迷走していた会津坂下町の新庁舎構想に正常化の兆しが見えている。町は新庁舎の建設場所を「現庁舎周辺」から「旧坂下厚生病院跡地」に変更するための議案を6月定例会に提出する方針だったが、住民懇談会で寄せられた意見を受け、議案提出を見送ったのだ(新庁舎構想が迷走する背景は先月号等、この間の本誌記事を参照していただきたい)。
先月号では現庁舎周辺での建設を支持する仲町・橋本地区の住民懇談会(5月17日、出席者45人)をリポートしたが、町はその後、23日に坂下(同61人)、24日に若宮(同13人)と八幡(同17人)、25日に金上(同16人)と高寺(同9人)、26日に広瀬(同17人)と川西(同22人)の7地区で住民懇談会を開いた。出席者は計200人に上った。
仲町・橋本地区の住民は商店主が多い。役場周辺で長年商売してきたため、他所(旧病院跡地)に移転新築されては困るという立場だ。
そもそも現庁舎周辺での建て替えは、住民代表などでつくる新庁舎建設検討委員会で議論し、町が議会に関連議案を提出、議決を経て正式決定された。そうした中で、一部住民から突然、見直しを求める請願が出され、旧病院跡地に変更されようとしたから、仲町・橋本地区の住民が猛反発するのは無理もなかった。
では、それ以外の地区の住民懇談会ではどんな声が上がったのか。
仲町・橋本地区と同様、中心市街地に位置する坂下地区では「現庁舎周辺と旧病院跡地のメリット・デメリットを比較してはどうか」「議会や新庁舎建設検討委員会できちんと議論してから必要な議案を提出すべきだ」といった冷静な意見が寄せられた。仲町・橋本地区のように現庁舎周辺を強く支持するというより、俯瞰した見方が多かった。
これに対し、その他の地区の住民懇談会では「旧病院跡地に賛成」「どんどん進めてほしい」と、仲町・橋本地区とは正反対の声が多数上がった。町周辺部の住民は現庁舎周辺での建て替えを支持していないことが明確になった格好だ。
その一方で「財政難を理由に新庁舎建設を一時休止したのに、財政状況がどこまで改善したのか分からない」「現庁舎周辺から旧病院跡地に変更するとしたら、どのような手続きが必要なのか」等々、住民懇談会に出席した人も、していない人も現状を理解していない住民が多いことも事実だった。これは裏を返せば、町が新庁舎構想の情報を住民に正しく提供していない証拠である。情報がなければ議論が深まらないのは言うまでもない。
にもかかわらず、古川庄平町長は関連議案を6月定例会に提出するとしていたから、仲町・橋本地区の住民だけでなく町周辺部の住民からも「説明不足」「議論が尽くされていない」との意見が上がったのだ。
8地区での住民懇談会が終了後、町庁舎整備課に話を聞くと「関連議案の提出時期を決めず、まずは住民への丁寧な説明と議論を重ねることに努めたい。そうすれば新庁舎のあるべき位置も自ずと見えてくると思います」とコメント。5月29日に開かれた議会全員協議会では、町から議員に対し「現議員の任期は来年3月なので、事情を分かっている議員に審議してもらうためにも、それまでには一定の方向性を示したい」と説明があったという。
古川町長は今年に入ってから「まちづくり元年」というフレーズを言い出したが、今後のまちづくりについて住民と議論したことはない。であれば、将来の会津坂下町をどうしていきたいのかを住民と一緒に考えていけば、町庁舎整備課が言う「新庁舎のあるべき位置も自ずと見えてくる」のではないか。
【会津坂下】新庁舎構想に正常化の兆し
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