2018年に、当時勤務していたいわき市内の中学校の女子生徒に対し、18歳未満と知りながら、教員の立場を利用して同校保健室で淫行をしたとして、児童福祉法違反(淫行させる行為)に問われた元中学校教諭の男の初公判が11月5日、地裁いわき支部(齊藤研一郎裁判官)で開かれた。男は「立場を利用していないし、淫行もしていない」と起訴内容を否認している。
いわき市の元男性教諭が無罪主張
児童福祉法違反に問われているのは、いわき市の会社員、齋藤仁被告(59)=本籍猪苗代町。昨年11月に被害が発覚し、同12月8日に県教委は齋藤被告を懲戒免職した(免職時に勤務していたのは、被害が起こった学校とは別の学校)。
その後、県警が強制わいせつ容疑で書類送検し、今年5月17日付で地検いわき支部が受理した。9月30日付で児童福祉法違反で在宅起訴された。起訴状によると、齋藤被告は2018年7月21日~8月24日、当時15歳の女子生徒の相談に乗るなどして信頼や好意を寄せられていることに乗じ、立場を利用して18歳未満と知りながら、保健室で女子生徒の陰部を舐めるなど性交類似行為をして淫行させた。
証言台に立った齋藤被告は、細身でスーツ姿に黒縁眼鏡をかけていた。白髪交じりの頭は、どこかしら「教頭先生」の雰囲気があった。
起訴内容が事実かどうか問われた齋藤被告は「『信頼や好意に乗じた』や『立場を利用した』、『淫行』というのが間違っている」と述べ、無罪を主張した。弁護人は「齋藤被告の取り調べの際に捜査機関の誘導があり、供述調書を確認しないまま印鑑を押してしまった」として、供述の任意性を争う方針を示した。
検察側の証拠によると、齋藤被告は1989年から中学校教諭として働き始め、事件が起こった中学校には2014年から勤めた。被害者のクラスには社会科を教えていたという。被害者は小学校時代に不登校となり、中学校では保健室登校をしていた。齋藤被告が一度相談に応じたのをきっかけに、定期的に相談対応・助言をするようになり、その甲斐あってか被害者は保健室登校が減り、齋藤被告に好意を抱くようになったという。
齋藤被告は、被害者が好意を寄せていることに気づき、相談を持ち掛けられると、次第に放送室や空き教室など人目のつかない場所に移動し抱きつくようになった。性的欲求から身体接触はエスカレートし、接吻に及んだ。児童福祉法違反に問われているのは、2018年の夏休み中の淫行。空き教室で勉強している被害者に声をかけ、保健室で犯行に及んだ。
検察によると、女子生徒が被害を周囲に打ち明けたのは今年9月で、芸能事務所の性被害報道がきっかけだったという。時期からして、昨年大々的に報じられたジャニーズ(現スマイルアップ)創業者による性加害事件とみられる。
ジャニーズでは、創業者が年が大きく離れた少年たちを「グルーミング(=親身な態度を見せ性的に手なづける)」していたことが問題視された。教員は年少の教え子の信頼を自ずと得る立場であり、教育現場では同様のことが起こりうる。