【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

 そうだ・まさゆき 1951生まれ。日本大学工学部卒。2007年に鮫川村議会議員になり、2015年4月から2023年3月まで副議長、同年4月から8月まで議長を務めた。8月27日投票の村長選で初当選を果たす。

 ――8月に行われた村長選で初当選を果たしました。

 「村の課題は山積しています。全国的に人口減少が叫ばれていますが、特に当村の場合は多くの若者が村外に流出している状況にあります。人口減少によって農業の後継者不足や中心地域の空洞化も進んでいる状態です。これらに対する対応・対策を考えた際に的確な判断の難しさや責任の重さを十分感じています。だからこそ、村民目線で住民の気持ちを優先的に考えて対応策を検討していきたいと思っています」

 ――選挙では給食費無償化等の子育て支援策を打ち出していました。

 「給食費無償化は、国が今年3月に少子化対策として実態調査を行うことを打ち出しましたが、本村は令和元年度から2分の1の支援を行ってきました。さらなる子育て世代の財政支援の拡充を図るため、まず給食費の無償化を進めていきたいと思っています。また、今は核家族や共働きが進み、放課後児童クラブに預ける家庭が多いのが実情で、クラブの改善は重要だと思っています。現在は預ける際は有料となっていますが、これも無料化にすることで子育て支援の拡充を図っていきたいと思います。本村は近隣町村と比較しても利便性が低い現状にあります。給食費に限らず、例えば通学の際の交通費補助等の再検討を含めて教育費に係る財政的な支援は重要だと思います。今は村外に通学する高校生に対して、1万円の交通費の補助を行っていますが、燃料費等の高騰が進んでおり、子育て世代では困窮している家庭も多いのが実情だと思います。それに対しても、もう少し何らかの支援を検討していきたいと考えています。

 また、学力を上げることで将来の職業の選択肢も広がるなど、学力向上は将来の村の未来像を見据える上でも重要です。秋田県は学力向上に力を入れており、特に東成瀬村は『学力日本一の村』として全国に先駆けて学校教育に力を入れてきました。東成瀬村は当村より規模も小さく、学力支援は自治体の規模に関係ないことが証明されており、本村でも力を入れて進めていきたいと思います。本村には学習塾がなく時間をかけて村外の学習塾に通う児童・生徒も少なくありません。そこで小・中学生、とりわけ中学生向けの学習支援も進めていきたいと思います。教員の指導能力向上はもちろん、専門の教員を呼び、村で学習支援を行うことで学習塾に通う必要がなくなると思います。学習塾と提携している自治体もあり、そういった政策をどんどん取り入れていきたいと思っています。
 こうした支援を進めることによって教育に関心のある若者が村内に留まったり、他町村からもそういった政策に惹かれて移住する子育て世代の需要もあると考えています」

日本一の村づくりを目指す

 ――産業振興も重要です。

 「新たな企業誘致は難しいのが現状です。そこで私は村の宝物だと思っている自然景観を産業振興につなげていきたいと思います。例えば、村内にある湯ノ田温泉は以前は東京都の上野駅に看板が掲げられるなど全国的に有名な温泉です。温泉だけでなく近隣にある強滝は岩と水の造形美も素晴らしく、川沿いの遊歩道は『ふくしま遊歩道50選』にも選ばれています。特に紅葉シーズンは毎年多くの観光客とカメラマンが訪れます。こういった景勝地をさらに増やしPRしていきたい。どんな遠いところでも美味しいものと、自然景観の豊かなところがあれば人は集まります。そういった政策を行うことで交流人口拡充を図りたい。それが村の活性化につながると思います。

 村では以前から『まめで達者な村づくり』を進めてきました。これは60歳以上の高齢者などに大豆等の栽培をお願いすることで特産品開発を行うものです。高齢者が一生懸命に汗を流してつくった農産物が循環すれば、生産者である高齢者の健康づくりにつながりますから、あらためて仕掛けづくりを進めていきたいと思っています。商品も納豆や豆腐だけでなく、新たな開発を進めていきたいと思います。村内だけでなく東京農業大学といった外部の意見も頂戴しながら検討していきたいと思っています」

 ――手まめ館は今後どういった施設にしていきたいでしょうか。

 「私自身、村長就任前は村議を務めながらガソリンスタンドや整備工場を経営してきました。そういった意味で商売の経験は少しあると思っています。もっとも、私自身は工学部の土木学科を卒業しましたので、全く違う業界に入りました。勉強のため最初に行った研修は仙台駅の多くの人が通る一画で『おはようございます』『こんにちは』『ありがとうございます』といった挨拶を繰り返し行いました。最初は嫌でしたが、そういった経験を通して自分自身の自信につながりました。

 それを踏まえ、まずは人づくりを進めていきたい。他企業に依頼するなどして人材指導のスペシャリストを招き、勉強会などを通したスキルアップも進めていきたいと思います。今年行われたWBCで監督を務めた栗山英樹さんの著書『育てる力』を読むと、資本主義の父と言われる渋沢栄一さんの講演をまとめた『論語と算盤』を参考に人づくりを進めたそうです。『論語』は道徳であり『算盤』は商売を指しています。渋沢栄一は論語と算盤を通じて道義を伴った商売の追求を説いています。どのような商売であっても結局は『人』が重要です。そういった意味でひとづくりの重要性をあらためて実感しました。人が良くなれば自然と同じ方向を向くと思います。皆『良くしたい』という思いは同じだと思いますから、それぞれの思いをしっかり受け止めていくことが重要だと思っています。そういう意識が全体として高まれば自然とすべてが向上していくと考えています」

 ――議長や村議の経験をどう生かしていきますか。

 「商売をしていた経験上、自分として大事にしてきたことは村民とのキャッチボールです。村民の声を聞いて『できないことはできない』『できることはできる』という即対応を心がけてきました。また、村民目線で村民の気持ちに立って行動することは議員でも行政の長でも同じです。今後もそういった気持ちを忘れずに行政運営に当たっていきたいと思います」

 ――今後の抱負。

 「『大義なきところに人を集まらず』というスローガンを掲げながら『日本一の村つくり』『日本一の里山つくり』を目指すこと念頭に置いて村長選に立候補しました。村民の誰もが方向性は同じだと思います。自分の住んできた村に愛着を持ちながら最高の村づくりを進めていきたいと思います」

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