本誌11月号に「先行き不透明な箕輪スキー場」という記事を掲載した。猪苗代町の箕輪スキー場が今シーズンの営業ができない可能性が浮上したため、その背景と同スキー場の今後についてリポートしたもの。その後、正式に今シーズンの営業を断念することが決まったが、元従業員は早い段階から「営業は難しいだろう」との思いを抱いていたという。
「施設老朽化」で買い手が付かず!?

箕輪スキー場は第三セクター「横向高原リゾート」が運営していた。同社は1988年に猪苗代町とエスティティコーポレーションの出資で設立され、翌1989年に箕輪スキー場をオープン、さらに翌年の1990年にはホテルプルミエール箕輪をオープンさせた。
その後、エスティティコーポレーションは、2003年2月に民事再生法の適用を申請。これを受け、同社が所有していた横向高原リゾートの株式(運営権)は加森観光→マックアースへと移った後、2018年に現在のブルーキャピタルマネジメントが取得した。運営会社交代が繰り返された間に、増資が繰り返され、町の出資比率は約2・3%程度になり、残りの約97・7%はブルーキャピタルマネジメントが所有する状況になった。
運営会社が何度も入れ替わるのは、経営が安定していないからということにほかならない。オープン直後は約15万人の入り込みがあったが、スキー人口の減少、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故、新型コロナウイルス感染症などの要因があり、近年は3万人から4万人台で推移していた。そんな理由で、経営状況は芳しくなかった。
そうした中で、同スキー場の今シーズンの営業が危ぶまれているということが表面化したのは、地元紙(福島民報10月16日付、福島民友17日付)の報道による。両紙報道を総合すると、おおむね以下のような内容だ。
○約50人いた従業員は今春までに半減し、残りの従業員も10月15日に賃金未払いを理由に退職した。
○ホテルは7月7日から休業している。
本誌はこれら地元紙報道があった少し前に「箕輪スキー場は大丈夫なのか」といった声を耳にしており、何らかの予兆はあったということだろう。
前述の地元紙報道があった後、本誌がブルーキャピタルマネジメントに問い合わせると「現時点で弊社からお答えすることはありません」とのことだった。
一方で、町は次のように話した。
「今回の件がある前から、(ブルーキャピタルマネジメントがスキー場とホテルを)『売却したいと考えているようだ』というような話が伝わってきていたので、町は株主として説明を求めています。ただ、なかなか向こう(ブルーキャピタルマネジメント)の役員の方が来て状況を説明してもらう、という形にはなっておらず、同社の代理人を介してのやり取りになっています。代理人の方には『売却などの考えがあるなら株主である町にも相談してほしい』ということは伝えています。それとは別に、町としては今シーズンも運営してもらえるよう、さまざまな方法を探っているところです」
町は何とか今シーズンも営業をしてほしいとの意向を示したが、ちょうどスキー場はオープンに向けて準備が始まるタイミングだった。それだけに「この時期に、そんな状況では難しいのではないか」(ある町民)との声もあり、今シーズンの営業はやはり不透明だろうというのが前号記事の結論だった。
元従業員の証言

それからしばらくして、正式に「今季営業断念」が伝えられた。福島民友(11月23日付)によると、《町は(11月)19日に開いた町議会全員協議会で、同スキー場について「今季営業は難しくなってきた」と説明。今後もスキー場事業を継続していくためにも、町が施設の保全管理をしていく考えを示した》という。
ある関係者はこう話す。
「スキー場を廃止するとしたら、あそこは国有林だから原状回復して返さなければなりません。その費用は10億円以上になるのではないか。ホテルの解体費用も数億円はかかる。つまりは廃止するとしても莫大なお金がかかるということです。だから、町は事業を継続したいのだろうが、施設の老朽化もあり、身動きが取れない状況に陥っていると言えます」
本誌は前号記事掲載後、元従業員に話を聞くことができた。
「コロナ禍を経て、箕輪スキー場、ホテルプルミエール箕輪は数年前からだいぶ厳しい状況でした。コロナ禍以降はグリーンシーズン対策として、スキーシーズン以外は、ゲレンデをドックランとして使ったり、駐車場でゴーカートを走らせたり、デイキャンプ・バーベキューをしたりしたが、あまり上手くいなかった。近年はちょっとした備品でも調達できなかったほか、給与の遅配もありました。そもそも、施設(スキー場のレストハウスやホテル)自体も老朽化が進んでおり、雨漏りがしたり、壁にカビが生えていたり、機材の問題でフロア内のアナウンスができなかったり、天井に落下の危険性があったりと、いろいろと問題が出ていたが、(資金的に)対応できる状況ではありませんでした」
決定的だったのは、「電気代が払えず、今年9月に電気を止められたこと」という。前述した施設の問題などを含め、その時点で「いまの会社で運営を続けるのは無理」と感じたようだ。元従業員の中には給与を払ってもらえず、労働基準監督署に相談した者もいるが、まだ解決していないという。
ところで、前号記事では、「最終的にはISホールディングスグループ頼みか」と書いた。同グループの代表・遠藤昭二氏は猪苗代町出身。証券事業やFX取引などのISホールディングスを筆頭に、いくつかのグループ企業がある。そのうちの1つに猪苗代スキー場や会津磐梯カントリークラブ、猪苗代観光ファーム(道の駅猪苗代隣接地のいちご園)などを運営している「DMC aizu」があり、同社は最近、猪苗代リゾートスキー場とホテルを取得した。
町内の関係者は、前号の本誌取材に「箕輪スキー場も遠藤さんのところで運営してもらえれば理想なんですけどね」と話しており、それが唯一の存続の道とさえ思えた。
ただ、前出の元従業員によると、「その可能性は低そう」という。
「ブルーキャピタルマネジメントでは、2、3年前から箕輪スキー場とホテルプルミエール箕輪の引受先を探していました。要するに可能なら売却したかったんです。実際、この間、私が知っているだけで3社と交渉しています。そのうちの1社が遠藤さんのところで、昨年2回視察に来ました。一方で、ブルーキャピタルマネジメントでは、現在も継続して引受先を探しています。ということは、遠藤さんとは話がまとまらなかったということでしょう」
箕輪スキー場は近隣エリアでは雪質がよく、スキー客の評判も上々のようだが、猪苗代町内のほかのスキー場とは離れているため、連携させるのが難しい。加えて、施設の老朽化の問題もあり、なかなか手を出すところはないのだろう。そういったことからしても、スキー場、ホテルの今後は不透明と言わざるを得ない。