佐藤憲保県議「引退撤回」の余波

contents section

佐藤憲保県議「引退撤回」の余波

 今期限りで引退するとみられていた自民党の佐藤憲保県議(69、7期、郡山市選挙区)が態度を一転させ、11月2日告示、同12日投開票の県議選に立候補する公算が高くなった。

 自民党県連は3月、一次公認者30人を決定したが、佐藤氏と二本松市選挙区の遊佐久男氏(64、3期)は公認申請していなかった。

 その後、遊佐氏が6月5日に引退表明したため(詳細は28頁の記事参照)、佐藤氏がいつ進退を明らかにするのか注目が集まっていた。

 「佐藤氏は昨年から、事あるごとに『もう辞めっからな』と口にしていた。周囲の説得にも耳を貸さず、引退の意思は固そうだった」(長年の支持者)

 支持者たちの声を総合すると、背景には家族の存在があった。続投に向け説得を試みてきた支持者や自民党国会議員・県議も、家族を理由にされては引き下がるしかないと、今年春ごろには説得を断念していた。

 「佐藤氏は根本匠氏の選対本部長を務めている。区割り変更に伴う新2区で立憲民主党の玄葉光一郎氏と戦う根本氏は『今、佐藤氏に辞められては困る』と反対したものの、最後は了承した」(マスコミ関係者)

 ところが、大型連休辺りから状況が一変。県議の中から「もしかすると立候補するかもしれない」という話が漏れ伝わり出した。

 このころから佐藤氏も「内堀知事から続けてほしいと言われた」「根本氏に後継者を探すよう頼んだが見つからない」などと言い出し、決まり文句だった「もう辞めっからな」も聞かれなくなっていたという。

 ある自民党県議の話。

 「辞める人を引き止めるのは社交辞令みたいなもの。内堀知事が言ったとされる『続けてほしい』もどの程度本気だったのか。根本氏に後継者探しを頼むのも違和感がある。後継者は他人に探させるのではなく、自分で探すべき。それを『根本氏が見つけてこないからオレが出るしかない』というのはおかしい」

 最終的には6月中旬、県選出国会議員や県議が、あらためて県議選への立候補を佐藤氏に直談判。これを受け、佐藤氏は「そこまで言うなら前向きに考える」と応じ、今期での引退は撤回されたという。

 問題は、早くから引退をほのめかしていたことで、支持者の気持ちが冷めていることだ。議員から辞めると言われれば、熱心な支持者ほど落胆するもの。引退撤回が早ければ支持者が立ち直るのも早いが、ずっと辞めると言っていたのに「やっぱり出る」となったら、喜びよりシラける気持ちの方が先に立つだろう。

 要するに、気持ちが冷めてしまった支持者を呼び戻せるかどうかが、8選を目指す佐藤氏にとって重要なカギになるわけ。

 それでなくても佐藤氏は郡山市選挙区で、2011年1万1629票(定数9―12人、2位当選)、15年1万0902票(定数9―11人、5位当選)、19年8666票(定数10―13人、5位当選)と票を減らし続けている。支持者の高齢化で票を伸ばすのが難しいことは承知しているが、気持ちが冷めた支持者の動向によっては、さらに得票数が落ち込むことも予想される。

 実は、佐藤氏は2026年の知事選を見据えた時、重要な存在になるとみられている。選挙通の間では、内堀知事が今期で引退し、玄葉氏が立候補すると目されているが、そうなると自民党県連は立憲民主党の玄葉氏を推せないので、対抗馬を擁立しなければならない。しかし、玄葉氏が相手では勝ち目が薄いので「玄葉知事」のもとで県政野党に転落することを考えると、自民党県議団の中に〝重し〟が必要になるのだ。

 つまり、その役目を果たせるのは重鎮の佐藤氏しかいないと言われていたのに、今回の出来事で求心力を自ら低下させたことは否めない。佐藤氏にとっては再選された場合、党県連内でどのように存在感を発揮するかも課題になる。

related post

関連記事