【いわき市】内田広之市長インタビュー【2025.5】

【いわき市】内田広之市長インタビュー【2025.5】

経歴

うちだ・ひろゆき 1972年生まれ。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、
福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。

 ――1期目の任期満了まで残り半年となりました。まずは、この間を振り返っての感想等をお聞かせください。

 「これまで様々なことに取り組んできましたが、特に医療と雇用は重要な課題でした。医師不足の解消に向けて、20人以上の医師を増やすことができ、いわき市医療センターでは呼吸器内科、リハビリテーション科、糖尿病・内分泌科に常勤医師を配置することができました。働く場所の創出については、35件の企業誘致や本社機能誘致等により、380人以上の雇用を生み出すことができました。

 とはいえ、それら課題への対応はまだ道半ばです。いわき市の医師数は類似都市と比較しても少ない状況にあり、今後10年間でさらに100人ほどの医師を増やす必要があると考えています。

 また、若い世代や女性の首都圏への流出が依然として大きな課題です。彼・彼女らが地元で専門性を生かして働ける場所をもっと増やしていく必要があります。

 議会で2期目に向けての出馬表明をさせていただきましたが、医療や雇用など、まだ途上にある部分に今後も力を入れていきたいと思っています」

 ――3月には、楽天グループ株式会社と包括連携協定を締結されました。この間の経緯と今後の展望についてお聞かせください。

 「楽天グループとの包括連携協定は、いわき市の地域経済や地域社会の持続的な発展を目指す上で、非常に意義深いものと考えています。具体的な連携内容については、ふるさと納税の推進、デジタル分野での協力、シティセールスなど、多岐にわたる分野での連携を検討しています。特に、ふるさと納税については、いわき市には果物や野菜、温泉など、多くの魅力的な資源がありますので、楽天グループの協力を得ながら、これらの魅力を効果的に発信し、納税額の増加につなげていきたいと考えています」

 ――平地区中心市街地に地域おこし協力隊が初めて導入されますが、その狙いについてお聞かせください。

 「いわき駅周辺の中心市街地は、ホテルB4Tや商業施設などが整備され、ハード面での開発が進んでいます。しかし、まちに魂を入れるためには、ソフト面での活性化が不可欠です。今回、地域おこし協力隊を導入することで、まちづくりのプレーヤー確保・育成を進め、地域の関係団体やNPOなどと連携しながら、中心市街地の活性化を図り、新たな魅力を創造していきたいと考えています。

 いわき市は面積が広いため、中心市街地を核として、周辺の湯本や小名浜などと連携しながら、まちづくりを進めてまいります」

来年は60周年の節目

 ――4月からは大型観光企画「ふくしまプレデスティネーションキャンペーン」が実施されています。観光振興に向けた取り組みについてお聞かせください。

 「ふくしまプレデスティネーションキャンペーンは、いわき市の観光振興にとって大きなチャンスと捉えています。これまでの観光振興策に加え、サイクルルートの整備や、浜通りの他町村との連携などを通して、より広域的な観光の流れを作っていきたいと考えています。

 具体的には、いわきの復興の姿を見ていただきながら、白水阿弥陀堂やスパリゾートハワイアンズなどの観光スポットを巡ってもらい、いわきの魅力を満喫していただくプランなどを考えています。スパリゾートハワイアンズは60周年を迎えるということで、様々な企画が予定されており、これらと連携しながら、いわきの観光を盛り上げていければと思っています」

 ――来年10月には、いわき市制施行60周年を迎えます。記念事業などについては、どのように考えていますか。

 「来年はいわき市にとって大きな節目となりますので、市民の皆様と共に60周年を祝う様々な事業を検討しています。

 過去の周年事業では、大規模な式典などが行われておりますが、市民アンケートの結果などを踏まえると、そのような形式ばったものは現代にはそぐわないと考えています。さらに、市民アンケートでは、市歌などについて、6割ほどの市民が『今のままで良い』と回答しており、見直しに関する事業を求める意見は少数でした。

 一方で、60周年を機に、いわき市の未来について若い世代や次世代を担う方々から意見を聞き、政策提言をしてもらうような事業を考えています。具体的な内容については、今後、関係機関と協議しながら詰めていきます」

 ――今年度の重点事業についてお聞かせください。

 「今年度の重点事業は、大きく分けて、子育て支援、高齢者福祉、医療、公共交通の4つです。

 子育て支援については、若い世代がいわき市で安心して子どもを産み育てられるよう、経済的な支援と保育環境の整備を進めます。具体的には、出産したときに健康保険から支給される出産育児一時金50万円や妊婦支援給付金の給付などを実施します。また、関連公共施設の見直しにも着手します。

 高齢者福祉については、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、介護施設の整備や、地域包括ケアシステムの充実を進めます。市長就任以来、地域密着型のグループホームや有料老人ホームなどが400床ほど増えていますが、まだ足りないという声もあります。ただし、20~30年後には高齢者人口が減少する見込みであるため、既存の医療施設との連携も含めて、今後の整備について検討を進めています。

 医療については、医師不足の解消に向けて、先述したようにこの数年間で20人以上の医師を増やすことができましたが、引き続き医師の確保に力を入れます。今後10年間で医師を100人増やすことを目標としており、特に産婦人科医など、不足が深刻な診療科の医師確保を目指します。

 公共交通については、いわき市には公共交通の不便地域が点在しており、令和8年度から9年度にかけて解消を目指します。具体的には、遠野地区などで定額タクシーのような仕組みを導入したり、小名浜などで新たな仕組みを検討します。既に川前地区などでNPOによる自治体版ライドシェアを導入しています。また、先述の高齢者福祉とも関連しますが、高齢者の移動手段の確保に向けて、新たな公共交通システムの構築にも取り組みます。国の制度緩和により、スクールバスの活用やタクシー会社との連携なども可能になっているため、高齢者のために様々な方策を議論しています」

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