本誌おじさん記者【LIVE AZUMA】初体験ルポ

本誌おじさん記者【LIVE AZUMA】初体験ルポ

 本誌10月号記事で、福島市で毎年行われている音楽フェス「LIVE AZUMA(ライブアヅマ)」の仕掛け人に話を聞いた。せっかくなのでこの機会に40代、フェス初心者の私が初参戦したところ、迫力あるステージと絶品グルメに圧倒される2日間となった。(志賀哲也)

福島発フェスに4万3000人が熱狂

 全国的に知名度が高い人気アーティストが福島県内で音楽ライブを開催したり、音楽イベントに参加する機会は少ない。県内の音楽ファンはお目当てのアーティストの演奏を聞くため、県外のライブや音楽フェスに遠征するのが常だ。

 そうした県民にとっての常識をぶち壊したのが福島市で2022年から行われているライブアヅマだ。

 人気アーティスト約50組が福島市に集結し、2日間かけて演奏を披露する。昨年は2日間で延べ3万7000人が来場した。

 主催者は音楽フェス「サマーソニック」を企画・運営しているプロモーター会社・クリエイティブマンプロダクション、福島県出身者が立ち上げたクリエイティブチームが前身の㈱フライングベコ、福島テレビの3社が名を連ねる実行委員会。

 本誌10月号記事では、▽ライブアヅマを企画したのは音楽フェスを愛する福島テレビ事業部のテレビマン・佐藤将一さんであること、▽学生時代や東京での営業職時代の人脈を生かし、豪華なラインアップの音楽フェスを福島市で実現させたこと――などを紹介した。

 もっとも、本誌記者は福島市に住んでいながら、一度もライブアヅマに足を運んだことがなかった。40代半ばになり、流行の音楽にもすっかり疎くなりつつある。

 そこで、音楽鑑賞を趣味にする同年代のスタッフを誘い、10月18、19日の週末2日間、ライブアヅマに初めて参戦した。

 1日目18日朝9時。会場の福島市・あづま総合運動公園に到着したところ、開演2時間前にもかかわらず、すでに多くの人でにぎわっていた。1日のスケジュールを記したタイムテーブルのボード前で〝推し〟のタオルやアクリルスタンドを掲げて記念撮影するのが恒例となっているらしく、長い行列ができていた。

 グッズ売り場に立ち寄り、おしゃれな公式ベースボールシャツを購入。羽織ってみると、肥満体型のお笑い芸人のような風貌になったので落胆したが、音楽フェスに参加しているという実感が湧いてきた。

 演奏が披露されるステージは、県営あづま球場グラウンド内の「アヅマステージ」をはじめ、公園内に2つ設けられた。メーンとなるアヅマステージでは、球場のスタンドに座って食事をしながら音楽を楽しめる(専用チケット購入者限定)。初心者の私はスタンド席で観賞しつつ、間近で見たいアーティストがいればグラウンドに下りて参加することにした。

サークルモッシュの衝撃


 18日のトップバッターはガールズグループ「IS:SUE(イッシュ)」。全く予備知識がなかったが、クールな歌唱やダンス、曲間のキュートなMCにすっかり魅了された。福島県出身のメンバーがあいにく不在で見られなかったのが残念だった。

 より近くで演奏を体感したくなり、人気パンクバンド「HEY—SMITH(ヘイスミス)」をグラウンドで見た。管楽器を取り入れた「スカ」のリズムの楽曲は小気味よく、思わず体が揺れた。見よう見まねで腕を振り、ジャンプして盛り上がっているうちに約40分のステージが終了していた。

 衝撃を受けたのは、複数のファンがグラウンド内でスペースを確保して輪になり、音楽に合わせて走ったり(サークル)、中心部に向かって走って体をぶつけ合う(サークルモッシュ)姿が見られたこと。ロックバンドのライブの楽しみ方として定着しているという。おじさん記者に参加する勇気と体力はなかった。

