郡山市田村町の国道49号沿いに「谷田川地区最終処分場施設絶対反対!!」という看板が立てられている。谷田川行政区と「やたがわ環境を守る会」が設置したものだ。
「最終処分場施設」とは、同地区で計画されている産業廃棄物の最終処分場のことを指す。現在複数個所で整備計画が進められており、地元住民が猛烈な反対運動を展開しているのだ。
前出「守る会」の石井武四郎代表は反対理由をこのように語る。
「国道49号に沿って流れる谷田川の水は広範囲で農業用水として使われています。最終処分場は山の一角を切り崩して設置される計画ですが、仮に汚水が川に流れることがあれば深刻な影響を及ぼします。この辺は多くの世帯が井戸水を使っているので、地下水への影響も心配です。地区内にそうした施設ができることで過疎化が進む可能性もあります」
処分場建設を計画しているのはミダックホールディングス(静岡県浜松市、加藤恵子社長)。1952(昭和27)年創業。資本金9000万円。民間信用調査機関によると、2023年3月期は売上高17億3600万円、当期純利益7億8000万円。
9月には整備計画について、地元説明会が田村公民館で開催された。
計画によると、建設される最終処分場は管理型(分解腐敗して汚水が生じる廃棄物などを埋め立てる処分場)で、埋め立て面積約7㌶、埋め立て容量約160万立方㍍。
だが、自然環境や農業への影響を懸念する住民と、安全性を強調する事業者側の溝は埋まらず、公民館の貸出時間が過ぎたということで、住民の理解を得ないまま終了した。
「10月にも説明会が開かれましたが、事業者から『13年間産業廃棄物を埋め立てた後、15年間にわたって管理し、その後は管理を終了する予定』と言われました。予定地のすぐ近くは市ハザードマップで土砂災害特別警戒区域に指定されており、不安は尽きません」(石井代表)
この計画地の上流(平田村・いわき市側)に当たる田村町糠塚でも管理型の最終処分場の建設が進められている。本誌2019年8月号では同処分場の工事が停滞している旨を取り上げたが、「現在は工事が開始されており、国道をダンプが何台も行き来している。1カ所できるだけでも環境の変化を感じているのに、さらに何カ所も建設され、稼働したらどうなるのか」(同)。
「なぜ、この地域ばかり迷惑施設を受け入れなければならないのか」という負担感も反対運動の大きな理由になっているようだ。
郡山市議会9月定例会の一般質問で、岡田哲夫市議(2期)が市の関わりを尋ねたところ、環境部長が「廃掃法に違反していないことを確認し、6月16日付で事業計画書の審査を完了した」と答弁した。現時点で市から設置許可は出されていない。
「住民の強力な反対があれば建設強行はできないのではないか」との問いには、環境部長が「周辺住民の同意は廃掃法上、許可要件とされていない。環境省からも『要件を満たす場合は必ず許可しなければならない』と通知が出ている」と答えた。一方で、「事業者(ミダックホールディングス)には口頭と文書で住民の理解を得るよう求め、地元自治会・区長会から出た意見は文書で伝えている」とも述べた。
田村町地区の住民がほとんど反対している中で、今後、品川萬里市長がどう対応するか問われる、とみる向きもある。新たな事実が分かり次第、リポートしていきたい。