【小野町】村上昭正町長インタビュー(2025)

【小野町】村上昭正町長インタビュー(2025)

経歴

むらかみ・てるまさ 1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。今年3月の町長選で無投票での再選を果たした。

役場庁舎の新築移転や発酵拠点整備でにぎわいを創出

 ――無投票で再選を果たされました。まずは現在の率直なご感想をお聞かせください。

 「無投票で再選させていただき、町長としての責任の重さをあらためて感じています。『1期目で結果を出すのは難しいから2期目に期待しよう』と考えた方も多いと思いますので、『信任された』などと考えず、町民の声に耳を傾けながら真摯に町政運営に取り組んでいきたいと考えています。

 町長選に立候補するに当たり、4年間を振り返り、選挙の際に掲げた公約の達成状況を総点検し、達成できなかった課題については、再度取り組む必要があります。

 町長として町政運営に取り組む中で新しい課題も見えてきており、状況も日々変化しているので、4年前とは全く異なる形でのスタートになると感じています」

 ――2期目に向けてどのような施策に取り組んでいく考えですか。

 「①支えあう地域コミュニティーの再構築、②新しい農業への挑戦、③商工業の活性化施策、④町民の生涯学習の促進と健康づくりを公約として掲げていて、まずは2027年度に予定している役場庁舎の新築移転をしっかりとやり遂げることが重要であり、移転場所は磐越自動車道・あぶくま高原道路小野インターチェンジ(IC)の近くなので、新庁舎を拠点にIC周辺の開発も進め、具体的には、商業施設や宿泊施設、企業などを誘致し、にぎわいを創出していきたいです。

 また、町の農産物などの販売、町民の交流拠点となる施設などを設けることで、交流人口の増加につなげたいです。さらに、防災公園や防災倉庫、消防署の移転なども計画しており、防災拠点として整備を進めていきたいと考えています」

 ――4月には児童クラブや放課後子ども教室などの機能を備えた「小野町児童館(キラッと☆おの)」がオープンします。どのような施設になるのでしょうか。

 「放課後児童クラブをはじめ、さまざまな子育て支援事業を実施する予定で、約80人の受け入れを予定しています。さらに、小学校高学年や中学生を対象としたアフタースクール事業として、プログラミングや絵画、写真など、さまざまな体験を提供することで、将来に向けて子どもたちの経験値を高めていきたいです。また、学校以外で子ども同士が交流できる場所にしたいです。

 子育て支援の施策で言えば、町独自の英語塾を開設し、成長してからの生活に役立つよう英会話などが学べる環境を提供し、子どもたちの英語力を向上させたいです。

 また、定期的に開催している子ども食堂を町内の空き家・空き店舗などに設置し、町民の方にお手伝いいただきながら、さまざまな環境にいる子どもたちが気軽に利用できるようにしたいです」

農家の経営多角化を支援


 ――昨年の取材では農業振興策について話されていました。現在の状況はいかがでしょうか。

 「農業に関しては後継者不足が深刻です。安定した収益をあげている生産者もいますが、なかなか所得の向上につながりにくいという課題があり、若者にとって魅力を感じづらい面があると感じており、後継者不足を解消するためには、まず所得面で魅力ある農業を実現していく必要があると考えます。

 そのために、まず副業的な取り組みを後押しするため、農家民泊や農家レストランなど多様な業態に取り組む事業者を支援していくことで、農業所得の向上を目指します。

 誰も後継者がいなく、農地や住宅が荒れ放題になることを防ぐため、お試し農業体験の実施やオーナー制度を導入することで新規就農希望者を増やしていきたいと考えています。施策を実現するためにはさまざまな方の協力が必要になると思いますが、そうした取り組みにより、町外から人を呼び込みたいです。

 新たな特産品を育成することも検討し、例えば、栗やイチジクなど、地域に適した作物を導入して、地域の活性化につなげたい。さらに、加工品の開発や販売にも力を入れ、農業の多角化を図りたいです」

 ――「発酵」をキーワードにさまざまな取り組みを行っており、町内で栽培された酒米「福乃香」を使用した日本酒「東堂山勝馬」は好評を博しています。今後、加工施設と交流施設を兼ね備えた発酵拠点を整備する予定となっていますが、進捗状況はいかがでしょうか。

 「発酵拠点については、本町出身で東京農業大学名誉教授(発酵学専門)の小泉武夫先生にアドバイスをいただきながら、幼児施設跡地に加工施設を整備する計画を進めており、発酵に関するさまざまな活動を展開したいです。
 具体的には、発酵食品の製造や販売のほか、発酵食品について学習する機会やみそづくりなどの体験プログラムを提供し、地域住民や観光客に発酵文化を広めていきたいです。将来的には、こうじを作るむろも設置し、発酵食品が味わえるレストランも併設できればと考えています。発酵食品の中でも甘酒などは許可が必要であるため、高いハードルではありますが、引き続き実現を目指していきます」

 ――そのほか、取り組んでいる重点事業について。

 「都市部との交流を積極的に進めていきたいです。特に、戦時中の学童疎開先であったことをきっかけに交流が始まった東京都荒川区の子どもたちなどと新たな交流の機会を設けることができれば交流人口の増加につながります。

 また、町内には多くの外国人技能実習生が滞在しているので、多文化共生にも力を入れ、日本語教室の充実や外国人との交流イベントなどを開催し、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指します」

 ――今後の抱負を。

 「人口減少の中でも活力を維持し、町民の方々が生きがいを感じられるまちづくりを進めていきたいです。そのためには、移住者の増加だけでなく、交流人口や関係人口の増加も重要であり、地域住民の方々と協力しながら、コミュニティーの再構築や防災対策の強化など、さまざまな課題に取り組んでいきます。町民の方々と共に、この町をさらに発展させていきたいです」

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