酒を飲んで運転した。それだけで人を傷つける可能性は大で、危険な運転だ。にもかかわらず、犯人の男(35)は信号無視を重ねて女子学生2人を死傷させた理由を「飲酒や眠気の影響で注意力が散漫になっていた」と主張した。今年1月22日の早朝、福島県郡山市で酒を飲んで運転し、市内の大学を受験するために大阪府から訪れていた19歳の女性をはねて死亡させたなどとして、危険運転致死傷罪などに問われた男に福島地裁郡山支部は9月17日、懲役12年(求刑懲役16年)の判決を言い渡した。
「動画配信のためUSBメモリを買いに行った」
検察側、弁護側双方が控訴せず判決は確定した。遺族は納得していない。刑が軽いとして検察に控訴するよう申し入れていた。当たり前だ。一般の感覚からすると、飲酒運転した時点で死傷事故を起こす可能性は十分あり、危険な運転。ところが、男は逆に飲酒運転を重罪である危険運転致死傷罪を回避するために利用していた。一般市民が加わる裁判員裁判で審理は行われ、裁判所は危険運転を適用。男の目論見は外れた。
地元住民からなる裁判員は全国転勤の裁判官よりも運転の機会が多いので車に詳しく、土地勘があり、郡山の道路状況に詳しい。男が運転していた車の構造と深夜にUSBメモリ欲しさに飲酒運転した理由にツッコミが入った。
「あなたの軽乗用車じゃアクセルを踏み込まないと時速70㌔は出ないよね」
「USBメモリなら運転しないでも近くのコンビニで買えるでしょ」
男はどのような人物なのか。過去に飲酒運転歴はあったのか。なぜ、USBメモリがそんなに欲しかったのか。テレビ、新聞が報じられなかった法廷のやり取りをリポートする。