未成年の元教え子の女性にわいせつな行為をしたとして不同意性交等罪に問われた県立修明高(棚倉町)の元常勤講師の男の裁判が地裁郡山支部で継続している。4月23日には2回目の公判が開かれ、人事担当として元講師に聴取した県教育庁高校教育課の男性職員への証人尋問が行われた。不同意性交等罪を構成する口腔性交被害の時期特定が今後の争点となる。
注目点は口腔性交被害の時期特定
元講師の男は白河市大信の金子智哉氏(28)。金子氏は不同意性交等罪の起訴内容を一部否認し、弁護人は「罪に問われるとしても不同意わいせつか不同意性交等の未遂に留まる」と主張している。
金子氏は大学卒業後の2021年に県内の公立高校に常勤講師として採用された。2024年4月に修明高に異動が決まり、別の高校の教え子だったAさんとLINEの連絡先を交換した。Aさんから相談があるとの連絡を受け、自分の車に乗せて犯行現場で停車していた際に事件は起こった。
検察官が読み上げた起訴状によると、金子氏は2024年4月ごろ、郡山市の郡山庭球場北側駐車場に停めた自家用車の車内で、当時17歳の女性Aさんに手首を押さえつけるなどの暴行を加え、拒否が困難な状況で着衣の上から胸を触ったり、直接陰部を触るなどのわいせつな行為をした。さらに、Aさんの頭を押さえて自身の陰茎を舐めさせる口腔性交をさせたともした。
金子氏は直接陰部を触ったことや口腔性交させたことについては否認している。ただ、初公判では「正確な日付は覚えていないが、2024年のゴールデンウイークの前後に郡山庭球場の駐車場に停めた車内で一方的にキスしようとしたり、服を脱がせようとしてしまったことはあった」「それ以前の日に市内のラウンドワンに停めた車の中で互いの同意の下、キスしたり口腔性交したことはあった」と述べた。検察側が犯行時期とする4月ごろには、不同意性交等罪に当たる口腔性交はなかったこと、あったとしてもそれは検察側が特定した日とは別日で、さらに「同意」があったので罪にはならないとの論だ。
有罪判決には、犯行の時期と様子を特定し、厳密な証拠が必要になる。裁判所の判断は今後の被害女性の証言が重要になってくる。だが、少なくとも教員が未成年の元教え子と淫行していたのは事実。成人、教師としての責任は免れない。金子氏は不同意性交等罪で逮捕・起訴されたのとは別に、今年2月に県教委から懲戒免職された。県教委は18歳未満の教え子にわいせつな行為をした教職員は実名を公表の上、懲戒免職する基準を設けている。
被害が明らかになったのは事件から半年経った昨年10月30日だった。Aさんが通う高校で性被害に関するアンケートが行われた際、Aさんが教員に相談し、金子氏の淫行が発覚した。
以下の内容は、今年4月23日に開かれた公判での県教育庁高校教育課職員の証言による。昨年秋に淫行が発覚して以降、Aさんと金子氏にそれぞれ所属先で聞き取りが行われていたが、食い違いが生じたため、同職員が昨年11月14日に白河市にある県南教育事務所で金子氏を1~2時間程度聴取した。金子氏に対しては、それ以前に所属先である修明高の校長が1回目の聞き取りをしていた。
同職員が校長の聞き取り内容を基に金子氏に確認したところによると、Aさんと金子氏が郡山庭球場で会ったのは5月の連休とその前の計2回。事件となった淫行は5月だった。
金子氏は、「Aさんと車内で話す中で『かわいそう』のようなことを言われ、自分の中で混乱したのでAさんにまたがるような形になりキスに至った」と話し、Aさんにキスをしたり胸を触ったりしたことを認めたという。車内の雰囲気が悪くなったので、金子氏の方からAさんに出ていくよう促し、Aさんが従うと、今度は逆に止めようと金子氏がAさんの腕をつかんだ。最終的にAさんの方から「信じていたのに」というような発言があり、車から出ていったという。「怖い思いをさせたかもしれない」と反省した金子氏は、1週間後、Aさんに謝るために謝罪文と菓子折りを持ちアルバイト先を訪ねた。
裁判では口腔性交させたり被害女性の陰部を触ったかどうかが争点になっているが、前述の県教育庁による2回目の聴取では、金子氏は「(昨年)5月の事件ではしていない」と答えたという。聴取前には修明高の校長がしたためた1回目の聴取内容を共有していたが、金子氏が口腔性交させたり陰部を触ったりするなどの内容は把握していなかったという。2回目の聴取で初めて金子氏が打ち明けた。
同職員が口腔性交などの行為はいつの出来事なのか金子氏に確認すると、「5月より前なので4月のことと思うが、時期がはっきりしない。暗かった記憶があるので、昼間に会った郡山庭球場とは別の市内の駐車場と思う」と答えた。
4月23日の証人尋問を終えた後、下山洋司裁判長は「検察官は他にも証人を準備しているが、伝聞では全容をつかむのは難しい。まずAさんの証言を聞くことはできないのか」と、検察側にまずは被害女性が証言する機会を優先するように求めた。検察側は「それが望ましいとは承知している。Aさんが法廷で証言できる状態にあるかうかがっている状況」と明かした。被害女性の証人尋問日程は、後日改めて指定することとなった。
元講師の懲戒免職や裁判とは別に、修明高では生徒同士のトラブルがいじめ重大事態に発展している(本誌1、2月号参照)。解決には学校側と生徒・保護者側の歩み寄りが欠かせないが進展は伝わってこない。今回の証人尋問では、金子氏を最初に聴取した人物が当時の所属長だった修明高の校長と判明した。生徒間のトラブルや教職員の非違行為に対応する所属長の立場に思いを馳せる。