原発被災地に3店舗目を出店したイオン東北の狙い

原発被災地に3店舗目を出店したイオン東北の狙い

 8月1日、双葉町のJR双葉駅東側にスーパーマーケットのイオン双葉店がオープンした。

 売り場面積約197平方㍍。弁当、総菜をはじめ、野菜や精肉、刺身、日用品、医薬品など計4500品目を扱う。弁当などの調理はイオン浪江店で行ったものが搬送される。

 店舗の入り口部分には大きな屋根が設けられ、イベントスペースとしても活用できる。駐車場12台。営業時間は8時から19時。年中無休。

 当日は記念式典が行われ、伊澤史朗町長が次のようにあいさつした。

 「町への帰還を検討するために必要な施設として、多くのご要望をいただいたのを踏まえ、双葉駅東地区の商業の中核として整備を進めてきた。現在、185人が町内に居住しており、生活環境の向上や居住人口の増加に寄与することを期待しています。双葉駅東地区では来年中ごろの開業を目指して飲食店が整備されており、商工会館も完成することで活性化し、まちの賑わいに弾みがつくと考えています」

 イオン東北(本社秋田市)の辻雅信社長、内堀雅雄知事、岩本久人町議会議長が祝辞を述べ、関係者がテープカットを行い、開店を祝った。町内へのスーパーマーケット開業は震災後初ということもあって、開店前から数十人が店舗前に列を作った。

 店の近くに住む年配男性は「3日に1回、南相馬市や楢葉町に買い物に行っていた。店舗は小さいが、気軽に買い物ができる場所ができてうれしい」と笑顔を見せた。このほか、双葉郡内の他町村から足を運んだという若い女性もいた。

 福島第一原発の立地自治体である双葉町は町域の85%がいまも帰還困難区域となっており、住民帰還は原発被災12市町村で最も遅い2022年8月に始まった。町は避難指示が解除されたJR双葉駅周辺や海側の中野地区に復興住宅や工業団地を整備し、復興・帰還促進に取り組んでいる。イオン双葉店オープンもそうした取り組みの一環で、町の「双葉駅東地区商業施設」に入居し、公設民営方式で運営される。

 原発被災地へのイオン出店は広野町、浪江町に次いで3店舗目となる。

 辻社長は双葉店出店についてこのようにコメントした。

 「双葉店には浪江店で製造したさまざまな商品を提供しています。原発被災地での明確な出店戦略があるわけではないが、現在休業中のイオン相馬店から小名浜のイオンモールいわき小名浜が1本のラインで結ばれることで、双葉郡内の店舗にさまざまな商品が提供できるようになるのではないかと考えています」

 帰還者185人では採算的に厳しそうだが、辻社長は「あえて復興支援という言葉は使わず、一緒に成長させていただきたいと思っています」と述べた。浪江町では福島国際研究教育機構(エフレイ)の整備をはじめさまざまな復興事業が進められており、その将来性を見越して出店して、ドミナントを形成していこうということなのだろう。

 スタッフは双葉郡内からパートやアルバイトなど6人を採用。イオン浪江店を拠点に運行している移動販売車は今後も継続する。

 双葉駅西側には復興住宅「駅西住宅」が整備されたが、近くに買い物する場所がないため、住民は車で買い物に出かけていた。刺身など生鮮食料品に関しては最低限の品ぞろえではあるものの、駅の東西自由通路を渡れば徒歩で買い物できるのは、生活環境の面で好影響だろう。

 2028年には町内に義務教育学校を開校する計画を立てている同町。イオン双葉店開店を起爆剤に帰還者を増やすことができるか。イオン東北の出店動向と合わせて今後が注目される。

開店直後のイオン双葉店
開店直後のイオン双葉店

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