すぎやま・じゅんいち 1957年生まれ。大沼高校、東京農業大学農学部卒。衆議院議員秘書を経て2003年から県議連続5期。その間議長を務める。4月15日に告示された会津美里町長選で無投票で再選を果たす。
―─4月15日告示の町長選では無投票で再選されましたが、率直な感想をお聞かせください。
「告示の1週間前に、新人の方が立候補に向けて事前審査を行ったという情報が入りました。そのため選挙戦になることを想定し、必要な準備を進めましたが、結果的に私以外に立候補者は現れず、無投票で2回目の当選を果たすことができました。
私は県議会議員の選挙も経験していますが、県議選と町長選は全く別物ということを今回あらためて感じました。県議時代は告示日まで様々な活動ができましたが、町長は現職の場合、普段は公務に臨まなければならないことを踏まえると選挙活動には一定の制限がかかります。また、4年前の町長選は選挙戦になることが分かった上で立候補しましたが、今回は無投票になるかどうか分からない中で準備を進めなければなりませんでした。そして実際、告示直前に新人が立候補するかもしれないという話になり、選対会議を開催し後援会組織の引き締めを図りました。今後に向けては良い経験になったと捉えています」
――1期目の総括についてうかがいます。
「町長に就いて感じたのは、あらためて、会津美里町は良い町だなということと、町長の仕事は大変だなということでした。特に就任当初はコロナ禍ということもあり、自分が描いていた施策に取り掛かることができず、コロナ対応に追われる日々でした。
コロナが収束しても、ロシア・ウクライナ問題や米トランプ政権など世界情勢の影響から不安定な経済状況に置かれています。物価高騰が町民生活を直撃し、エネルギー価格や食品価格の上昇が大きな負担になっています。町としても町民の皆さまの日々の暮らしを考え、必要な支援策の検討と実行に努めてきましたが、それでも課題は山積しているのが実情です。
会津美里町は2005(平成17)年に会津高田町、会津本郷町、新鶴村が合併した町ですが、それぞれの地区で優先的に取り組まなければならない課題が1期目の4年間を通じて見えてきました。それを踏まえて必要な施策を展開していくことが今後の課題でもあり、2期目に向けて立候補を表明させていただいた理由でもあります」
――会津美里町の課題についてはどのように認識されていますか。
「全国の自治体でも大きな課題となっていますが、やはり少子高齢化対策と人口減少問題は最重要課題だと思います。また、本町の基幹産業は農業ですが、後継者不足も深刻な問題で、町として農家の皆さまをどう後押ししていくかも重要と考えています。
高田地域の商店街は閉店が相次いでおり、いわゆるシャッター通りと化していますが、そうした現状を町民の皆さまはどう考えているのか意見を聞くため、2023(令和5)年に『高田地域まちなか賑わい創出協議会』を立ち上げました。今年度は基本計画を策定する予定となっており、引き続き町民の皆さまと協議を続けていきます。来年度には本郷地域でも同様の協議会を立ち上げ、町民の皆さまと賑わい創出に向けて話し合い、基本計画を策定する予定です。
一方、新鶴地域は商店街がないので、高田・本郷地域とは違う形での振興を図っていく考えです。具体的には、ふれあいの森公園等を利活用した整備をしていきます。まずは元新鶴村長時代に整備された陸上競技場を、一部全天候型競技場としてリニューアルしたいと思います。本町は中学駅伝が全国レベルを誇っており、昔から長距離に強い土壌がありますので、競技力の向上と選手の育成を図り、将来的に駅伝チームの合宿や大会を誘致できればと考えています」
――2期目の選挙公約についてうかがいます。
「少子高齢化対策と人口減少問題に取り組むのはもちろん、農商工の振興や教育環境の整備など、本町を取り巻く課題に真正面から向き合っていきます。と同時に、先述した新鶴地域の競技場整備といったハード事業も進めていきます。優先順位を見極めながら、成果を挙げることにこだわっていきたいと思います」
――とりわけ少子高齢化対策と人口減少問題は重要ですね。
「合併した当初の本町の人口は約2万5000人でしたが、現在は1万8000人を切っています。人口減少に関する予測値を上回るスピードで人口が減っており、このままいけば2050年には1万人を切り、2075年には5000人を切るという見立てもあります。何もせず、ただ手をこまねいているだけでは人口減少に歯止めはかけられません。町として為すべきことをしっかりと為すことで、人口減少に歯止めをかけるだけでなく、関係人口の創出にもつなげていきたいと考えています。町でできることは何か、県・国がすべきことは何かを精査し、優先順位をつけながら必要な施策に取り組んでいきます」
――最後に2期目の抱負をうかがいます。
「1期目の時と同様、町民の皆さんが良いまちだと思えるような、笑顔の絶えないまちづくりを一番の目標に掲げていきます。
その実現に向け、まずは移住・定住政策を推進していきます。本町は空き家バンク登録者数が県内トップクラスですので、引き続き積極的な情報発信と空き家バンク登録数を増やし、移住・定住につなげていきたいと思います。
移住・定住者数を増やすには子育て世代の方々への支援も欠かせないと思います。私が町長に就任してから小学校・中学校入学時に3万円、中学校卒業時に5万円を支給する子育て支援金支給事業を実施しています。単に移住・定住を推進するだけでなく、実際にそこに暮らす方が住みよい環境を整備していくことが人口減少対策につながると思うので、今後も町民の皆さまに住んでよかったと実感していただけるようなまちづくりを進めていきます。
会津美里町は今年10月、合併20周年を迎えます。この20年を振り返ると歴史、伝統、豊かな自然を基盤に、新たな観光資源の創出や産業の振興を図り、町民の皆さまが安心して暮らせるまちづくりに戦略的に取り組んできました。一方で、全国の自治体が直面する少子高齢化や人口減少は本町にとっても大きな課題となっています。
次の20年に向けて、より持続可能なまちづくりを目指していくためにも、本年を『未来への新たなスタート』と位置づけ、地域の魅力を引き出し、住む人、訪れる人、どちらからも『選ばれるまち』になれるよう全力を尽くす所存です」