本誌1月号に「桑折・福島蚕糸跡地から廃棄物出土 処理費用は契約者のいちいが負担」という記事を掲載した。
桑折町の中心部に、福島蚕糸販売農協連合会の製糸工場(以下、福島蚕糸)跡地の町有地がある。面積は約6㌶で、その活用法をめぐり商業施設の進出がウワサされたが、震災・原発事故後に災害公営住宅や公園が整備された。残りの土地を活用すべく、町は公募型プロポーザルを実施。2021年5月、㈱いちいと社会福祉法人松葉福祉会が「最優秀者」に選ばれた。
食品スーパーとアウトドア施設、認定こども園が整備される計画で、定期借地権設定契約を締結、造成工事がスタートしていた。記事は、そんな同地から廃棄物が出土し、工事がストップしたことを報じたもの。福島蚕糸の前に操業していた群是製糸桑折工場のものである可能性が高いという。
その後、1月31日付の福島民友が詳細を報じ、〇深さ約30㌢に埋められていたこと、〇町は県やいちいと対応を協議し、アスベスト(石綿)を含む周辺の土ごと除去したこと、〇廃棄物は約1000㌧に上ること――が新たに分かった。
町議会3月定例会では斎藤松夫町議(12期)がこの件について町執行部を追及した。そこでのやり取りでこれまでの経緯が具体的になった。
最初に町が地中埋設物の存在を把握したのは昨年6月ごろで、詳細調査した結果、廃棄物であることが分かった。町がそのことを議会に報告したのは今年1月17日だった。。
そこで報告されたのは、処理費用が5300万円に上り、それを、いちいと町が折半して負担するという方針だった。
斎藤町議は「廃棄物に関しては、この間の定例会でも報告されず、『政経東北』の報道で初めて事実を知った。なぜここまで報告が遅れたのか」と執行部の対応を問題視した。
高橋宣博町長は「廃棄物が出た後にすぐ報告しても、結局その後の対応をどうするかという話になる。あらかじめ処理費用がどれだけかかるか確認し、業者と協議し、昨年暮れに話がまとまった。議会に説明する予定を立てていたところで『政経東北』の記事が出た。決して隠していたわけではない。方向性が定まらない中で説明するのは難しかった」と釈明。「今後、議会にはしっかりと説明していく」と述べた。
一方、プロポーザルの実施要領や契約書には、土地について不測の事態があった際も、事業者は町に損害賠償請求できない、と定められている。にもかかわらず、廃棄物処理費用を折半とする方針について、斎藤町議は「なぜ町が負担しなければならないのか。根拠なき支出ではないか」とただした。
これに対し高橋町長は「瑕疵がないとしていた土地から廃棄物が出ていたことに対しては、事業者(いちい)の考え方もある。信頼関係を構築し、落としどころを模索する中で合意に達した」と明かした。
斎藤町議は本誌取材に対し、「いちいに同情して後からいくらか寄付するなどの方法を取るならまだしも、プロポーザルの実施要領や契約書の内容を最初から無視して折半にするのは問題。根拠のない支出であり、住民監査請求の対象になっても不思議ではない」と指摘した。
福島蚕糸跡地の開発計画に関しては、公募型プロポーザルの決定過程、町の子ども子育て支援計画に反する民間の認定こども園整備について疑問の声が燻り続けている。斎藤町議は追及を続ける考えを示しており、今後の動向に注目が集まる。