露された。甲冑姿の砲手が登場し、「ズドン」と迫力ある砲音が会場に響きわたった。

6月1日には、建築家であり茶道家の椿邦司氏がスーツケース茶室「ZEN-An 禅庵」のパフォーマンスとお点前を披露した。地元茶道団体「裏千家 綾香会 菊池社中」もお点前を披露した。郡山市の道場、新誠館の一門は中村流居合抜刀道演武を披露。真剣での試し斬りや形の演武に会場は引き締まり、静謐な時間が流れた。
矢祭町の佐川正一郎町長は、展示会への反響について、「昨年以上の721名と多くの刀剣ファンで賑わいました。今回から名刀だけでなく火縄銃やゲベール銃なども展示され、海外からの来場も多かったですね。鉄砲展示は新たなファンの獲得につながったと感じます。インバウンドも増えたことで、日本の歴史・文化が世界に広まっていることを実感します。次回もさらに趣向を凝らした内容で展示会を発展させたい」。
矢祭町刀剣展示会は、刀剣の展示に留まらず、建築家、茶道家、武道家らを交えたパフォーマンスを企画し、来場者を飽きさせないイベントでリピーターを増やしている。インバウンドの増加を追い風に日本文化への注目が集まる。矢祭町は展示会を通じて日本の歴史と文化を国内外に発信し続ける場として認知され始めている。