福島市は、病気休暇中にゴルフ大会に出場したとして、20代女性職員を昨年11月28日付で戒告の懲戒処分にしたことを発表した。この裏に潜む2つの問題点に迫る。
「高ストレス者多数」の象徴的事案
市によると、この問題はゴルフ大会の成績が新聞に掲載され、ほかの職員がそれを見つけたことがきっかけで発覚したという。逆に言うと、同僚職員がそれを見つけなければ、発覚・処分には至らなかったことになる。
《市によると、職員は7月下旬から10月下旬まで病気休暇を取っており、病気休暇中だった8月、県内で開かれたゴルフ大会に友人と共に出場した。職員は市の聞き取りに事実を認め、反省しているという。現在は元の職場に復帰している》(福島民友昨年11月29日付紙面より)
戒告は懲戒処分の中で最も軽いもので「厳重注意」と思ってもらえればいい。なお、その上の処分が一定期間・一定金額の減給、さらに上が一定期間の停職、最も重い処分が免職(クビ)となる。市の懲罰規定では、例えば酒気帯び運転や刑事事件を起こした場合などは、その程度によってどの懲戒処分に該当するかが定められているが、今回は懲罰規定では想定していないような稀有なケースと言える。
「確かに、今回のような事例には明確な規定はありません。ただ、信用失墜行為に当たるという判断から、今回の処分に至りました」(市人事課)
同市議会昨年12月定例会冒頭では、木幡浩市長がこの問題に言及する一幕があった。
「本年(2024年)8月、病気休暇中の職員が療養専念義務があるにも関わらず、友人とともに遠方に外出しゴルフ大会に参加していたことが判明しました。市職員にあるまじき行為であり、事態を重く受け止め、この職員を戒告の懲戒処分といたしました。市政に対する信頼を失墜させる事態となりましたことを深くお詫び申し上げます。再びこのような事態を起こすことのないよう、引き続き職員に対し、公務員としての倫理と綱紀粛正を徹底するとともに、市職員として常に見られている立場であることを自覚し、責任をもった行動をとるよう促し、市民の信頼回復に努めていきます」
ここで指摘しておかなければならないことが2つある。
手厚い公務員病休制度
1つは、公務員の待遇が恵まれているということ。公務員は最大90日間の病気休暇を取得することが可能で、その間の給与は全額支給される。一方で、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、病気休暇を導入している民間企業は21・9%にとどまっている。ただし、病気休暇制度がある企業でも、その間の給与が支給されるとは限らない。これは企業側の判断に委ねられる。その詳細は前述の厚労省調査では明らかにされていないが、公務員と同程度の病気休暇制度がある企業は21・9%よりもさらに少ないのは間違いない。
そもそも、病気休暇制度があったとしても、「会社や部署の仲間に申し訳ない」といった理由から、なかなかフル活用できないというケースも少なくないと思われる。そういった点からしても、公務員は民間企業と比べ、手厚い病気休暇制度になっていると言える。
それを悪用した形になるわけだから批判は免れない。ちなみに、インターネット検索で「福島市職員」と入力すると、セカンドワードトップに「ゴルフ」と出てくる(昨年12月上旬時点)。それだけ、この問題が世間の注目を集めているということだ。
もう1つは、本誌昨年11月号「木幡・福島市長の暴君化を恐れる職員」という記事との関連性。同記事は、市職員から木幡市長の暴君ぶりを指摘する声が寄せられたことがきっかけだった。
関連取材では暴言のようなパワハラの事実は掴めなかったが、市職員には高ストレス者の割合が高いことが分かった。
総務省の統計から職員1000人以上の自治体のストレスチェック結果を見たところ、同市はチェックを受けた1657人中、高ストレス者は309人(18・6%)だった。職員に占める高ストレス者の割合は、同規模自治体では8番目に多く、東北地方では最多だった。同様に心身に故障を生じ、分限処分を受けた職員の割合を中核市62市で比べたところ、同市は21番目に多かった。
その要因が木幡市長にあるとは断定できなかったが、記事では「もっと上手に職員を使う術を学ぶべき」と指摘した。
今回のケースを見る限り、病気休暇していた職員は、入院をしていたり、安静にしていなければならない病気ではなかったことになる。むしろ、体力が有り余っていたから、ゴルフ大会に出場したと考えることができる。そうなると、やはり精神的な部分が原因ということになり、そういった職員が少なくないことを思わされる。