本誌10月号で、葛尾村役場の総務課長のパワハラ疑惑を取り上げた。現役職員や職員OBから情報が寄せられたのを基に取材に動いたが、実は本誌では1年前から「村役場内部の雰囲気がおかしい」という情報をつかんでいた。記事掲載後の反響と併せて、これまでの経緯を整理する。
現役職員がアンケートに綴った〝内情〟

10月号記事の内容は、村総務課長・M氏が部下に対し、過剰な叱責や理不尽な要求をすることが多く、退職者が相次いでいる――との情報を検証したもの。現役職員やOBに確認したところ、前述のような対応を受けたという人が複数人いた。
そこで当事者であるM氏に直撃したところ、「私が直接の原因で辞めた職員はここ2、3年はいない」と否定しつつも、「確かに私の指導は厳しいかもしれません。(中略)今ハラスメント問題が注目される時代なので、怒りすぎはよくないと承知しています。(中略)もし苦情が出ているということであれば考え直す必要があるでしょうし、そういう意味では反省しています」と述べた。一方で「ある程度細かく指示しないと今後の組織運営に影響する」、「最低限必要なことは伝えなければならない」と自身の正当性を主張した。
村のトップである篠木弘村長にもコメントを求めたところ、M氏同様、「総務課長の指導が原因で退職した職員はいない。(過去の部署で退職者が相次いだことに関しては)そこは把握していない」という見解を示し、「どうしても仕事に馴染めず辞めていく職員はいるもの。(中略)ただ、職員からそうした声が上がっているとしたら問題で、事実なら指導の在り方を見直さなければならないと思います」と話した。

記事では専門家の見解を示しながら、厚生労働省の指針や人事院規則のパワハラ該当例などを紹介し、総務課長のどの言動が具体的にパワハラに該当しそうかを指摘した。
そのうえで、「村にはハラスメント相談窓口があるが、最終的に総務課長が取りまとめ役となる仕組みなので今回は機能しなかった」、「篠木村長宛ての意見箱も設置されているが、役場として抜本的な改善策を打ち出す必要がある」、「職員側も組合活動を通して団結してパワハラ防止を訴えていくべきだ」と書いた。
複数の関係者によると、現時点で2人の職員が総務課長の厳しい〝指導〟に嫌気が差し、退職したい旨を明かしているという。ある村議も「職員内では以前からウワサになっていた。人権侵害に当たるのではないか」と問題視し、12月定例会の一般質問で執行部に質す姿勢を見せている。
自治労葛尾村職員組合では今年9月までにアンケート調査を実施しているが、そこにパワハラを告発する回答を提出したという声も複数の現役職員から聞かれた。本誌の手元にはある職員が記入したアンケート回答用紙がある。そこには次のように書かれていた(一部抜粋、リライトしている)。
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〇一部の管理職が、複数の職員に対し、強い口調で叱責や理不尽な指示などをしておりパワハラと思わざるを得ない状況が見受けられます。被害を受けている職員は精神的苦痛を伴いながら業務負担を著しく増大させており、一部の職員は退職も視野に入れているようです。
〇一部の上層部についても「……事業なんかやる必要ない」等、職員のやる気をなくすような後ろ向きの発言や、批判や陰口などの言動が多々見受けられます。
〇(一般社団法人葛尾)むらづくり公社でもパワハラがあるらしくこれまで何人も退職しています。上に相談しても聞き入れてもらえず、公社トップの理不尽な批判やネガティブな発言が退職の一因となっているとのことです。
〇さらに管理職が飲み会で女性のそばに行き不快な言動をするため、近くの席にならないよう配慮することがあるとも聞いています。
〇上の立場の方の以上のような言動や行動が続けば、優秀な人材が村外に流出してしまい本村にとって大きな損害となってしまいます。一方的な批判やネガティブ思考を払拭し、倫理観、公平性、共感力、傾聴力といった風通しの良い環境を整え組織全体のマネジメント力向上を図っていき、やりがいを感じられる組織づくりができるよう、(村幹部には)お導きいただければと思います。
〇男性管理職と女性職員が頻繁に必要以上に親しく接しており、見るに堪えません。男性管理職が女性職員の帰り際に手を振ったり、他の職員には絶対しない封入作業などの手伝いをしたり、他の職員には恫喝的態度を頻繁に行っているのに、女性職員には笑顔でベタベタ接していて正直不快です。
複数の住民から「2人が一緒にいるところを見かけたがどうなのか」と聞かれて、困ってしまいました。
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パワハラ以外にも気になる点がある回答だが、果たして組合のアンケート調査は最終的にどのような結果が示されるのか。
組合の調査結果に注目

同村役場内のパワハラ問題に関しては、実は1年以上前にも関連情報が編集部宛てに電話で寄せられていた。電話の主は少し前に退職した職員の「身内」を名乗る人物で「前の上司は粘り強く指導してくれたそうだが、異動先の上司が長時間にわたり大声で〝公開説教〟するタイプで、精神的に疲弊して退職に追い込まれた。まだ若い人材をこんな風に潰すことが許されていいのか」と訴えた。
ただ、元職員本人に電話で確認したところ、上司の対応を問題視するというより自責の念に駆られており、「しばらく静養しながら次の進路を考えたい」と話していたため、いったん記事化を見送った。元職員の能力や勤務態度は分からないし、もちろん上司側にも言い分はあるだろうが、同村役場に対し何とも風通しの悪い印象を受けていたところに、今回の情報が入ってきた。
ちなみに、電話の詳細を伏せて現役職員・OBに「長時間にわたり大声で〝公開説教〟するタイプの管理職」の存在について確認したところ、「該当するのは現在の総務課長しかいない」との証言が得られた。
震災・原発事故により全村避難を余儀なくされ、大部分で避難指示が解除された後も人口は回復していない同村。帰還促進と地域再建が目下の課題だが、10月号記事でも触れた通り、パワハラ的な指導が原因で職員が萎縮し、役場の機能が低下すれば、今後の復興や住民サービスに影響しかねない。今後、組合の調査や村の対応がどう進むのか、引き続き注視していきたい。























