全国一に輝いた郡山市【みのり納豆】

 全国の納豆メーカーが自慢の一品を持ち寄り、味や香り、粘りなどを競う「全国納豆鑑評会」が11月、郡山市で催される。開催に先立ち、昨年の鑑評会で最優秀賞を受賞した郡山市のメーカーの女性職人にインタビューした。

発酵食品文化を継承する若き女性職人

椎根健雄郡山市長(中央)に最優秀賞受賞を報告する未奈さん(左)と利勝社長=写真上
最優秀賞を受賞した「ほのか」
最優秀賞を受賞した「ほのか」

 2024年総務省家計調査によると、福島県(県庁所在地の福島市)は納豆の1世帯当たりの年間消費額で全国1位だった。全国平均4770円に対し、本県は7830円。2023年こそ9位だったものの、基本的に1位が定位置となっている。

 本県の冬の寒冷な気候は納豆づくりに適しており、かつては県内の各家庭で手づくりしていたとされる。会津地方の山間部では、わらに包んだ大豆を雪の中に埋めて発酵させる「雪中納豆」がつくられ、冬の代表的な食品となっていたという。

 学校給食でも提供され、小さいころから食べる習慣が付いていることもあって、「消費額全国1位」となっている――というのが定説だ。

 一口に納豆と言っても、大豆の品種や粒の形によって味や食感が異なり、県内食品スーパーの納豆売り場にはさまざまなメーカーの商品が並んでいるが、郡山市民から圧倒的な支持を集めるのが、有限会社ミドリヤ(郡山市富久山町、村上利勝社長)が販売する「みのり納豆」だ。

 北海道産小粒大豆を使用したカップ型の商品「おかわり」が市内の学校給食で提供されており、「うちの子どもはこの納豆しか食べない」という人は多い。

 昨年注目を集めたのは、みのり納豆の看板商品「ほのか」だ。全国納豆協同組合連合会が主催する全国納豆鑑評会で6度の受賞歴があり、昨年11月の第28回鑑評会で最優秀賞農林水産大臣賞を受賞した。

 審査員は16人で、研究者、文化人、食品関係者、省庁関係者など多彩な顔ぶれで構成される。審査基準は①外観(見た目)、②香り、③味・食感の3項目で、名前を伏せて出される納豆をそれぞれ5点満点で評価し、合計点数上位から受賞納豆を決定する。そこで最優秀賞となった「ほのか」は、いわば〝ガチンコ審査〟で選ばれた「本当においしい納豆」と言える。

 同社によると、「ほのか」は一般的な納豆よりにおいが控えめで、くせがなく食べやすい味わいが特徴だという。どうしてこのような商品を開発しようと考えたのか。

 「きっかけは、うちの工場長が『納豆のにおいが好きじゃない』と話していたことだったんです」

 こう説明するのは、村上利勝社長の娘で、同社で管理職を務める村上未奈さん(30)だ。

 同社の工場長を務めるのは未奈さんの母親・小枝子さん。納豆メーカーの工場長自ら「納豆のにおいが苦手」と公言しているのは何ともユニークだが、同社では工場長を中心に、どうすれば納豆が苦手な人でも食べやすい納豆ができるのか、本気で研究を重ねた。その結果、あっさりした香りと深みのあるうまみ、強い糸引きを兼ね備えた商品が完成した。鑑評会に出品したところ、受賞するようになり、においや苦み、雑味が少なくて、〝食べやすい納豆〟が求められていることを実感した。

 同社は1953年、郡山市中町でバナナ問屋として創業。バナナと同様、熟成が必要な食品ということで納豆づくりに携わるようになり、1975年に本社工場を現住所の同市富久山町に移転。村上利勝社長は婿入りして就任した3代目に当たる。

 未奈さんは3姉妹の次女で、あさか開成高、文化学園大造形学部を卒業し、2018年に入社した。

 「両親からは『自分がやりたいことをやっていい』と言われていたので、東京の大学に進学したが、卒業間近に両親から誘われて入社を決意しました。うちの納豆は私が小さいころから学校給食で出されており、友達に『おいしい』と言ってもらえることに誇りを抱いていたし、納豆は身近な存在だったので、家業に入ることに抵抗はなかったです」(未奈さん)

 納豆づくりは洗穀機で大豆の汚れや雑菌を洗い流し、水を吸わせた後、大豆圧力釜で蒸す。薄めた納豆菌を吹き付けた後、充填機でパック詰めされていく。その後、「むろ」(発酵室)でひと晩置くことで納豆菌が活性化して発酵し、ねばねばになって大豆の甘み・うまみが出る。

 これらの作業を工場長、未奈さんを含む5人で手分けしてこなしており、未奈さんは職人として作業全般を担当している。

 「梱包や配送などの作業に入ることもあります。営業活動にも力を入れたいのですが、時間がなくて手が回らない状況です」(同)

郡山で全国鑑評会開催

製造現場で奮闘する未奈さん
製造現場で奮闘する未奈さん

 納豆メーカーは大手メーカーによる低価格商品との競争、資材高騰、人口減少による売り上げ減、後継者不足などで激減した。2024年8月時点での全国納豆共同組合連合会の会員所属企業数は97社、県内はわずか5社となっている(会員に入っていない納豆メーカーもある)。

 そうした中、未奈さんは連合会の青年部に所属し、納豆のさらなる普及と消費量向上に向けて奮闘している。高齢化が進む業界だが、県内では世代交代が進み、未奈さん以外にも若手職人の活躍が目立っている。

 今年の鑑評会は11月21日、未奈さんの地元・郡山市の郡山ビューホテルアネックスで開催予定だ。県内開催は1995年度の第10回鑑評会(福島市)以来30年ぶりとなる。

 昨年の鑑評会では青年部メンバーとして実行委員に入り大会運営に携わりつつ、次回開催地を代表して審査員を務めるなど、大忙しだった未奈さん。そのうえ、自社商品が最優秀賞に選ばれるという記念すべき鑑評会となった。今年も狙うは最優秀賞だが、それと同じぐらい、地元開催を機会に〝納豆王国・ふくしま〟をより盛り上げたい気持ちが強い。

村上未奈さん
村上未奈さん

 「福島県は伝統的にみそ・しょうゆ・日本酒などの醸造業が盛んで、発酵食品を食べる文化が根付いている。納豆に関しても、私たちの世代が中心になり文化をつないでいきたい。今回の鑑評会を機に福島県の納豆文化を全国に発信したいですね」

 郡山の工場から生まれる挑戦の糸は、これからも粘り強く、静かに全国へと伸びていく。

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