本誌1、3月号で、桑折町の福島蚕糸跡地から廃棄物が出土したことをリポートした。
桑折町の中心部に、福島蚕糸販売農協連合会の製糸工場(以下、福島蚕糸)跡地の町有地がある。面積は約6㌶。震災・原発事故後に災害公営住宅や公園が整備され、残りのスペース2・2㌶を活用すべく公募型プロポーザルを行った結果、㈱いちいと社会福祉法人松葉福祉会が最優秀者に選ばれた。
食品スーパーとアウトドア施設、民設民営による幼保連携型認定こども園が整備される予定で、定期借地権設定契約を締結、造成工事がスタートしていた。
そうした中で、いちいが工事を実施しているエリアからアスベストを含む1000㌧に上る廃棄物が出土したため、工事がストップすることになった。
町議会3月定例会では、①町は昨年6月ごろの段階で廃棄物の存在を把握していたのに議会に報告したのが今年1月17日だったこと、②処理費用は5300万円に上り、いちいと町が折半して負担することになったが、プロポーザルの実施要領や契約書には「土地について不足の事態があった際も事業者は町に損害賠償請求できない」と定められていること――などが問題視された。
結局6月定例会で町が処理費用を半額負担する補正予算案が可決されたが、一方で新たな問題も発覚した。
松葉福祉会の認定こども園の建設予定地からも、大量のコンクリートや鉄筋などの建築廃材が出てきたことが明かされたのだ。町産業振興課によると、4月半ばに同福祉会から連絡があり、全体でどれぐらいの量があるかは分かっていないという。
松葉福祉会にコメントを求めたところ、「廃棄物を撤去して土壌改良すれば、さらなる予算がかかるので、設計を一から見直さなければならないし、2024年4月開園は実質的に難しいだろう。今後、町と協議していくことになる」と話した。
認定こども園は当初2024(令和6)年4月開園予定だったが、土壌改良の期間も含め、開園は1年遅れの2025年4月になる見通し。来年度は従来の醸芳保育所と醸芳幼稚園が園児の受け皿となる。
6月15日の6月定例会一般質問では、高橋宣博町長が経緯を説明したうえで「重大で深刻な事態と受け止めている。開園を期待している町民に深くおわびする」と陳謝した(福島民友6月16日付)。
町産業振興課によると、いちいの工事で出てきた廃棄物は福島蚕糸の前に操業していた郡是製糸桑折工場のものとみられるが、今回出てきた廃棄物は福島蚕糸のものとみられる。要するに、過去に立地していた工場の廃棄物がそのまま放置されてきたことになる。いちいと松葉福祉会にとっては、思いがけず高額な処理費用を負担することになった格好。町は町有地として取得する際にこうした状況にあることをチェックできなかったのだろうか。
気になるのは、今回の処理費用も折半にするのかということ。本誌4月号記事で斎藤松夫町議は「いちいに同情して後からいくらか寄付するなどの方法を取るならまだしも、プロポーザルの実施要領や契約書の内容を最初から無視して折半にするのは問題。根拠のない支出であり、住民監査請求の対象になっても不思議ではない」と指摘した。そうした点も含め、町は事業の進め方をあらためて検証すべきではないか。