2018年の夏休み中に、当時勤務していたいわき市内の中学校の女子生徒(当時15歳)に対し、18歳未満と知りながら教員の立場を利用して同校保健室で淫行したとして、児童福祉法違反(淫行させる行為)に問われた中学校の元男性教諭の第4回公判が4月15日、地裁いわき支部(齊藤研一郎裁判官)で開かれた。元教諭は「立場を利用していないし、淫行ではない」と起訴内容を否認し無罪を主張している(2024年12月号で初報)。この日は被告人質問が行われた。
生徒の好意に舞い上がった元教諭
児童福祉法違反に問われているのは、現在いわき市の会社員、齋藤仁氏(60)。事件が起こった中学校には2014年に赴任し、社会科を教えていた。女子生徒は小学校時代に不登校となり、中学校では保健室登校をしていた。齋藤氏が相談に応じると、その甲斐あってか保健室登校が減り、女子生徒は齋藤氏に好意を抱くようになったという。女子生徒から好意を打ち明けられると齋藤氏は受け入れ、「恋愛関係にあった」と主張している。
空き教室や放送室で抱き上げるなどの身体接触が始まり、行為は接吻や下着を脱いだ陰部付近に顔を近づけるなどエスカレートした。2019年に女子生徒が卒業すると、会うことはなくなった。その後、齋藤氏も別の中学に異動した。
転機はジャニーズ(現スマイルアップ)創業者による未成年への性加害問題。2023年に大々的に報じられ、女子生徒が未成年の時に齋藤氏から受けた行為を被害と認識し、同年9月に周囲に打ち明けて発覚した。
児童福祉法違反に問われているのは、2018年7~8月の夏休み中の行為だ。起訴状や女子生徒の証言によると、保健室で下着を脱いだ女子生徒の陰部付近に顔を近づけ陰部を舐めたとされるが、齋藤氏は取り調べで長時間にわたり警察官から「男なら舐めるだろう」と言われ誘導されたとして、顔を近づけることは認める一方、舐めたことを否認している。
ともあれ、教員が教え子に接吻したのは事実。齋藤氏は教え子に淫行したとして、2023年12月に県教委から懲戒免職処分を受けた。県警が強制わいせつ容疑で書類送検し、地検いわき支部が昨年9月に児童福祉法違反に変更して在宅起訴した。
警察が強制わいせつ(2023年7月に不同意わいせつに改正)の容疑で立件したのに、児童福祉法違反で起訴したのは、検察が犯行の強制性を立証するのが困難と判断したからとみられる。教員という生徒に対する強い立場を利用した淫行なら罪に問えるということだ。
「交際に舞い上がっていた」
被告人質問では、齋藤氏は女子生徒から好意を寄せられ恋愛関係にあったため、立場を利用していないと主張した。弁護人、検察官がそれぞれ質問し、最後に裁判官が聞いた。
――女性との示談交渉がまとまらないのはなぜか。
「彼女は私から性被害を受けたとして告訴したことになっているが、自分から進んで性行為をしてきた。今になって『同意がない』と言っている」
――示談は金額が折り合わないのか。被告人として性加害と認めないからか。
「弁護人に任せているのでそれについては分からない」
――他の人に知られないように性的な行為をしていたのはなぜか。
「学校の外で会えば誰かに見られたり防犯カメラに写る」
――2人で会うのは秘密にしたがっていたようだがその理由は。
「倫理的な面からだ。私には妻がおり、女子生徒は15歳だった」
――社会的な非難を恐れていたということか。
「そういうことだ」
――保健室での一連の行為をなぜしたのか。
「深く付き合っている恋人同士であればキスや性的な行為に至ると思う」
――女子生徒は卒業していく。卒業後の関係をどうするかは、それまで考えなかったのか。
「考えなかった」
――交際していたというが、その期間は長い。それでもその後の関係を考えなかったか。
「はい」
――今振り返って当時の自身の精神状態はどうだったか。
「15歳の少女と付き合っていることに舞い上がっていたと今は思う」
次回公判は6月3日午前9時40分から行い、結審する予定。