被災地で再び暗躍するゼネコン元所長

被災地で再び暗躍するゼネコン元所長

 震災・原発事故の復興事業をめぐり、ゼネコン幹部が下請け業者から謝礼金をもらったり、過剰な接待を受けていたことが次々と判明し、マスコミで報じられたことを記憶している人は多いと思う。

 その後、復興事業の減少により問題は沈静化していったが、今、浜通りでは「ある元幹部の存在」が再び注目を集めている。

 元幹部を、ここでは「H氏」と紹介しよう。H氏は準大手ゼネコン・前田建設工業(東京都千代田区)に勤務し、震災・原発事故後は東北支店環境省関連工事統括所長として楢葉町と双葉町の除染や解体工事、中間貯蔵施設の本体工事などを取り仕切った。2015年12月には広野町のNPO法人が主催した復興関連イベントのパネルディスカッションにパネラーの一人として参加したこともある。

 復興を後押しする一員という立ち位置でイベントに参加したH氏だったが、その裏では様々な問題を引き起こしていた。以下は朝日新聞2021年6月30日付社会面に掲載された記事である。

 《(環境省が2012、13年に発注した楢葉町と双葉町の除染、解体工事などをめぐり)前田建設は17~18年に弁護士を入れた内部調査を実施。複数の業者や社員らを聴取した結果、同社関係者によると、当時の現場幹部らが業者から過剰な接待や現金提供を受けていたことが判明したという。

 前田建設の協力会社の内部資料によると、協力会社の当時の幹部が13年から5年間、仙台市や東京・銀座の高級クラブなどで前田建設の現場幹部らへの接待を重ね、うち1人については計30回で約80万円の費用を負担していた。

 さらに、複数の下請け業者の証言では、18年ごろまでにハワイ旅行や北海道・九州でのゴルフ旅行が企画され、複数の前田建設の現場幹部の旅費や滞在費を業者が負担していたという》

 これら接待の中心にいたのがH氏で、ゴルフコンペは「双明会」と銘打ち定期的に行われていたという。このほか女性関係のトラブルも指摘されていたH氏は、2016年に統括所長を降格され、17年に前田建設を退職した。

 しかし、その後もいわき市内のマンションを拠点に、統括所長時代に築いた人脈を駆使して不動産、人材派遣、土木、ロボット、旅館経営など複数の会社を設立。それらの事務所は現在も中心市街地の某ビル内にまとめて置かれている。法人登記簿を確認すると、H氏は1社を除いて全社で役員に名前を連ねていた。

 ある業者によると、H氏は前田建設を退職後も下請け業者に接近し、復興事業に食い込んでいたという。浜通りの一部業者は、そんなH氏を何かと〝重宝〟し、関係の維持に努めていた。

 ところが前記の新聞報道後、脱税などで警察の捜査が及ぶことを恐れたのか、H氏はいわき市内のマンションを離れ、都内に身を潜めた。それが、半年ほど前から再び市内で見かけるようになったとして、業者の間で話題になっているのだ。

某ビルの1、2、3、6、7階にH氏が関係する会社が事務所を構える

 前田建設は今年度、大熊町の特定復興再生拠点区域の除染と解体工事を48億2400万円で受注したが、その下請けに、H氏は自身とつながりがある九州の業者を使うよう同社の現場責任者に働きかけているという。その情報をキャッチした同社が現場責任者に確認すると、H氏との直接的な関係は否定したが「大熊町の事業者と食事をしていたら、同じ店で偶然H氏と会った」などと説明したという。

 前田建設がH氏の暗躍に強い警戒感を示していることが分かる。被災地を〝食い物〟にする輩を放置してはならない。関係各所はH氏の動向を厳しく監視すべきだ。

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