サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ(大倉智社長)は3月28日、いわき市で記者会見を開き、新たなホームスタジアムを同市の小名浜港に建設する計画を発表した。名称は価値創造の場という意味を込めた「IWAKI STADIUM LABO(いわきスタジアムラボ=仮称)」。8000~1万人の規模を検討している。
ホーム戦が行われる年間20日以外の日も活用される「まちの構造が変わる345日の居場所」をコンセプトに掲げ、臨海道路1号線に面する側にビルディング棟を設ける。カフェなどに加え、〝学び〟や〝教育〟など地域課題解決につながるテナントの入居を検討する。いわゆるアウェーサイドにはスタンドを設けず、多目的広場として活用する。
総工費はまだ構想段階であり資材高騰の影響もあるため非公表とした。
小名浜に決めた理由については、Jリーグから求められている要件に加え、人が集まりやすくてより経済効果が高くなる場所、浜通りの象徴でもある海が見える場所などの要素を複合的に判断して決定した。整備候補地はアクアマリンふくしま西側の県有地2・8㌶で現在駐車場(約800台分)として使われている。
いわきFCには現在、J1クラブライセンスが付与されているが、ホームスタジアムであるハワイアンズスタジアムいわきはJ3基準で、これまで「例外規定」が適用され、J2で戦ってきた経緯がある。
同規定ではJ2昇格から3年目のライセンス申請時(今年6月)に新スタジアムの場所、予算、整備内容を提示し、5年目(2027年6月)に着工、9年目(2031年)開幕まで完成させる必要がある、と定められている。そのため、同クラブは新スタジアム建設に向けた意見収集と機運醸成に努めてきた。2023~2024年度にかけて、スポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革推進事業」の実行団体に採択され、「Iwaki Growing Up Project(IGUP=新スタジアム検討委員会)」を設立。この間市民を交えて検討を続け、「町の構造を変える」など4つのビジョンをまとめて、市内で冊子として配布していた。

同社の大倉社長は今後の課題として、駐車場問題と、建設費用確保の問題をあげた。県や市からは「小名浜地区の駐車場不足や周辺混雑に対応するよう指摘された」という。行政と連携し代替駐車場整備や公共交通整備を検討していく必要がある。
建設費用に関しては、近年全国で開業したJリーグクラブのホームスタジアムを見ると、民設民営で事業費約40億円のアシックス里山スタジアム(愛媛県今治市)、広島県が事業主体で事業費約286億円のエディオンピースウイング広島(広島市)など〝ピンキリ〟状態。昨年10月には、ジャパネットホールディングスが約1000億円をかけて、サッカースタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」(長崎市)にアリーナ、ホテル、商業施設、オフィスビルを備えた「長崎スタジアムシティ」を開業し、注目を集めている。
「単なる競技用スタジアムではなく、いかに地域に役立てる施設にするかを重視している」という点を強調した大倉社長。財源を確保して、まちづくりにつながる施設を整備できるか、市民の期待は高まる一方だ。
イオンモールいわき小名浜、アクアマリンふくしま、今年9月に道の駅としてオープンするいわき・ら・ら・ミュウに加え、夏には小名浜道路が開通し、常磐自動車道からのアクセスが改善する小名浜港。スタジアム整備構想が打ち出されたことで、さらに注目度が増しそうだ。