イトーヨーカドー福島店は1人暮らしの大学生の買い物先であり、閉店には福島大(福島市金谷川)の学生から切実な声が上がる。便利な買い物先が失われ、買い物難民になる可能性が出ているのをきっかけに、学生たちが大学近くで商業施設を自ら運営できないか模索している。
中心になって計画しているのは福島大2年の星萌生さん(須賀川市出身)と、同じく2年の鴫原寛伊さん(二本松市出身)。それぞれが学生団体を立ち上げ、福島市民に市街地の課題を聞き取るなどしている。
なぜJR福島駅前のイトーヨーカドーを2駅先(金谷川駅)にある福島大の学生が頻繁に利用しているのか。大学敷地内の寮に住む星さんが説明する。
「福島大がある金谷川駅周辺は郊外です。近くに買い物先はなく、1人暮らしで車を持たない学生は福島駅前まで電車で買い物に向かいます。同駅前でアルバイトをしている学生は多く、ついでにイトーヨーカドーで食材を買う。自炊で生活費を抑えたい学生にはありがたい値段設定の店です。同駅周辺には青果店、鮮魚店、精肉店が点在しているが、巡るには離れている。駅西口には1㌔ほど先にヨークベニマル野田店がありますが、駅からの往復で30分は掛かり、気軽には行けない」(星さん)
星さんはイトーヨーカドー撤退に危機感を抱く学生らと団体「SUPER MARKET(スーパーマーケット)ふくだい」を立ち上げた。大学近くに日用品が買える場の設置を目指す。団体としての活動は現状SNSでの発信に留まるが、星さんは経営者を訪ねてノウハウを学ぶなど、協力を仰いでいる。
「福島大周辺は学生が住みやすいとは言えません。イトーヨーカドー撤退のピンチをきっかけに、学生や地域住民が望む商業施設を自前でつくりたい」(同)
「生活環境を自分たちの手で向上させたい」(鴫原さん)
イトーヨーカドー福島店が入居する土地・建物は大手不動産の所有であり、敷地の広さを考えると利活用するのはノウハウのある民間企業が適している。周辺住民の間では「ディスカウントストアに来てほしい」「商業施設でなくマンションになるのでは」と希望と不安が錯綜。生活水準維持は事業者次第という諦めが垣間見える。
大手企業が乗り出すのと比べ、経験の浅い学生たちの取り組みは心もとなく映るだろう。だが、大手企業にとって福島市の商圏は魅力が失われている。小規模ながらも「欲しいものがないなら自前でつくる」気概は、人口減少が不可避な地方で必要な発想の転換だ。