【須賀川市】大寺正晃市長インタビュー(2025年)

【須賀川市】大寺正晃市長インタビュー(2025年)

経歴

おおでら・まさあき 1961年生まれ。須賀川高校卒業。2011年より須賀川市議連続4期。その間議長を務める。昨年7月の市長選で初当選を果たす。

 ――今年は須賀川市、長沼町、岩瀬村が合併して20周年となります。

 「合併から20年を経て、良いことも悪いことも含め様々な課題が生じていると感じています。とりわけ長沼地域と岩沼地域は2022年4月1日より過疎地域の指定を受け、今年度中に2026年度から2030年度までを計画期間とする『市過疎地域持続的発展計画(後期計画)』を策定しますが、一方で過疎をマイナスに捉える必要はないとも感じています。例えば1985年に始まった長沼まつりは昨年で幕を閉じましたが、今年からはニュー長沼フェスティバルというイベントに生まれ変わりました。岩瀬地区でも地元の花火師らを中心に、いわせ悠久まつり花火大会が開かれるなど若い人たちが地域を盛り上げようとする姿がみられます。私たち行政は計画を策定するだけでなく、そういう人たちを後押ししながら、それぞれの地域が持つ貴重な資源を生かした持続可能な地域づくりを進めていくことが大切だと考えています」

 ――昨年の市長選で掲げた「子育て環境の充実」「様々な分野でのトップセールス」「財政健全化と職員の働き方改革」という三つの公約の進捗状況はいかがでしょうか。

 「私はその三つに加えて『ひとを元気に』『くらしを元気に』『しごとを元気に』『まちを元気に』という四つの分野に注力しています。

 『子育て環境の充実』については市民の皆様が望む給食費の無償化を目指していますが、厳しい財政事情から実現には至っていません。現状は即できることとして、今年度については給食費の値上げ分を補助し保護者の負担軽減を図っていますが、最終的には無償化を目指します。子どもたちの意見を市政に反映させることも意識しています。東京芸術大学と連携し、市内の中学生を対象にア
ートからまちづくりを考える『ティーンズ会議』を開いたり、小学生には『子ども市長室』と題して市長室を開放し、訪問してくれた小学生に市政や議会について説明したり、市役所内を案内したりしています。

 『くらしを元気に』の一環として取り組んでいるトップセールスについては、この間、市内の企業を順番に訪問し、日本のものづくりを支える製品を地元企業がつくっているという事実を私自身があらためて勉強させていただきました。引き続き企業訪問は継続しますが、素晴らしい地元企業を広くPRし、他社とマッチングさせる機会もどんどん探っていきたいと思います。トップセールスは工業製品だけにとどまりません。県内では来年から3年連続で米・食味分析鑑定コンクール国際大会が開かれることが決まっていますが、1年目の会場は須賀川市で、今年11月にはプレ大会を予定しています。須賀川市では美味しいコメを生産していますが、PR不足なども影響し十分な評価が得られていない現状があります。今年のプレ大会と来年の本大会を契機に須賀川・岩瀬地方のコメを売り込み、ブランド力アップにつなげていきたいです。

 地場産品の『岩瀬きゅうり』については、かつての生産量日本一の栄冠を取り戻すため、東京や大阪の市場でトップセールスを行っていますが、さらに一歩踏み込んで地理的表示(GI※)の取得も目指しています。現状では『岩瀬きゅうりは本当に美味しいんです』としかPRできず、他のきゅうりと比べて何か違うのかと聞かれた場合、説明できないもどかしさがあります。現在、GI取得に向けて国に申請していますが、正式に取得すれば地域ブランドとして明確なポジションを獲得できると思います。トップセールスには単にモノを売るだけでなく、国や県、周辺自治体との信頼関係を築くというもう一つの柱があると思うので、積極的に推進していきたいですね。

※地域の風土に根付いた独自の環境や古くから伝わる製法でつくられる唯一無二の個性を持った農産物や食品を、国が地域共有の知的財産として保護する制度。


 『財政健全化』については市長就任2年目となる今年度の予算編成が正念場です。経常収支比率を改善するため『無駄』ではないが『贅沢』と捉えられる部分を厳しく見直していきます。

 『職員の働き方改革』については職員が民間企業の模範となる働き方を示すことと超過勤務の削減を目指します。例えば、銀行は15時で店を閉め、そこから客対応以外の仕事が始まりますが、市役所も市民の理解を得た上で、夕方までに仕事を終わらせるシステムを導入したいです。それによって捻出した財源は職員研修など人材育成に使っていきます。人件費の総枠を抑えるため市職員定員管理計画に基づき、特に会計年度任用職員の配置について見直しを進めます」

 ――今年度の当初予算で防災・減災対策に関する予算を厚くしていますが、その背景について。

 「須賀川市は過去に地震や水害で大きな被害を経験しており、市民の皆様が安全・安心に暮らすための予算は削るべきではありません。この分野に関わる支出は、先ほど申し上げた『贅沢』には該当しません。具体的には、長沼小学校敷地内の飲料用緊急貯水槽の設置、国の阿武隈川緊急治水対策プロジェクトとして雲水峯大橋と小作田橋の架け替え工事、市野関地区の堤防整備のための共同墓地移転、須賀川駅西広場ロータリー下の雨水調整池の整備などに取り組んでいます」

 ――インバウンドへの取り組みとして県内在住の外国人を対象とした観光ツアーを行いました。

 「これまで福島空港から須賀川市を素通りされてしまう状況に悔しい思いをしてきました。そこで、まずは空港に降り立った方が、バスや車で須賀川市に来てもらう取り組みに注力していきます。大きなコンテンツとしては『特撮』があります。文化庁は新たなクールジャパン戦略の一つに『特撮』を挙げており、円谷英二ミュージアムなどがある須賀川市にとっては大きなチャンスです。

 草の根戦略としては、県内在住の外国人向けにディープな観光ツアーを行い、その体験をSNSで母国に発信してもらう取り組みをしています。8月に開催したツアーでは剣道や書道、和菓子作りを体験してもらい、地元高校生との交流も生まれました。インバウンドは須賀川市が単独で頑張っても効果は限定的で、まずは福島県に来る外国人を増やすことが肝要です。その中に須賀川というまちがあり、ここではこんなディープな体験ができるという売り込みを各市町村がすることで、県全体を盛り上げていければと考えています」

 ――最後に抱負を。

 「この1、2年は市民の皆様に厳しい話をしなければならないと覚悟しています。ただ、厳しい話ほど丁寧に説明し、その先にどんな未来が待っているかという夢のある話も同時に伝えていきたいです。須賀川市のリーダーとして、どんな時でも元気を忘れずに努めて参ります」

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