 体を動かしたら腹が減ったので、同僚スタッフと公園内を散策した。会場内に並ぶさまざまな〝フェス飯〟に目移りしながら、東北拉麺屋台村で仙台市の人気店「あはれ」が提供する「Only Holy Noodle~仙台辛味噌白湯拉麵~」を食べた。

 ここで美味しい1杯を味わったことで、食事に関する制御機能が壊れてしまう。2日間にわたって山塩ポテトチップス、牛メンチカツ、プルドポークバーガー、牛ステーキ、ローディッドポテト、シャインマスカットアイスクレープ、りんご飴など県内外から出店している飲食店ブースで本能の赴くまま食べまくった。絶品メニューを手軽に堪能できるのもライブアヅマの大きな魅力と言える。

 会場まで車で訪れたので飲酒はできなかったが、福島駅発着のシャトルバス勢は地酒や地ビールを味わっていた。秋空の下、昼から飲むアルコールなんて最高に決まっている。

 このほか、子ども向けのワークショップ、赤べこの絵付け体験やへアアレンジ体験を楽しめるブース、アートや古着、小物のショップなど、実に多彩なブースが並び、幅広い世代の来場客でにぎわっていた。

 実はこれらの店舗、フェスのチケットを購入していなくても利用できる。近くにはDJが流す音楽やアーティストの歌唱を無料で楽しめる「ECHO STAGE(エコーステージ)」も設置されている。

 芝生のゾーンにはデイキャンプエリアが設けられ、アウトドア用のチェアやテントを広げて過ごす人もいた。例えるなら、音楽フェス会場の外側で、大規模な秋祭りイベントも同時開催されているイメージだ。

 市内在住の来場者からは「チケットは買っていないが、グルメを満喫したいと思って足を運んだ」という声が聞かれた。県外から家族で参加した男性は「ほかの音楽フェスはアーティストの歌を聞くのが主目的だが、ライブアヅマは食事を楽しみながらのんびり過ごす時間が目的の半分を占める」と話した。音楽フェスでありながら、音楽を聞かなくても楽しめる――この自由な雰囲気こそライブアヅマの特色と言えよう。

 2日間で10組以上のステージを見た。最も印象に残ったのは、2日目のオープニングアクトを務めた木村カエラさん。「リルラリルハ」、「Butterfly(バタフライ)」など、かつてカーステレオで聞いたヒット曲に心が躍った。「Magic Music(マジックミュージック)」では年齢を忘れて飛び跳ね、腕を振った。

「ご褒美みたいな1日」

〝フェス飯〟を堪能する家族
〝フェス飯〟を堪能する家族

 

女性客の多くが〝参戦理由〟に挙げたボーイズグループの「INI」(アイエヌアイ)、「WEST.」(ウエスト)は、歌、ダンス、曲間の気さくなMCと、バラエティーに富んだステージを披露し、おじさんでも総合エンターテイメントとして楽しめた。ファンが振る色とりどりのペンライトは夕闇に映え、ステージを演出しているように見えた。多くの人が魅了される理由が理解できた。

 それらのグループのファンをも巻き込み、会場全体を盛り上げた「湘南乃風」のパワフルさにも驚かされた。スタンド席最上段ではファンが巨大な旗を振り、グラウンドは観客であふれた。あらゆるアーティストのファンが一つになる姿は、さまざまなジャンルのアーティストが出演するライブアヅマを象徴するシーンのように思えた。

 新たな発見があったのは、1日目のヘッドライナー(大トリ)を務めた「Saucy Dog(サウシードッグ)」。紅白歌合戦にも出場した若者に人気のバンドということは知っていたが、伸びやかなボーカルと、繊細で物語性の高い歌詞、真っすぐなメッセージが心に刺さった。小雨で服が濡れ始めたのにも気づかず、夢中になって聞き続けた。

 郡山市でライブを行い、猪苗代湖でMV(ミュージックビデオ)を撮影するなど、福島県ともゆかりの深いことを知り、一気に親近感が湧いた。こうした出会いがあるのも音楽フェスならではの魅力と感じる。

