おおつき・ひろた 大槻商事、大槻電設工業代表取締役。2017年5月に県電設業協会長に就任(4期目)。福島商工会議所副会頭、県建設産業団体連合会副会長を兼務。
厳しい状況乗り越え、業界健全化を目指す
――資材高騰の影響は。
「メーカーの値上げが続いています。私たちは卸から商品を購入するわけですが、その卸からも『(値上げは)まだまだ続きそうです』と言われています。仕切り価格(卸から工事店に販売する価格掛率)も上がっているので、影響が全体に波及し、厳しさを実感している状況です。
もう一つは、ケーブルに使われる銅の価格が高騰し、銅自体も不足しているので、見積もりを出した時の金額と契約時の金額に差が出る場面に出くわすことです。公共工事にはスライド条項がありますが、民間工事にはないので、上がった分をどこがどう負担するかは業界全体で決める必要があると思います。そういった決め事がないと仕事欲しさに利益度外視で契約を結ぶ業者が現れ、業界の健全発展を妨げかねません。今後も資材高騰が続くことを考えれば、業者にシワ寄せがいく事態は避けるべきです」
――働き方改革の進ちょくも重要です。
「国は『残業なし』や『週休2日制』を推進していますが、では、その分だけ工期を伸ばすのか、経費をみるのかというと必ずしもそうはなっていません。最低賃金1500円を目指す話も出ていますが、中小零細企業の経営を知れば簡単でないことは容易に分かります。正直、耳障りのいい言葉ばかり先行しているような気がします。国には働き方改革を推進するなら、それに見合う現実的な工期や経費などをみてほしいと思います。
完成図書も未だに紙ベースで分厚い束をやりとりしていますが、これをデジタル化すれば、私たちの事務作業は減るし、昔の図面もすぐに引っ張り出せるし、保管場所も不要です。たまに古くなった青図(青焼きの図面)を確認することがありますが、結局、紙が黄色くなっていて判別できないことがほとんどです。だったら、協会員が受注した工事は協会がデジタル化した完成図書を管理すれば、県発注の電気工事のデータバンクとなり、無駄が省かれ、工事の履歴も明確になるので、県にとっても働き方改革の推進につながるのではないでしょうか」
――人手不足も深刻です。
「発注時期によっては十分な職人の数を確保できず、工期に間に合わないケースが散見されます。人が少なければ一人にかかる負担が増すので、ミスが起きるリスクも高まります。工期を単年度で区切るのか否かや、発注の時期や仕組みを変えるなど大胆な変化に取り組まないと、厳しい状況を乗り越えるのは難しいと思います」
――最後に、協会が重点的に取り組んでいる事業について。
「インターンシップに注力しています。県内各地区の工業系高校から申し入れがあるので、私たちの仕事を知っていただくとともに、ものづくりの大切さに触れることで電設業の仕事に夢を抱き、従事したいと思ってくれる学生を一人でも多く増やしたい。さらに協会から気付いたことをお客様に忌憚なく伝えることで、業界の健全化も目指していきます」