福島市西部の先達山で進むメガソーラー工事の問題点を追及している市民団体「先達山を注視する会」(松谷基和代表。以下、先注会と略)の対話会が5月10日、福島市で開かれた。今回で3回目となる対話会には開発事業者であるカナダの再エネ投資・運営会社Amp Energy(以下Amp社と略)の日本法人代表を務めるマルティン・シュタイン氏が出席することもあり、会場の市民センター大ホールには大勢の市民やマスコミが詰めかけた。
シュタイン氏は冒頭、「皆さんに安心感を持っていただけるミーティングにしたい。質問には可能な限り答えます」と述べたが、松谷代表らの厳しい質問に答えを詰まらせる場面が度々見られた(※)。
※対話会の一部始終は先達山を注視する会のホームページで随時公開しているので興味のある方はご覧になっていただきたい。
対話会では印象に残る場面が三つあった。
一つ目は、設置済みの太陽光パネルが強烈な反射を生じさせていると指摘した場面だ。先注会にはパネルが反射する様子を写した写真が市民から寄せられ、先注会のメンバーが4月30日に工事現場を視察した際には、近隣住民から「高湯街道は運転に支障が出るほどまぶしい」と具体的な証言もあったという。
Amp社の担当者は、専門業者に委託して行った事前のシミュレーションでは反射はしないと予測していたが、市民からの指摘を受け昨年11月から再検証していると説明。一方で「南向きのパネルは太陽光の反射が空中に逃げる。現場のパネルは南向きに設置されているため、基本的には市街地への反射は起きない」とも付言した。
対話会の時点では再検証の結果は出ていなかったが、Amp社の担当者は「結果が出たらお知らせする」と約束した。ただ、先注会メンバーの「反射していることが明確になったら工事をやり直すのか」との問いには明言を避けた。
二つ目は、地元協力の名目で工事現場に近い町内会にAmp社から多額の金銭が支払われていることを指摘した場面だ。松谷代表はこの間の報道や情報開示請求で入手した公文書から、ある町内会に地域貢献として1800万円が一括払いされていたことなどが分かったと説明。公文書では町内会の名称は黒塗りになっていたが「カネをばらまくことで地域社会の分断が起きている」とAmp社を批判した。
すると、Amp社の担当者は「松谷氏もマスコミも、地元協力金のことをむやみに取り上げるせいで(受け取った町内会が)迷惑を被っている」と強く反論。「地元の求めに応じて、企業としてでき得る支援をしたまでだ」とも述べたが、常識外れの高額さは「これ以上反対しないでほしい」という主旨の口止め料のように感じてしまう。

三つ目は、調整池について専門家が指摘した場面だ。Amp社は、現場に造成された2号調整池は令和元年東日本台風並みの雨量だと8時間で溢れる恐れがあるので、水位計で監視し、下流の住民にはサイレンで知らせる方向で検討中としている。一方で、調整池には洪水吐(洪水時に安全に水を流すための施設)を設置し、開発前より開発後の方が安全性は高まるとも強調している。
これに対し、会場を訪れていた山梨大学の鈴木猛康名誉教授(地域防災)と福島大学の柴崎直明教授(水分地質学)が専門家の視点から「調整池があるから安全性が高まるというのは誤解」との見解を示し、Amp社に安全性に関する再考を促した。
事業者側のトップを表舞台に引っ張り出し、各分野の専門家も参集するなど、先注会の活動は日増しに注目度が高まっている。
