 一人のアーティストが「今日は普段頑張っているみんなにとって〝ご褒美〟みたいな一日。盛り上がっていこう!」と呼びかけた。グルメや酒を味わいながら好きな音楽を聞く「極上の2日間」を楽しみにして、多くの人が全国から福島市に集まってくる――そう考えると、グッとこみ上げるものがあった。

 会場となったあづま総合運動公園内の体育館は震災・原発事故直後、浜通りからの避難者を受け入れた。県営あづま球場は東京五輪野球・ソフトボール競技の一部試合の会場に選ばれたが、コロナ禍の真っただ中ということもあり、盛り上がりに欠けたまま終わった。

 そんな県民にとって複雑な思いが漂う場所を「多幸感あふれる〝ご褒美〟の場」に変えてみせた、佐藤将一さんら主催者の取り組みに心から拍手を送りたくなった。

 福島テレビによると、今年は2日間で過去最多となる延べ4万3000人が来場したという。昨年は県外来場者が45%を占めたが、今年も多くの人が県外から訪れたと思われる。その経済効果はもちろん、福島市へのリピーターを年々増やしているという点で、ライブアヅマが果たしている役割は大きい。

 今度はどんなアーティストの演奏が聞けるのか、どんなグルメが味わえるのか。来年の秋が、いまから待ち遠しい。

Kjに刺激を受けた日     本誌・本田隆博 

 筆者と同年代で「生粋の音楽ファン」である本誌スタッフも2日間、一緒に参戦した。彼の目に今年のライブアヅマはどう映ったのか。

 ライブアヅマには過去2回参戦している。新しいアーティストと出会えるのが最大の魅力だと考えている。

 2022年はアヅマステージの隅で寝ころびながら(現在と会場のレイアウトが異なっていた)、「never young beach(ネバーヤングビーチ)」の「明るい未来」を聞いた。2023年に見た「羊文学」はすっかりファンになり、今年10月の日本武道館公演にも足を運んだ。

 今年は初めて2日間、最初から参戦した。ステージ脇のモニターに「FIRST STAGE」と表示されるのを見たのは初めてで新鮮だった。

 アーティストの単独ツアーの公演は、東北地方の場合、宮城県のみで行われることがほとんどだ。そのため、コール&レスポンスを行う際は「せんだいー!」という掛け声になり、福島県民の筆者は疎外感を感じる。だが、ライブアヅマではどのアーティストも「ふくしまー!」と叫ぶので〝地元愛〟を実感できる。

 ライブアヅマには音楽フェス常連組のロックバンド以外にも、さまざまなアーティストが出演する。「INI」、「WEST.」、「IS:SUE」のファンは、自分が普段行くバンドのライブとは客層が異なり、新鮮に映った。

 自分が10~20代にかけて聞いてきた「RIP SLYME(リップスライム)」や「黒夢」の曲が聞けたのには感動した。圧巻だったのは「湘南乃風」。ファンはもちろん、会場中の観客を巻き込み、タオルを回して盛り上がる様子に圧倒された。

 新旧のアーティストが出演するため、親子や年の離れたグループで楽しんでいる姿も見られた。アーティストのブッキングやタイムテーブルを考えた人には、この場を借りて賛辞を送りたい。

 中でも「Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)」のステージは圧巻だった。以前、音楽フェスのブッキング担当者が「ドラゴンアッシュが出るとフェスが引き締まる」と話したインタビューを読んだことがあり、その通りだと実感する。

 ボーカルのKj(ケージェイ)こと降谷建志さんは10代でデビューし、40代になったいまもトップシーンを走り続けている。年齢は私の1つ上。「自分も頑張らないとな」と思いながら帰途についた。

志賀 哲也

しが・てつや

1980(昭和55)年生まれ。福島市出身。
大手食品スーパーで勤務後、東邦出版に入社。

【最近担当した主な記事】
南相馬市ブローカー問題「借金踏み倒し」被害者の嘆き(2023年7月号)
相馬市の醤油醸造業者が殊勲(2023年5月号)

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