【伊達市】須田博行市長インタビュー【2025.3】

【伊達市】須田博行市長インタビュー【2025.3】

経歴

すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁後、県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。

 ――2期目の市長選時に掲げた公約の進捗状況について。

 「まず、『安心安全の確保』については、令和元年東日本台風や令和3年、同4年に発生した福島県沖地震など本市は大きな被害に見舞われた中、この間、大規模災害への対応や危機管理対策を進めてきました。昨年は福島県の総合防災訓練を本市で初めて実施し、県内各地から消防本部や警察・自衛隊等の防災関係機関が集まり、排水ポンプ車の排水訓練をはじめ、県防災ヘリでの救助訓練、救護者のトリアージ訓練、阿武隈急行線を使った乗客救出訓練等を実施しました。実際に参加された方々はもちろん、見学された市民にとっても防災意識向上につながったと考えます。

 現在、国交省では矢吹町、鏡石町、玉川村で阿武隈川上流遊水地群整備を展開しています。同事業は、上流に位置する3町村で、洪水時に川の水を一時的に遊水地に溜めることで阿武隈川の水位を下げ、流域の水災害を軽減する狙いがあります。整備予定地には広大で優良な農地があり、また多数の住居が移転を余儀なくされるなど、そうした方々のご協力があって初めて下流域に位置する住民の安心・安全が確保されると痛感しています。本市では、感謝の意味を込め、道の駅・伊達の郷りょうぜんで3町村の物産販売を行ったり、遊水地がいかに下流域の防災に寄与するかについて、広報紙や出前講座を通して市民への理解を深める取り組みを行っています。

 次いで、『雇用の場の確保』については、若年層が本市に定着するには働く場をしっかり確保することが必要です。この間、伊達市保原新工業団地を造成し、進出企業6社の誘致を実現しました。また、堂ノ内地区で開発が進められている大型商業施設の名称については『イオンモール伊達』と正式に決定しました。同モールにはさまざまな業種が出店する予定なので、若者が働きたいと思う職種や多様な働き方に対応した雇用機会が提供されるとともに、約3000人の雇用創出が見込まれるなど大きな期待を寄せています。一方、基幹産業に位置づけられる農業も重要な雇用の受け皿です。現在、本市の農業従事者の70%が65歳以上を占めており、5年、10年後にはさらに厳しい状況になるのは必至です。今後、農業生産を伸ばすには、担い手の確保が急務で、若い人が農業に参入しやすいような仕組みづくりに取り組む必要があります。その一環として、本市で進めようとしているのは、新しい農業の形態であるスマート農業の普及です。例えばイチゴやキュウリのハウス栽培の場合、ハウス内に温度・湿度などを感知するセンサーを設置し、測定した数値に基づきAIが判断し、水をやったり、生育に適した条件に自動で制御することができるため、時間と労力の大幅な削減が図られます。若い生産者の価値観に合わせた農業生産体制の構築に取り組む考えです。

 『子育て・教育の充実』については、子育て支援が若者定住の必要条件との認識のもと、子どもたちを安心して預けられ、子どもたち自身も安全に過ごせる居場所が重要と考え、本市では3つの認定こども園の整備を進めてきました。この間、『伊達・ひかり認定こども園』、『保原認定こども園』が昨年4月に開園、今年4月には阿武隈急行線高子駅北地区の住宅団地内で『福島文化高子こども園』が開園の運びとなります。そのほか、昨年4月には『かみほばら放課後児童クラブ館』を開館させるなど、子どもたちが放課後に安心して過ごせる場を整備するとともに、放課後児童クラブを市が直接運営することで、利用料を安価に設定して子育て世代の経済負担の軽減を図っています。また、すべての妊婦、18歳までの子どもとその家族を対象に、子どもが心身ともに健やかに育つことができるよう、保健・福祉・教育が一体となって切れ目のない支援を行う『伊達市版ネウボラ事業』を展開しています。今後もネウボラ保健師を中心とした、妊娠期から切れ目のない質の高い子育て支援にさらに磨きをかけていきます。

 『歴史文化を活かしたまちづくり』については、史跡伊達氏梁川遺跡群の整備事業に取り組んでいます。梁川小学校跡地は、歴史公園として整備を進め、今年3月末で閉校する県立伊達高校梁川校舎の跡地にはガイダンス施設を整備したいと考えています。多くの人々が、中世伊達氏を中心とした本市の特色ある歴史に触れ、親しむ場としての整備を図るため、一つひとつ丁寧に対応・調整しながら着実に進めていく考えです。

 『健幸・福祉のまちづくり』については、市民の健康寿命の延伸を目的に2011年の健幸都市宣言を踏まえ、歩くことを基本とした健康づくりを進めています。昨年度からは本市の健康づくりイベントとして市内の各地区で『だてな健幸ウォーク』を開催しています。昨年11月には、健幸都市のモデル地区として整備された掛田地区で、子どもからお年寄りまでの参加者が地域の自然や街並みを感じながらウォーキングを楽しみました。今後も健幸都市への取り組みを通じ、健康と笑顔あふれるまちとなるよう、関係機関・団体と連携して活動を推進していきます。

 本市の地域医療については、医師の確保が課題となる中、医業を継承してもらえる医師への支援をはじめ、産科や小児科を開業してもらえる医療機関についてはさらなる支援を行うなど、医師不足の解消に向け鋭意取り組んでいます。新型コロナワクチンについては、5類移行後も引き続き65歳以上をはじめ、60歳以上65歳未満で心臓や呼吸器などに疾患のある方を対象に定期予防接種を実施しています」

ステップアップの時期

 ――「イオンモール伊達」への期待について。

 「本市では来年の開業に向け、交通アクセスの整備についてバス事業者とバス路線の見直しに向けた協議を進めていくとともに、デマンド交通の活用など公共交通の充実や利便性の向上を図るため検討作業に着手しています。また、同モールを訪れた利用者がショッピングに留まらず、本市及び県北地域を回遊し楽しんでもらえるような施策についても近隣自治体と連携を図りながら展開していくことが重要と考えます」

 ――その他の重点事業について。

 「本市は、安心安全なまちづくりを基本としながら、未来への基盤づくりに向けたさらなるステップアップをしていく時期に来ていると思っています。若者支援、子育て支援、健幸支援を柱とした事業に注力しながら、市民が誇りを持って暮らせるまちづくりを目指します。また、『シビックプライド(地域への誇りと愛着)』の醸成に力を入れ、市民一人ひとりが本市の魅力を再発見し、発信していけるような環境整備を進めていく考えです」

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