郡山市議会3月定例会で、伊藤典夫議員(1期)が「ふくしま逢瀬ワイナリー」に関する一般質問を行った。逢瀬ワイナリーをめぐっては、本誌昨年10月号で閉鎖危機にあると報じている。
逢瀬ワイナリーは震災からの復興を目的として、市が所有する逢瀬地区の土地に公益財団法人三菱商事復興支援財団(以下、三菱復興財団と略)が2015年10月に建設。同ワイナリーを拠点に、地元農家(現在13軒)にワイン用ブドウを栽培してもらい、地元産ワインをつくって農業、観光、物産などの地域産業を活性化させる果樹農業6次産業化プロジェクトを市と同財団が共同で進めている。実際の酒の製造と販売は同財団が設立した一般社団法人ふくしま逢瀬ワイナリーが手掛けている。
ただ三菱復興財団では当初から、同プロジェクトがスタートして10年後、すなわち2024年度末で撤退し、施設と事業を地元に移管する方針を示していた。同財団は「地元」がどこを指すかは明言していないが、本命が郡山市であることは明白だった。
ところが市は、三菱復興財団の移管要請を拒否。理由は「郡山産ワインは市場でようやく評価されるようになったが、これまで支出が上回ってきたこともあり施設はずっと赤字だった。今は三菱復興財団が面倒を見てくれているからいいが、市が施設を引き受ければ、そのあとは赤字も負担しなければならないため品川萬里市長が難色を示している」(事情通)というものだった。
移管先が決まらなければ、施設は取り壊され、そのまま事業を終える可能性もある。
本誌10月号発売後に開かれた昨年12月定例会では、箭内好彦議員(3期)の一般質問に、和泉伸雄農林部長が「ワイナリーが2025年度以降も継続されるよう、ブドウ農家の経営方針を尊重しながら同財団と協議していきたい」と前向きな答弁をしたが、先月開かれた3月定例会では、前出・伊藤議員が一般質問(3月8日)で逢瀬ワイナリーの今後を再度問い質した。
和泉部長の答弁は次の通り。
「三菱復興財団は2024年度末を目途にワイナリーを地元に事業継承したい意向で、ワイナリーの今後について市やブドウ農家に配慮した提案をいただいている。市と同財団は定期的に協議を行っており、同財団では円滑な事業継承に向けワイナリー全体の環境整備を進めている。同財団が築いてきたワイナリーを2025年度以降も円滑に継続させるため、同財団と詰めの協議を進めると共に、ブドウ農家の栽培技術が向上し、より一層高品質なワイン用ブドウの栽培に専念できるよう十分配慮していく」
引き続き、移管要請に前向きな答弁と受け止めてよさそうだが、一方で、協議は現在も続いているとしている。
果たして、市と三菱復興財団の協議はどこまで進んでいるのか。ワイナリー事業に精通する事情通はこのように話す。
「協議はいったん落ち着いたようで、最近は農林部長や園芸畜産振興課長と三菱復興財団担当者との面談もないようです。同財団では資産譲渡に向け建物の改修等を進めているが、正式な移管先は決まっていない。具体的な協議は新年度が始まる4月からの新体制下で詰めていくと思われます」
三菱復興財団の撤退まで残り1年を切った。ブドウ農家は逢瀬ワイナリーの今後がはっきりしない中で、今もワイン用ブドウの栽培を続けている。移管先を決める猶予はあまり残されていない。