わたなべ・けんいち 1965年、南会津町生まれ。東京農業大学農学部を卒業後、開当男山酒造醸造元。福島県酒造組合副会長を経て、2022年5月より現職。
――2024酒造年度の全国新酒鑑評会で福島県は16銘柄で金賞を獲得し、都道府県別で兵庫県と並び3年ぶりの日本一奪還となりました。
「素直に嬉しいの一言に尽きます。16もの蔵元が金賞を受賞したということは、それぞれの蔵がこの冬、酒造りに真摯に向き合い、その努力が実を結んだ証だと思います。組合員一同、今後も切磋琢磨し、来年度も一つでも多くの蔵が金賞を獲得できるよう精進していきます。16蔵の金賞受賞は、福島県産日本酒の品質の高さと美味しさを明確に証明するものです。大いにアピールし、福島の酒の魅力を幅広く伝えていきたいです」
――昨年度の県内出荷状況について。
「出荷状況はコロナ禍前の約90%台で推移しており、以前の水準には回復していません。コロナ禍の3、4年で生活様式や消費行動が大きく変化し、お酒を楽しむ場が減少したことが大きな要因と感じます。今後は、消費動向や価値観の変化を注視しながら、福島県産日本酒をより多くの方々に手に取っていただけるように新たな戦略を構築していく必要があります。
米価の高騰も大きな影響を与えています。2024年度産の酒米は平均で60キロあたり約2500円も上昇しました。さらに、25年度産米は倍近い価格になると予想しており、非常に厳しい状況です。主食米の価格が酒米の価格に反映されるため、高騰している現状では、酒米の価格もかなりの高値になるでしょう。酒米の作付けも計画通りに進むか懸念があり、酒米量の確保と価格の高騰、この二つが秋に向けての懸念材料です」
――2025年度の事業展開について。
「6月14、15日には大阪で開かれた『國酒フェア2025』に参加し、福島県の酒を大々的にPRしました。毎年恒例となっている東京・新橋での『ふくしまの酒まつり』は、今年も10月9、10日の2日間で開催を予定しており、多くのお客様に楽しんでいただきたいと思います。お客様が嬉しそうにお酒を楽しまれている姿を見ると、私たちも深い感動を覚えます。
12月4日には福島市で『ふくしま美酒めぐり~師走の宴~』が開催されます。技術面では、例年通り『福島県清酒アカデミー』の運営を継続し、現在33期生が熱心に学んでいます。若い蔵人たちが一生懸命勉強する姿は、金賞受賞へとつながる技術力の土台になると信じていますので、大いに学んでほしいです。
高品質清酒研究会では、出来上がった酒の評価や細かな打ち合わせを重ね、鑑評会に向けて取り組んでいきます。最も重要なのが『酒米の共同買い付け事業』です。主食米の流通量が安定しない中、酒米への影響を踏まえてどのように進めていくか見極めが必要です。難しい事業展開になるかもしれません。お米、技術、イベント。この三本柱で事業を推進していきたいと考えています」
























