「棚倉町の県立修明高校(阿部拓広校長)に通う男子生徒がいじめに遭い、いじめ重大事態と認められたらしい」という情報が入ってきた。
「いじめ重大事態」とは深刻ないじめのことで、学校の設置者(教育委員会)、もしくは学校が判断する。発生した場合(児童生徒や保護者からの申し立ても含む)、速やかに組織を設置し報告・調査に当たること――といじめ防止対策推進法で定められている。具体的には、①児童生徒が自殺を図る、身体に重大な傷害を負う、金品の被害を受ける、精神性罹患を発症するなど生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがあるとき、②相当期間(年間30日がめど)の欠席を余儀なくされた疑いがあるとき――とされている。
情報は事実なのか。取材を進めると、男子生徒の家族から相談を受けている男性に話を聞くことができた。
この男性によると、いじめ被害に遭った男子生徒A君は1年生で、入学直後から同級生の女子生徒と男子生徒に暴言を吐かれた。話し合いの場が持たれたが、その後も事態は改善せず、休み時間やすれ違いざまに「死ね」、「キモい」などの暴言を吐かれ続けたという。
「再度話し合いの場が設けられたが、加害生徒らは『ゲームに出てくるムカつくキャラを思い出し、大声で独り言を言っただけ』、『たまにA君も乱暴な言葉を使っている』、『A君に言っているわけではないのに、こうして呼び出されるのはたまったものじゃない』と開き直ったそうです。なぜか学校側もその言い分を受け入れ、『暴言に嫌な思いをしているクラスメイトがいる。互いに乱暴な言葉づかいはしないようにしよう』と〝喧嘩両成敗〟のような注意に留まりました」(男子生徒の家族から相談を受けていた男性)
暴言を録音するなどして自己防衛していたA君だったが、次第にフラッシュバックや抑うつ症状、睡眠障害などに悩まされるようになった。精神科を受診したところ、「心的外傷後」の二次障害と診断され、登校を見合わせるようになった。
A君の両親は深刻ないじめが起きていることを訴え続け、学校で安心して勉強できる環境を確保するよう求めた。だが、学校の対応は鈍く、スマートフォンで録音した音声を聞かせても「加害生徒2人の声か分からない。そもそも携帯電話の目的外使用は許されていない」と認めなかったという。
記者がA君の自宅を訪ねると、両親が応対し、「情報は事実であり、最終的にいじめ重大事態となった」ことを認めた。そのうえで「県教委に設置される組織による調査が間もなく始まる見通しなので、現時点で詳細な経緯はお話しできません。ただ、阿部校長の対応はいじめ被害者に寄り添ったものとは言えず、県教委も機械的な対応に終始しました。そのため弁護士を通して県教委に被害を訴えたら対応が一変し、昨年10月に入ってから『いじめ重大事態に認められた』と知らされました」と述べた。
これらの話が事実とすれば、いじめ重大事態が起きた際には速やかな対応を求めているいじめ防止対策推進法が守られていないことになる。なお、A君の両親によると、診断書提出後も合理的配慮がなされず、加害生徒と同じ教室での学習を強いられた。そのため、いまも通学できておらず、自宅で自学しているという。
修明高校、県教委高校教育課に問い合わせたが、どちらも「いじめ重大事態が発生したかどうかも含めてコメントできない」と回答した。
A君の両親によると「これまでテレビや新聞社にメールで情報提供したが、どこも取り上げてくれなかった」という。これからどのように調査が行われ、冷淡だった地元マスコミがどう取り上げるか。この点も踏まえ、今後の展開を注視していきたい。