福島県内に5つある防衛装備品製造工場

福島県内に5つある防衛装備品製造工場

 防衛省は防衛力の抜本的強化に取り組んでおり、防衛関係予算はここ3年、右肩上がりで増え続けている。それに伴い防衛産業も盛り上がっているが、県内には関連企業はあるのか、調べてみた。

 復興産業と軍事研究の接点を懸念する声

ウクライナ戦争、ガザ紛争など世界で紛争が起きているのを受けて、政府は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」という認識のもと、防衛力強化に取り組んでいる。2023年度から5年間、約43兆円を投じる方針で、2025年度の防衛費は過去最大の約8兆7000億円に達した(グラフ参照)。2027年には防衛費と関連費用の合計で、GⅮPの2%まで引き上げる予算措置を講じる見通しだ。

 防衛力整備計画によると、▽衛星コンステレーション(人工衛星群)を構築して敵艦艇などの射程圏外からの攻撃を可能とする「スタンド・オフ防衛能力」の強化、▽無人航空機をはじめとした無人アセット(装備品)の導入など、7つの重点分野を推進。防衛施設の強靱化や防衛生産・技術基盤の強化も進める。加えて自衛官の処遇改善や生活勤務環境の改善にも予算を充てる。

 多額の国費が投じられることから、防衛装備品などを扱う防衛産業の動きが急速に活発化しており、防衛装備庁が毎年開催している防衛産業参入促進展は大きなにぎわいを見せているという。さらに、三菱重工や川崎重工業、IHIといった防衛関連企業が業績を伸ばしており、株価も大幅に上昇している。

 「防衛バブル」ともいえる状況になっているわけだが、県内企業に影響はあるのだろうか。

 防衛省と防衛装備庁に問い合わせたところ、「防衛装備品を納入しているのは比較的規模が大きい企業が大半で、福島県に本社のある企業は確認できない」(防衛装備庁担当者)との回答だった。

 それならばと、県内で稼働している大規模企業の工場が防衛装備品製造に携わっているケースについて確認したところ、今年2月時点で5例確認できた(いずれも直近契約年度は2023年度)。

 〇日本工機㈱白河製造所(西郷村)
 製造品:陸上自衛隊が使用する「20㍉JM55A2普通弾」など

 〇三菱電機㈱鎌倉製作所郡山工場(郡山市)
 製造品:海上自衛隊の艦船に搭載する「情報処理装置OYQ―9G―4」など

 〇㈱IHI相馬工場(相馬市)
 製造品:「P―1用エンジン(F7―10・搭載用)」、「LM2500型ガスタービン主機機側操縦装置」など

 〇東北ミドリ安全工業㈱(石川町、親会社のミドリ安全㈱と契約)
 製造品:隊員の被服として使用する「半長靴3型」など

 〇藤倉航装㈱船引工場(田村市)
 製造品:「13式空挺傘」、「F―15用緊急射出装置用部品」など

 工場の規模や地元採用数、地元業者からの部品調達の有無、今後の設備投資の有無などを確認すべく、各社に取材を申し込んだが、いずれも返事がなかった。防衛装備品という性質上、取材で詳細を話すことはできないと判断したのかもしれない。

 これらの工場のうち、三菱電機㈱鎌倉製作所郡山工場は、防衛力強化に合わせた生産体制の増強として、建屋4棟(建築面積約9300平方㍍)を新設する。同社は鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)、電子通信システム製作所(兵庫県尼崎市)、郡山工場に総額220億円を投資し、レーダーシステムなど防衛装備品の開発・生産体制を強化する方針だ。

 このほか、県内での防衛産業の動きとしては、毎年県が「航空宇宙フェスタふくしま」を開催し、40~50社が出展している。航空宇宙産業と防衛産業は一見無縁に見えるが、技術面での共通性は大きい。多くの出展企業が取得している品質マネジメント規格「JISQ9100」は航空宇宙・防衛産業に特化した国際規格。同イベントのパンフレットには防衛関連の製品・部品の製造に携わる企業が多く掲載されている。前出の5工場だけでなく、地元の中小企業も防衛産業にかかわっているということが分かる。

 県内には陸上自衛隊福島駐屯地、同郡山駐屯地、航空自衛隊大滝根山分屯基地、水原演習場、白河布引山演習場などの関連施設がある。陸上自衛隊福島駐屯地には約1200人の隊員が所属しており、駐屯地周辺に自衛隊員用の集合住宅や商業施設が整備されている。

 要するに、本県も防衛産業や自衛隊との結びつきがあり、さまざまな民間企業が関わっていることを考えると、防衛力強化の動きも全く無関係ではないということだ。防衛力強化の波にうまく乗って、仕事を受注したいと考えている企業も少なくないのではないか。

防衛省が研究者を助成

 一方で、本県と防衛産業の関連性で言えば、浜通りで進められる「福島イノベーション・コースト構想」について、軍事研究につながるリスクがある、との指摘もある。

 原発被災者の取材・支援を続けるフリーライターの吉田千亜さんは、経済安全保障推進法、国際卓越研究大学法、福島復興再生特別措置法の法文や関連資料を読み進めるうちに、用いられる用語の共通性に気付いた。そこから浜通りへの新産業集積を目指す福島イノベーション・コースト構想や、その一環として整備される福島国際研究教育機構(エフレイ)、福島ロボットテストフィールドが軍事研究に活用されるのではないか、との懸念を抱くようになったという。

 「学術界には『大学での軍事研究は避けるべきだ』という主張があるが、経済発展や国家安全保障の観点から軍事研究が必要だとする主張もある。加えて研究者が研究費獲得に苦戦する中、防衛省が軍事技術にも将来的に応用可能な基礎研究を支援する制度が設けられ、多くの大学が助成を受けています。エフレイは多くの研究者を募る見通しで、そのほとんどは社会に資する研究だと思いますが、デュアルユース(軍民両用)として防衛分野に活用される技術が出てくるのではないかと懸念しています」(吉田さん)

 吉田さんが印象的な事例として挙げるのが、震災遺構・浪江町立請戸小学校敷地内に整備された自律型ドローンの格納庫だ。災害対策として、町と企業が地域復興実用化開発等促進事業費補助金を用いて、実用化に向けた開発を進めている。

 ところが、こうした災害用ドローンが福島ロボットテストフィールドで実証実験した際の資料を情報公開請求で入手したところ、「デュアルユース」と明記されていたという。

 世界の紛争地ではドローンの軍事利用が拡大しており、ウクライナ戦争では戦果が大々的に報じられた。自衛隊は災害派遣にも対応しているので、ドローンやパワードスーツが開発される際は基本的に「災害用」と表記されるが、状況次第では軍事用途に一気に転用されても不思議ではない――と吉田さんは危惧する。

 国策として推進されてきた原発の廃炉が進められる一方で、新たな国策である福島イノベーション・コースト構想が進められる浜通り。本県の未来を考えるうえで、防衛産業や軍事開発との接点に関しては注視していく必要がある。

2025年度の防衛費は過去最大(写真はイメージ)
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